長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

308. 消しゴム版画ワークショップ 『干潟の野鳥や生きものを彫ろう』

2017-10-10 17:09:15 | イベント・ワークショップ
トータル1か月半、ロング・ランと思っていた谷津干潟での野鳥版画個展「日本の野鳥 in 谷津干潟」もそろそろ折り返し地点となった。おかげさまで好評をいただき多くの来場者に訪れていただいている。8日(月祝)、個展の関連イベントである消しゴム版画のワークショップ『干潟の野鳥や生きものを彫ろう』を行うため早朝から車に道具などの荷物をたくさん積んで会場へ向かった。

会場である谷津干潟自然観察センターに到着。荷物を降ろして準備をしていると窓から見える淡水池からここで塒をとっているサギ類や北国から渡ってきたばかりの冬鳥のカモであるコガモの群れがいっせいに干潟方向に向かって飛び立った。そして池の上空を40羽近いヒヨドリの群れが鳴き交わしながら飛んで行った。「秋の渡り」の群れであろう。なかなかこんなロケーションの雰囲気は美術館や画廊などの展示では味わえないことである。開始時間にはまだ余裕があるので、事前にイベント担当であるレンジャーのHさんと今日のスケジュール打ち合わせをする。午前1回、午後1回の2回開催。すでに事前申し込みも多数あり当日申し込みの電話も何件か、かかって来ていた。ありがたいことである。

この消しゴム版画を使ったワークショップ、ここ10年弱ぐらいで随分いろんな場所で開催してきた。たいていが自然関係などの公共施設が多いのだがテフェスのテントブースなどでも行ってきた。初めは小さなプレス機を持ち込んで銅版画などでも行ったこともあるが会場の条件がさまざまであり臨機応変に対応できる画材として「消しゴム版画」を用いる形になってきた。そしてこの素材であれば手や指先に力のない小さな子供たちや年配者でも簡単に短時間で彫って摺ることができるのだ。
ワークショップというのであるから制作の指導だけではなく実際に僕自身が版を彫りハガキなどに摺って作品を作る現場も見せている。それから彫る下絵はオリジナルで考えても良いのだが事前に僕が原画を描いた小さな下絵を準備してきている。それから施設や環境によりモチーフも変えている。今回は千葉県の谷津干潟なのでこの季節の干潟で観察することができる野鳥や生きものを題材に下絵も準備した。

開始時間が近づいてくるとセッテイングされた会場のテーブル周辺には参加者が続々と集まって来始めた。老若男女、年齢もさまざまな人たち。オープンとなりHさんから谷津干潟の紹介とイベント内容、講師紹介があってから自己紹介を済ませるとここからはヨーイドン! ホワイトボードに完成までの手順の説明~下絵のゴム板へのトレース~彫り版の説明と実演~それぞれが彫りの作業~スタンプパッドを用いた摺りの説明と実演~それぞれが試し摺りとハガキへの本摺り~完成。と、休むことなく大忙しの流れとなる。この間、目の前の個展会場に版画を観に来た人たちに合間を見つけては作品説明などを行う。参加者は大人も子供も凄い集中力でモクモクと制作していた。ようやくカフエで休憩しお昼を食べたのは13:00を過ぎていた。

午後は新たな参加者で1時半スタート。いつものことだが、ここまで来るとあっと言う間に時間が過ぎて行く。好評のため終了予定時間を1時間以上オーバーしてゴール!!今回トータルで40人が参加。センターで用意していただいた大きな紙にも参加者全員がスタンプを摺って行き、楽しい共同作品もできあがった。

終了後、レンジャーのHさんとお茶を飲みながら反省会。アンケート用紙も見せていただき100%好評の内容だったので、ほっと一安心し胸を撫で下ろした。朝とは逆に荷物や画材の後片付けを始めていると窓から見える淡水池には水鳥たちが塒入りでバラバラと戻って来始めていた。「そうか、この職場は朝の鳥たちの塒出に始まり夕方の塒入りを観て人間も1日の仕事を終了するんだな」。
このことをHさんに話すと「そーなんです。言ってみればとても贅沢な職場なんですよねぇ」と答えが返ってきた。心地よい疲れが全身を覆い始め、夕暮れ色に染まりつつある美しい干潟の風景を後にして帰路に着いた。

今回、ワークショップを企画してくださったセンタースタッフのみなさん、そして力作を制作してくれた参加者のみなさん、ありがとうございました。

長島充 野鳥版画展『日本の野鳥 in 谷津干潟』はちょうど折り返し地点、会期は10/31(火)まで。僕がこの後、会場に在廊するのは10/28(土)の午後です。まだ、ご高覧いただいていない野鳥ファン、版画ファンの方々、ぜひ足をお運びください。よろしくお願いします。

展覧会の詳細は以下、習志野市谷津干潟自然観察センターのホームページまで。 http://www.seibu-la.co.jp/yatsuhigata/

画像はトップが消しゴム版画の彫りの実演。下がワークショップのようすと僕が参考に制作した野鳥の消しゴム版。