長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

270. 西印旛沼・冬鳥シーズンの到来。

2016-12-07 18:56:51 | 野鳥・自然
今年は11月に記録的な初雪が降ったり、例年よりも低い気温が記録されていたりと寒い冬になりそうな気配である。今月2日。毎年この時期の恒例であるが工房の近所の西印旛沼にバード・ウォッチングに行って来た。

この日は午前中、2駅先の街のカルチャーセンターで木版画教室の指導があった。昼食を済ませて電車で移動。京成の「うすい駅」から西印旛沼の南岸にあたる舟戸大橋まで徒歩で移動。ここからサイクリング・ロード沿いに竜神橋まで移動しながら観察するコースをとった。

舟戸大橋の南詰地点に到着。見渡すと、いつものようにタップリと水を湛えて印旛沼が広がっている。この地に住んで来年で30年になる。途中、この沼の単調な風景が退屈極まりなく思った時期もあったが、最近ではまた好きになりつつある。千葉県北部は山がなく平野と丘陵で風景が成り立っている。この沼の空、僅かな大地、水面といった極くシンプルなエレメントで構成された風景が心地よく思えるようになってきたのだ。年齢にせいだろうか。そしてそこに時間と光が加わると実に変化に富んだ表情を見せてくれるのだ。この30年近くの間、仕事に疲れた時、気持ちが落ち込んだ時、いやな事があった時、必ずこの沼の土手に立ち、水と鳥の織りなす風景を眺めるのが常だった。すると、いつも必ず頭の中の重い何かがスーッと抜けて行く感覚を憶えるのだった。このことで、どれだけ心が救われてきたかわからない。いまでは毎日の生活に欠かせない要素となっている。

話が逸れたが、それはさておき野鳥観察である。スタート地点でザックから双眼鏡と望遠鏡を取り出して首と三脚にセットする。あとは水面、ヨシ原、上空を丁寧に観ていく。舟戸の船着き場ではクイナ科の水鳥、オオバンが岸近くまでフレンドリーに近寄って来てくれる。それから飼い鳥のコブハクチョウが4羽、優雅に泳いでいた。きっと内陸水面漁業の漁師さんたちが、あまった雑魚などを与えているのだろう。人の姿をまったく恐れない。遠景に並ぶ漁業用の竹杭には、近年すっかり数が増えたカワウがズラリと並んでとまり羽を休めている。フィッシング・ベストのポケットからカウンターを取り出して数えると174羽が数えられた。

もう12月、沼で越冬する冬鳥を望遠鏡を左右に振りながら水面を探していく。さっそく真っ白な首と胴体が目立つカイツブリ科のカンムリカイツブリが視界に入った。これも端からカウントしていくと40羽を記録した。少し小さめのハジロカイツブリが沼の中央に群れている。こちらは35羽。お次は湖沼の冬鳥のメインであるカモ類はと探し始める。ヨシガモ、マガモ、カルガモ、オナガガモ、コガモ、ミコアイサ…と見つかる。特に今回、ヨシガモの数が多く入っている。カウントすると133羽。以前はこの沼では、そう多く渡来する種ではなかったが、近年は増加傾向にある野鳥だ。望遠鏡のレンズ越しに雄の頭部の特長的な形である「ナポレオンの帽子」をゆっくりと観察することができた。

コースの半ばぐらいまで来た時、スコープから目を外し持ってきたコーヒーを飲みながら土手から風景をボーッと眺めていると真っ直ぐにこちらに向かって飛んでくる白っぽく大きな鳥が目にとまった。双眼鏡でとらえるとタカの仲間のミサゴだった。頭上に素晴らしい雄姿。他に猛禽類の姿はないかと探すとチュウヒが1羽、トビが2羽見つかった。眼下のヨシ原ではホオジロ科の小鳥、オオジュリンが数羽、移動しながらパチパチと嘴で音をたてヨシの茎を割って中にいる昆虫を捕食している。”クワッ、クワッ”とツグミが鳴いて飛んで行った。

そろそろゴール地点である「竜神橋」の南詰。橋の手前に造られた池須で1羽のカモがしきりに潜水行動をしている。距離が近いので双眼鏡を向けるとホオジロガモの雌だった。他の場所での状況は知らないがこの沼では、すっかり観察する数や機会が減ってしまった種である。以前はけっこう小群が観られたのだが…、少し得をした気分。ここでタイムリミット。今日のバード・ウオッチングは終了!! 記録を付けていたフィールド・ノートを取り出しチェックするとトータルで35種を確認していた。

寒さが本格的になるのは、まだまだこれから。この冬は印旛沼周辺に通うことになるだろう。画像はトップが午後遅く沼のヨシ原から出てきたマガモ。下が向かって左からオオバン2カット、ヨシガモが多く観察された水上施設2カット、沼風景4カット。