天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

行くぞ、種子島!

2009-01-22 | 宇宙
有給休暇取り直せました。
23日は、日帰りで種子島に冬のロケットを見に行きます!

いぶき打ち上げ特設サイト

ロケットの天敵「氷結層」を含む雲のせいで、
2度に渡り延期されている温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)/H-IIAロケット15号機(H-IIA・F15)の打上げだが、
今のところ三菱重工とJAXAは天気予報が「くもり」になっている1月23日の“一瞬の晴れ間”を狙って打ち上げる気満々の様子。
そんなロケット屋さん達の「漢の一発勝負」に、僕も賭けることにしました。

合言葉は「案ずるより生むが易し!」 休みも貰えたし、弾丸ツアーで行くぞ種子島!

という訳で、明日の未明から出発します。
当初想定していた新幹線「つばめ」の始発列車での移動だと、
鹿児島中央駅から鹿児島港までの市内移動が出勤時間帯とぶつかってしまい、
種子島行き高速船の始発便の出航に間にあうか覚束ないので、
それならば自分でクルマを運転して深夜ドライブで鹿児島市を目指す!

種子島までの道中と打ち上げの様子は、随時モバイルで実況レポートする予定ですので、
お暇ならちょくちょく覗いて頂ければ幸いかと。

それでは、徹夜の運転と強行軍に備えて気合い入れます!

「行けぇH-IIA!!俺を宇宙に上げろォ!!」
(太田垣康男「MOONLIGHT MILE」MISSION 113;LIFT OFF/MISSION 114;THE ATMOSPHERE BREAKTHROUGHより)

種子島へ行ってきます!
…でもその前に、会社に仕事しに行ってきます。。。

H-IIAロケット15号機、打ち上げ再延期…

2009-01-21 | 宇宙
また延期になりました。
まあ、冬のロケットではよくあること。

H-IIAロケット15号機による温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の打上げ延期について(JAXAプレスリリース)

写真:雨に包まれる種子島宇宙センター

再設定された打ち上げ予定日は23日。
天気予報では確かに「くもり時々晴れ」となっているが…微妙。
でもこの晴れ間を逃すと、来週まで天候が回復しないようなので、何が何でも23日に打ち上げてしまいそうな気もする。

それに、22日はどうしても仕事を休めそうになかったので、今回の再延期は僕にとってはラッキー。
出勤したら、また有給休暇変更のお願いをしないと…

昨日は職場で会う人ごとに
「明日、打ち上げでしょ?仕事終わったらすぐ種子島に行くの?」とか
「待望のロケットだね、頑張って!」とか声を掛けられっぱなしで、
「いえ、残念ながら天候の関係で延期になりまして…」
「それが、どうも有給休暇も取り直せそうになくて…ええ、残念ですが」
とか1日中事情の説明ばっかりしてたのだが、
今日も上司に言われるんだろうなぁ、「え~!?また延期になったの~?」って。

「ハイ、また延期なんですよ、何しろロケットは生ものですし冬の天気も変わりやすくて…
それで…申し訳ありません、休みを下さい!!」

H-IIAロケット15号機、打ち上げ延期…

2009-01-20 | 宇宙
明日はこんなロケット雲を拝めるかと楽しみにしていたのですが、
やっぱりというか、延期ですー。

H-IIAロケット15号機 による温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の打上げ延期について(JAXAプレスリリース)

写真:H-IIAロケット12号機(H-IIA・F12)のロケット雲

冬の種子島には有りがちの、上層大気に「氷結層」の発生が予想されるためとのこと。
このへんの事情は例に寄って宇宙作家クラブのニュース掲示板に松浦晋也さんによる現地からの詳細な記者会見レポートが書き込まれています。

さて、今のところJAXAからの公式発表は「打上げを1月22日以降に延期」となっているが、天気予報を見ると22日も天候は結構やばそうな感じ。さらに翌23日からは寒波が来るし、天候回復は来週26日以降か。
一応、21日付けで予約していた種子島行き高速船のチケットは22日に変更したが、有給休暇の日程も22日に変更できるかは結構やばそうな感じ。

今日の午前11時に、22日打ち上げの検討会議が行われるそうなので、とりあえずその結果発表を暫し待ちたい。
僕としては、来週以降に打ち上げを延期してもらえた方が有給休暇を取り直しやすいので有り難かったりするんですが、さてどうなるか。

