長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

391. 幻想美術のトレーディング・カード集が届く。

2019-12-07 17:45:14 | 幻想絵画
先月末、カナダのオンタリオ州在住の友人、美術家でエコロジストでもあるS氏からボックスに入ったトレーディング・カード集が3冊、郵送されてきた。内容は世界中の幻想美術のアーティスト(主に絵画)の作品をカードとして印刷したものである。今までも何度か送られてきたのだが、中にはウィーンのエルンスト・フックスやアメリカのアンドリュー・ゴンザレス等、このジャンルの大家の作品も含まれていた。

D氏とはもう10年程前にSNSを通じて知り合った。何回かメールをやり取りするうちに、彼が企画を進めているこの「トレーディング・カード・プロジェクト」について説明した手紙が届き「是非、参加してほしい」というお誘いをいただいた。まぁ、数度によるやり取りで信頼関係もできていたので二つ返事で承諾したという訳である。世の中、デジタル時代、地球の裏側の同じ志を持つ友人たちと交流できるということもとても楽しい。

「幻想美術・ファンタスティック・アート」について書くととても長くなるので、この場での説明は極く手短にさせてもらうが、ようするに西洋の中世、北方ルネサンスの画家、ボスやブリューゲル辺りを源流として、マニエリスム、象徴主義、シュルレアリスムの1部、戦後のウィーン幻想派まで続く表現世界として洋書などでは紹介されているジャンルである。その時代、その時代の流行としての美術表現からは常に距離を置きながら現代に至るまで絶えることなく続いてきた表現世界なのである。美術家も現在では欧米圏を中心に南米圏、オセアニア圏、日本を含むアジア圏と広く分布している。その画風は、よくシュルレアリスムの夢や深層心理を主題とした表現と比較されるが、微妙に異なっていて、物語性や空想的要素などが強い傾向にある。

今回の企画でデジタル画像で添付送信した私の絵画・版画の作品画像の中から選ばれた1点は、ケルト神話に登場する巨木伝説「生命の樹」というタイトルの木版画作品だった。主題そのものは西洋文化圏に伝承される内容なのだが、やはり日本人が作る作品というと木版画が好まれるのだろうか。

カードとなったアーティスト作品の合計は91点。ただでさえ濃い表現の作品が多い分野で、これだけ揃うとなかなか見応えがある。そしてD氏の世界中の「幻想美術」のアーティストを掬い上げたいという情熱と、ほとんどボランティアに近い企画・出版プロジェクトにはいつも頭が下がる思いでいっぱいである。今後も可能な限り参加して行きたいと思っている。

いつも貴重な機会を与えてくれるカナダの若い友人にこの場を借りて感謝したい。