長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

382. 『フリーア美術館の北斎展』を観る。

2019-09-07 17:27:14 | 美術館企画展
先月9日。東京駅のステーションギャラリーで『メスキータ展』を観た同じ日、順番が逆だが、両国のすみだ北斎美術館で開催されている『フリーア美術館の北斎展』を観て来た。国立スミソニアン協会・フリーア美術館は1923年アメリカのワシントンD.C.に設立された美術館で、スミソニアン美術館群の1つである。実業家であるチャールズ・ラング・フリーア(1854-1919)がコレクションした美術品をはじめ、隣接するアーサー・M・サックラー・ギャラリーも合わせて、日本美術の収集品数は約1万2700点に及び、中でも北斎の肉筆画は世界屈指のコレクションを誇っている。そしてフリーアの遺言により所蔵品はすべて門外不出とされ、その方針は現在も固く守られている。

そこで今回の展覧会はフリーア美術館の全面的な協力により、京都便化協会と光学メーカーのキャノンが推進する「綴りプロジェクト(文化財未来継承プロジェクト)」によって同館が誇る世界最大級の北斎の肉筆画コレクションの中から13点の高精細複製画を制作、これにすみだ北斎美術館の約130点の関連コレクション作品と共に展示するという内容になっている。

実は「高性能デジタル撮影による複製画」による展示という事を会場の入り口で知った。この時は「なぁんだ…」と思ってしまいあまり期待していなかった。ところが会場に入って順番に観ているうちにその偏見は拭い去られていったのだった。特に六曲一双の大作「玉川六景図」や「波濤図」のデジタル再現コピーは会場で観る限りは本物とまったく区別がつかない。岩絵の具の極薄い絵の具層の盛り上がりや余白部分の絹本の質感、飛び散った絵の具、古くなってできたシミに至るまで極々細部までもがリアルに再現されていた。そのあまりにも見事な再現技術に見入っているうちに目の前のコピーが複製プリントであることを忘れてしまうほどである。

一眼レフカメラと高性能レンズで知られるキャノン・Canonの入力、画像処理、出力に到る先進技術と京都伝統工芸の匠の技との融合によって表された門外不出の北斎の肉筆画コピーに完全にノックアウトされ脱帽状態であった。デジタル撮影・印刷技術は日増しに進化を続けている。こうしてどんどん進化する中、手描きの絵画や手摺りの版画というものが人にとっていったいどこまで意味を持ち続けていられるのか。いろいろと考えさせられる展覧会であった。

会場を出ると猛暑のの大都会、真っ青な夏空が広がっている。北斎美術館の館長をご紹介いただいた知人の方に教わった近くの手打ち蕎麦店「穂乃香」で遅い昼食をとった。ここは「北斎せいろ」など北斎の名がついたメニューもありお薦めの蕎麦屋である。


※展覧会は8/25で終了しています。


      


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1 コメント

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いつもありがとうございます。 (uccello)
2019-09-21 19:57:58
ブロガーのみなさん、いつもマイブログにお立ち寄りいただきありがとうございます。
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