長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

332.千葉市美術館 『百花繚乱列島』展を観る。

2018-05-26 16:03:01 | 美術館企画展
どうも美術館の企画展を観てからのブログの投稿が後手になる。今回ご紹介する展覧会も今月20日に終了した企画展である。今月11日、千葉市美術館で開催されていた『百花繚乱列島 - 江戸諸国絵師めぐり - 』展を観に行ってきた。タイトルどおり展示内容は江戸時代の中後期、全国通津浦々から、その土地出身や各藩の御用をつとめた絵師たちの作品を集めたものである。この絵師たちは実に個性あふれる作品を生み出しているのである。

最近ではどこの美術館の企画展もとても充実していて、どこへ出向いたらいいか迷うほどであるが、この千葉市美術館は江戸時代の「奇想絵画」や「浮世絵」そして「新版画」や「創作版画」にみられるユニークな作家、画家の企画展を数多く開催していて、僕が強く興味を持っている辺りでもあり、よく通っている美術館である。東京周辺として見ても最も通っているのかも知れない。フィーリングが合っているということだろう。そうした意味で今回の展示もなかなかツボを得た内容である。

僕は恥ずかしながら江戸中後期の御用絵師(展覧会図録ではご当地絵師などと表記されていた)たちの作品というものを不勉強であまり知らなかった。今回版画も含めて約190点の作品が一堂に会していた。「よくぞここまで集めてくれました」と担当者に一言お礼を言いたいほどであった。時代的には山水画、花鳥画、人物画など日本の絵画のあらゆる画風が出揃い、その技法的にも円熟期のものなのでどこをとっても見応えがある内容になっている。全てをここでご紹介することはもちろんできないので、その中で特に印象に残った作品を数点、挙げてみることにしよう。

初めに菅井梅関(すがい ばいかん 1784-1844)という仙台出身の画家。京都、江戸、長崎で活動し、後半生は仙台へ帰郷した人だが、この画家の軸物の梅を描いた2点の対ともいえる墨画が良かった。筆使いに勢いがあるのとまるで龍を思わせるような梅の幹と枝の動きがデモーニッシュにも観えてその場に釘付けになってしまった(画像参照)。

次に展覧会全体を通して何点か登場する幕末期の絹本に描かれた油彩画が目に留まった。安田でんき(漢字が古いもので名前の変換ができなかった 1789-1827)という、仙台出身の画家による異国の風景画や、江戸生まれで銅版画を制作したことでも知られる司馬江漢(しば こうかん 1747-1818)による帆船が浮かぶ内湾の風景画等は、その遠近法や明暗法の技術的な稚拙さからなのか、まるでアンリ・ルソーなど西洋のナイーフ絵画の表現に重なるものを感じることができた(画像参照)。
花鳥画では栃木出身の戸田忠翰(とだ ただなか 1761-18237)という画家の白いオウムを描いた軸作品が江戸の人気の奇想画家、伊藤若冲の作風を連想させ完成度が高かった。 そして鳥取出身の黒田とうこう(1789-1846)作の鯉をリアルに描いた絵画は、まるで時間が止まってしまったような不思議な描写で、何故かシュールレアリズム絵画の作風を思い浮かべる。それから、この時代の銅版画が展示されていたのも興味深く、日本の銅版画の黎明期にエッチング技法や手彩色の技術で丁寧に制作されている作品には銅版画制作者としての僕にもたいへん参考になるものだった(以上、画像参照)。

2つのフロアに展示された数多くの絵画作品は知識があまりなかっただけに新鮮に映り、一度では観たりずにレストランでの昼食を挟み、もう一巡して見て回ったのである。ここの美術館では、二度観ることが多い。それだけ内容が濃く充実した企画展を開催しているという証しなのだろう。

次回の企画展は大正期の個性的日本画家『岡本神草の時代展』。これも今からかなり楽しみな展示である(予告ポスター画像参照)。


画像はトップが今展のポスター。下が向かって左から文中でご紹介した作品の数々、美術館一回の建築のようす。次回の展覧会の予告ポスター。



                          





























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1 コメント

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いつもありがとうございます。 (uccello)
2018-05-29 20:48:00
ブロガーのみなさん、いつもマイブログにお立ち寄りいただきありがとうございます。
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