茶室は小宇宙だった

2009-01-17 | 映画・演劇・コンサートを観る
今日は勤め先の茶道部で稽古して貰っている茶道の先生に招いて頂いて、新年のお稽古に行って来ました。
先生のご自宅の茶室で稽古して頂いたのだが、畳に炉が切ってある本格的な茶室でのお手前は初めて。

床には「青松多壽色」の掛け物と、干支の牛の香入れとお花。
花は木瓜(ぼけ)、水仙、侘助(わびすけ)。花入れは地元熊本の小代焼き。

さて、初めての茶室でのお点前ですが、先生に手順を手取り足取り教えて頂きながら感じたのは「この小さな空間には宇宙がある!」ということ。

畳の一画の炉に掛けられた茶釜は動かない。ここが定点となる。
灼熱の熾火に炙られ対流する釜はさながら太陽系の中心を成す恒星だ。
その太陽を中心に、全ての小道具…棗、建水、茶碗が惑星のように配置され、お茶が点てられていく。その全てに定められた角度と動きがある。
惑星系を支配する物理法則に乗っ取って、シンプルに美しく動作が進行していく。

お茶が点てられた後には全てが片付けられ、余韻しか残らない。
床に集約され、表現され尽くした茶室の宇宙観が、そのすべてを見守る…

そんなことを感じながらの、新年のお茶の御稽古でした。
肝腎のお点前の方ですが…まだまだ練習が必要ですね。
茶室の惑星系の虚空を探査機のように自由自在に航行できるようになる為に、もっと精進しなくては。

ももの生活

2009-01-15 | ねことか
京都の某所某マンションでkamiちゃんmogmog夫婦と一緒に暮らすアメリカンショートヘアーのももこ、2歳の女の子。


お風呂が大好き。
風呂場の蛇口から水を飲むのも好き。
時々調子に乗りすぎてバスタブに転がり落ちる


父ちゃんのkamiちゃんに抱っこされるのが好き。
でもkamiちゃんは家族のために働く男、帰ってくるのは遅いよ…


やっと帰って来たkamiちゃんと一緒におやすみ~♪

父ちゃんっ子のももこの1日でした。
春になって京都に桜が咲いたら遊びに行くから、もう酔っ払って顔をこねくり回したりしないから熊本のミーおじちゃんとも遊んでおくれー

やっぱり見に行こう、いぶき/H-IIAロケット15号機打ち上げ!

2009-01-14 | 宇宙
写真:種子島宇宙センター遠望

いよいよ来週打ち上げです、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」と7つのあいのり衛星を載せた冬のロケット、H-IIAロケット15号機。

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)/H-IIAロケット15号機の打上げ準備状況について(JAXAプレスリリース)

打ち上げは1月21日、水曜日。週の真ん中の平日だ。
昨年末、仮にこの日1日だけ有給休暇を取得したら種子島まで打ち上げを見に行けるか…?ということを調べて計画を立ててみたのだが、打ち上げ時間帯が真昼で都合がいいので余裕で日帰りで見に行けることが分かった。
でも、実際には何らかのトラブルや冬季の悪天候のせいで打ち上げキャンセルの可能性もあるし、第一有休が取れるかどうかまだ分からないし、どうしたもんだか…と思いあぐねていたのだが、
数日前の朝、目覚めると突然「案ずるより生むが易し」という言葉が脳裏に浮かんだのだ。
で、出勤するなり上司に直訴してしまったのだ。
「やっぱりロケット見に行きたいんで、休みを下さい!」

いや~、言ってみるもんですね。
有給休暇貰えました。
種子島行き高速船の予約も取れました。

という訳で、日帰りの弾丸ツアー強行軍で行くぞ種子島!
予定通りに上がってくれよ、H-IIAロケット15号機!!
(勤め先の皆さん、相変らず我儘な有給休暇取得を認めて下さってありがとうございます。帰って来たら仕事頑張ります)

