長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

151.『超絶技巧!明治工芸の粋』展

2014-07-10 19:21:19 | 美術館企画展

先月19日。東京の三井記念美術館で開催中の『超絶技巧!明治工芸の粋』展を観に行ってきた。

テレビの某国営放送の美術番組にも出演していたが、監修がM大学教授のY氏である。Y氏と言えば確か江戸時代後期の奇想絵画がご専門だった。今から20数年前、知人の画家を通じて知り合ったのだが、当時は僕も伊藤若冲や曽我蕭白に興味を持っていて、個展のご案内を出したところ観に来てくださり氏の若冲論をお話しいただいたことがあった。最近では美術雑誌やテレビの美術番組出演などでご活躍されていてすっかり大御所になってしまった。そのY氏が珍しく『明治工芸』の企画展の監修である。人とは違った着眼点をお持ちの方なのでこれは普通の工芸展ではないだろう。今まで工芸にはそれほど興味を持ったことがなかったが一度観て置く必要がある。

お恥ずかしい話、日本橋にある三井記念美術館も初めてである。東京駅から歩いてしまったので一汗かかされることになった。ビジネス街や古い建築が立ち並ぶ街区を抜けて美術館入口にたどり着いた。エレベーターで会場に上がり会場に入ると整然と展示された工芸品の数々が出迎えてくれた。七宝、金工、漆工、牙彫、薩摩、印籠など、どれも精緻で驚くべき技巧を施した品々に思わず息をのんで見入ってしまった。どの作品も想像していたよりもかなり小さいものが多く、ポケットに忍ばせておいた近距離用の単眼鏡が威力を発揮してくれた。

展示作品の多くが海外への輸出用に制作されたもので、手の込んでいる作品は一年間ほどかけて制作されたものもあるようだ。なんとも辛抱強い話であるが、その分ギャラもかなり高かったということだ。「職人魂」というのだろうか、細部へのこだわりと完璧と言っても良い手技はどれも圧巻であった。内容が濃すぎて全てを語ることはできないが、その中で特に僕の印象に残ったものは宝石細工のような有線七宝の『桜蝶図平皿』、『刺繍絵画』と称されるリアルな刺繍工芸の数々、気の遠くなるような細かい絵付けの『花紋飾り壺』などなど…。それほど広くない会場にぎっしりと凝縮した細密表現が詰め込まれ、一つの宇宙を構成していた。随分時間をかけて観終ると深いため息が出た。今展をきっかけに明治工芸に目覚めそうな予感がしている。展覧会は今月13日まで。その後、静岡の佐野美術館と山口県立美術館に巡回する。まだご覧になっていない方はこの機会に是非観に行ってください。画像はトップが有線七宝『桜蝶図平皿』。下が左から『花紋飾り壺(部分)』、刺繍絵画『獅子図(部分)』以上展覧会図録からの複写。三井記念美術館建築外観。