長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

307. 「版と表現」 木口木版画の世界 展が開催中です。

2017-10-03 18:34:31 | 個展・グループ展
1日。先月27日から横浜市、岩崎ミュージアムで開催されている「版と表現」木口木版画の世界展のオープニング・パーティーに参加するため出品者の1人として行ってきた。

この展覧会は隔年開催で今回が4回目となるということだ。僕は今回初めてお声をかけていただき参加することとなった。たぶんこのメンバーでお酒が絡めば深夜までになるだろうと横浜スタジアムのすぐ隣のホテルを事前予約しておいた。千葉の奥地から横浜まで出て行き深夜まで飲むとまず帰っては来れない。JR横浜駅から地下鉄に乗り換えると通路脇にはそこらじゅうにプロ野球の地元チーム「横浜ベイスターズ」の選手の顔写真を大伸ばしにしたポスターが貼ってあり盛り上がりを見せていた。
日本大通り駅から地上に上がると外は蒸し暑い。さすが横浜、道を行き交う人々はどこかオシャレで垢抜けて映った。横浜スタジアムが近づくと球場内からものすごい声援が聞こえてくる。それもそのはずこの日のカープ戦はベイスターズが勝てばクライマックスシリーズの出場権が得られるという大事な試合だったのだ(結果はベイスターズの勝利)。

ホテルでチエックインを済ませ再び外に出るとパーティーの前に参加しようと思っていたギャラリートークの開始時間が過ぎている。あわてて大通りに出てタクシーを拾って会場に直行した。会場となっている岩崎ミュージアムに来るのも初めてだったが「港の見える丘公園」の前にある落ち着いた佇まいである。煉瓦造りの洋風のコンパクトな建物は入り口に美しいステンドグラスがはめ込まれてあって、さながら「丘の上の小さなチャペル」といった雰囲気である。
会場に入ると部屋の入口まで来場者でいっぱいだった。熱気すら感じる。すでに3名のベテラン木口木版画家(柄澤齋氏、栗田正義氏、三塩佳晴氏)と1名の美術評論家(藤嶋俊會氏)によるギャラリートークが始まっていた。

拝聴するのが途中からだったが、3人が木口木版画の制作を始めた頃、まだ専門とする版画家も少なく手さぐりだったことや、この特殊な木版画技法の魅力やその出会いなどの話が次から次へと話される。参加者も食い入るように聞いていた。前半も聞きたかった。遅刻したことが悔やまれた。
トークが済むとパーティーの準備までの時間、周囲の壁面に展示された出品作を1点1点ゆっくり観て回る。木口木版画は材料に制約があるため掌サイズの小さな画面が多い。だが、むしろそのために製作者は求心的で細密な世界に向かうのである。「山椒は小粒でもピリリと辛い」小さいが奥深く、濃密な世界にいつの間にか吸い込まれていく自分がいた。今回15名、約80点近い小宇宙が整然と並んだ。真四角に近い形の広すぎず狭すぎない展示空間もこの技法とよく合っていたように思う。

会場で主催者である「スージ・アンティック&ギャラリー」のオーナー、鈴江さんに久しぶりにお会いし挨拶する。ギャラリーが鎌倉の由比ヶ浜にあった頃だったからかなり時間が経っている。それから今回、出品手続きでいろいろとお世話になったミュージアムの小池氏ともお話しできた。

柄澤氏の乾杯の音頭でパーティーが始まるとお酒も入り会場はたちまち賑わいをみせてくる。展覧会関係者、出品版画家、作家、美術関係者、アートコレクター等、さまざまな方々に挨拶し、話し、お酒を酌み交わす。その中で僕が美術学校の学生時代35-36年前、木口木版画を習った故・日和崎尊夫・夫人と再会しお話しすることができたことはとても嬉しかった。当時、日和崎氏の集中講義のあと国分寺界隈で飲んだくれてアトリエに転がり込んでいたのだが、そのことをよく憶えてくださっていて懐かしがられていた。アルコールと共にすべての記憶が走馬灯のように回り始めた頃、関係者全員で記念写真を撮りお開きとなった。楽しい時間はあっと言う間に過ぎて行く。二次会は有志のみなさんと横浜の繁華街の飲み屋に繰り出して深夜まで。

懐かしい人たちとの嬉しい出会い、懐かしい話と充実した時間を過ごすことができた。関係者のみなさん、ありがとうございました。この場をお借りして参加させていただけたことに感謝いたします。

展覧会は今月の22日まで。ありそうでない木口木版画の小宇宙だけを集めた企画展。芸術の秋、美術ファン、版画ファンのみなさん、この機会に是非ご高覧ください。

会場は岩崎ミュージアム。http://www.iwasaki.ac.jp/museum/ tel:045-623-2111

画像はトップが当日の展覧会会場のようす。下が向かって左から岩崎ミュージアム外観とギャラリートーク、オープニングパーティーのようす。展示作品の一部。