ブルートレインで初日の出を見に行こう その5、平成21年元旦・初日の出

2009-01-13 | 鉄道
東京駅に回送されて来たブルートレイン「はやぶさ」「富士」編成

ブルートレインで初日の出を見に行こう その4、平成20年12月31日~平成21年1月1日からの続き

平成21年1月1日 元日

旅の最後の朝が来た。
今日まで4泊5日に渡って乗り続けたブルートレイン「はやぶさ」「富士」の旅も、今日で終わる。

昨夜は午後6時過ぎの東京駅発車から、京都の手前で日付が変わり年を越して神戸の夜景と明石海峡大橋を眺めるまで起きていたが、今朝も正月だからと云って寝台車で寝正月という訳にはいかない。
何しろ、今回の旅の最大の目的は「ブルートレインの車窓から初日の出を拝み新年を祝う」事なのだ。日の出の前に起きておかないと話にならない。
という訳で、折角のA寝台1人用個室「シングルDX」のゆったりベッドでの快適な眠りを享受したのは僅かな時間、寝不足で重く感じる身体をベッドから引き剥がす。


個室内に備え付けの洗面台の蓋を開け、冷たい水で目を覚ます。
自分専用の、磨き上げられた清潔な洗面台が用意されているのもA寝台個室ならでは。

顔を洗ってサッパリしたところで、さあ初日の出を待とう。
A寝台個室の窓は「海側」即ち山陽本線西部を走行中の現在のところ概ね南側を向いている。空は段段と白み、やがてカーブを切る列車の編成が朝陽を受けて黄金色に輝き始めた。初日は上がったようだ。しかしなかなか窓から太陽が見える角度で走行しない。
やきもきしながら車窓を凝視していたが、列車が瀬戸内海沿いから内陸に入ったタイミングでとうとう見事な初日の出が現れた。

黄金色に輝く、平成21年の初日の出です。
ブルートレイン「はやぶさ」のA寝台個室から眺める、これが最後の初日の出です。
明けましておめでとうございます。

暫らくすると日の出は雪雲に隠れ、辺りは銀世界になった。

際どいところで、うまい具合に雲のかかっていない地域を走行中に太陽が昇ったようだ。新年早々運が良い。
とは言え、雪景色も美しい。温暖な山陽地区での積雪も、そう見ることは出来ない風景だし。

さあ、思う存分「はやぶさ」「富士」を堪能したし、車中で年も越したし、初日も拝んだ。
旅の目的はすべて果たした。
後は帰るだけだ。「はやぶさ」に乗ってさえいれば、そのまま熊本まで連れて行ってくれる。

熊本の到着は昼前。それまでは、奮発したA寝台個室で思う存分リラックスしよう。
B寝台より一回り大きい広々ゆったりのベッドに寝転がるもよし、ソファに陣取って車窓を見るも良し。


下関での機関車交換も、今日は横着して浴衣姿のまま車内のドア窓越しに見守る。
続いて門司での機関車交換は、もう見に行く気にならず自分の個室からプラットホームを行き交うギャラリーの姿を眺めて過ごす。
普段はついつい列車から降りて機関車を見に行ってしまうのだが、A寝台に納まって鷹揚な気分になっているとそんなことはどうでもよくなってくる。ひたすらのんびりと、快適な室内で怠けて居たくなる。
これがA寝台のゆとりの心…かな?まあ正月だし、たまにはこういうのもいいか。

かくして熊本に到着するまで、僕はただただのんびり車窓を眺めたりベッドに寝転がったりしていたのだが…
何もしないで列車に乗ってるとこんなに愉しいとは知らなかった。
またA寝台1人用個室に乗りたくなってしまったよ、これぞ「シングルDX」の魔力、秘めたる国鉄型A寝台の実力か。お金がいくらあっても足りんな(苦笑)


「はやぶさ」は定刻に熊本に到着した。

今朝は初日の出にかかりっきりだったので、朝食の駅弁車内販売争奪戦にも参加していないので何も食べていない。
しかし、これから下宿の隣町にある実家に「帰省」を決め込むことにしているので、放蕩息子にもおせち料理とお屠蘇が待ってくれている筈だ。
それに、何といっても実に8年ぶり、21世紀になって初めての日本で過ごすお正月だ。これまで主に東欧の片田舎や国際夜行列車の車内で新年を迎えていたので、古里でのんびり過ごす日本のお正月が楽しみでならない。
かくして正月気分で「はやぶさ」と別れた僕は、鹿児島本線の普通列車に乗り換えて実家を目指した。

実家で荷物を解くと、「はやぶさ」から持ち帰ったA寝台の乗客サービスのタオルが出てきた。

タオルにプリントされた、「はやぶさ」のヘッドマークを見ているうちに、お屠蘇替わりのワインで浮かれていた僕の気持ちに少しずつ感傷が流れ込み始めたのが分かった。
「廃止まで、あと3ヶ月か…」
そして僕は決めたのです。

「来月も、また乗るぞ!廃止の日までに、乗れるだけ乗って、僕の身体に『はやぶさ』を染み込ませるんだ!」

これが新年の決意。という訳で、まだまだブルートレイン「はやぶさ」「富士」の旅は終わらない…!

(来月?に続く)

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ブルートレインで初日の出を見に行こう その3、平成20年12月30日~31日

ブルートレインで初日の出を見に行こう その4、平成20年12月31日~平成21年1月1日

ブルートレインで初日の出を見に行こう その4、平成20年12月31日~平成21年1月1日

2009-01-12 | 鉄道
日中、品川の車輌基地で寝台電車「サンライズエクスプレス」と並んで休むブルートレイン「はやぶさ」「富士」編成

ブルートレインで初日の出を見に行こう その3、平成20年12月30日~31日からの続き

大分からブルートレイン「富士」に乗って大晦日の東京に戻ってきたが、やる事がない。
スーパープラネタリウム"MEGASTAR-II cosmos(メガスターⅡコスモス)"がある臨海副都心の日本科学未来館も、
「世界一の固体燃料ロケット」と称えられる名機M-Vロケットが実機展示されているJAXA宇宙科学研究本部相模原キャンパスも今日は年末年始で休みだ。

仕方がないので、適当に東京近郊を「乗り鉄」して時間をつぶす。
東京近郊区間のJR線が特急も乗り放題の「周遊きっぷ東京ゾーン」を持っているから(周遊きっぷを使うと東京ゾーンまでの往復乗車券も2割引になるので、普通に乗車券を買うより安上がりなのだ)、どんどん乗らんと損。

という訳で、東京駅の地下深くに降りて行って、普段は乗る機会の全然ない京葉線の特急に乗ってみる。

房総特急「さざなみ」号。
E257系500番台という車輌だが(JR東日本のE頭の系列は全然解らん…)、凄い形相の電車。
地下駅から海に出て、ディズニーランドの混雑を横目に京葉線を走り、約30分で到着する千葉市内の蘇我駅で下車。ここが「周遊きっぷ東京ゾーン」で乗れる境界駅。
昔ながらの「スカ色(青とクリームのツートン)」の普通電車に乗り換えて千葉駅へ。やたらと駅構内が広く、慌しい駅。

ちょうど昼時なので、コンコースの立ち食いそば店に入る。
店頭で年越しそばの売込みをやっていて、立ち食いそばの年越しそばなんて面白いので食べてみようかと思ったらお持ち帰り専用だった。
仕方なく首都圏でのお気に入りメニュー「コロッケそば」の食券を買うと、店のおばちゃんが飛んできて
「お客さん、たった今コロッケ売り切れちゃった!ゴメンね」やれやれ。
無難に「天ぷらそば」をオーダーし直す。店の人も気を遣ってくれたのか「ハイ天ぷらお待ち!どうぞごゆっくりお召し上がり下さい!」と随分丁寧。
立ち食いそば屋でゆっくりしていってねと言われるのは初めてだが、昼食時なのでお客の回転が早く、自然こちらも手早く啜り込んで退散。
という訳で残念ながら写真なし。
そばはおいしかった。

プラットホームに上がって、停車中の逗子行き快速に乗り込んで東京都心へ戻り、品川で下車。
品川駅のプラットホームからは、今朝乗ってきた「富士」と「はやぶさ」の編成が寝台電車「サンライズエクスプレス」と並んで留置されているのが見える。

夜を徹した1000キロを超える走行で汚れた車体を洗ってもらうブルートレイン。
かつて、ここには東京駅を発着する綺羅星の如きブルートレインたちがずらりと並び、壮観な眺めだったという。
「さくら」「みずほ」「あさかぜ」「出雲」「紀伊」「瀬戸」「銀河」そして「はやぶさ」「富士」…

3月からは、ここには高松と出雲市へと向かう「サンライズ瀬戸・出雲」のサンライズエクスプレスしかいなくなる。

品川駅名物の立ち食い「お好みそば」を貪って、まだ日も暮れていないけど年越しそばは食い納め。
東京駅に戻り、4夜目のブルートレインを待とう。
平成20年最後に東京駅を出発する今夜の寝台特急「はやぶさ」で熊本に戻り、今回の旅は終了となる。


今夜も大勢の見送り客に囲まれた東京駅の「はやぶさ」「富士」。



さて、今夜乗車するのはA寝台1人用個室「シングルDX」。

「はやぶさ」「富士」編成中にそれぞれ1輌ずつしか連結されないA寝台を、旅の最後の夜に奮発してみたのだ。
「シングルDX」はブルトレ全盛期の昭和51年に国鉄が製作した最上級グレードの寝台で、赤字が深刻化した国鉄が合理化に乗り出していた当時としては珍しい個室方式を採用している。

今となっては個室寝台は特に珍しくもないが、僕が鉄道少年だった頃は「東京発のブルートレインにしか連結されない特別車輌」として、そしてB寝台の倍以上もする非常に高価な寝台料金と相まって、まさに憧れの的だったのだ。
その後、僕も今までに数え切れないほどブルートレインに乗ったが、この「シングルDX」にはほんの数回しか乗っていない。
生まれて初めて乗ったのは、二十歳になる誕生日の前の晩だった。乏しい小遣いから大枚を叩きA寝台券を購入し、自分の成人を1人で祝ったのだ。
当時、成人するということ、自分の力でこの社会で生きていくことに自覚が持てず戸惑いと困惑と、そしてこれからの人生に若干の恐怖を感じながら、憧れの豪華寝台で覚束ない夜を過ごしたことを覚えている。高速で流れ去る車窓の街灯りに、間近に迫りつつある大学卒業という儚いモラトリアムの終りを感じ、思わずゾッとしたことも。
その次に乗ったのは、就職してから研修で赴任していた浜松から地元へ戻る時だったか。
赴任中に仲良くなった東海道本線の駅の駅員さんに「今度、地元に帰るんですよ」と挨拶しに行って、帰りのきっぷを発券して貰ったんだっけ。
それも浜松駅発ではなく、わざわざ始発の東京駅発で出して貰ったんだ、「ブルートレインに、それもA寝台に乗るときは始発から乗らないと!」とか言って。あの駅にはそれ以来行っていないけれど、実は今でも「はやぶさ」「富士」であの駅を通過する時にはこっそり敬礼しているんだ…

これまで、人生の節目の夜を過ごしたA寝台1人用個室「シングルDX」に、「はやぶさ」「富士」での最後の新年を迎えるために、そしてブルートレインで初日の出を見るために、これから乗り込む。

これが「シングルDX」室内。
基本的に、ヨーロッパの1等寝台個室と同じ室内構造で、室内には線路と直角の向きに据え付けられた巨大なソファベッドが鎮座し、窓側には専用の洗面台がある。
インテリアは木目調と茶系統で統一され、窓にはブラインドではなくレース地と厚手の2枚のカーテンが掛かる。
ちなみに見たところ木目壁紙はJR九州の人気リゾート特急「ゆふいんの森」号で使用されているもの、同じくソファベッドのモケットは以前に特急「つばめ」のグリーン車の座席に使用されていたもの、絨毯は特急「ハウステンボス」「みどり」号のグリーン車と同じものが使用されているようで、同社の他の特急のものと同じ物を流用する事でコストをかけずに国鉄時代に造られた車輌のインテリアの質感を向上させる努力の跡が読み取れて興味深い。


入り口ドア脇の壁面にはエアコンの調整つまみと照明スイッチ類、そして警報ボタンとベッドライト。

ソファベッドはB寝台に比べるとかなり分厚いクッションが入っている。
そしてソファの下にあるこのレバーを操作して…

さらに肘掛を跳ね上げると…



ソファベッドは完全にフラットになり、広々としたベッドが出来上がる。
この無骨ながらも丁寧な造り込みは、国鉄時代の設計ならでは。

今夜の「はやぶさ」「富士」は満員御礼とのこと。
やはり、皆さんブルートレインで最後の年越しをしたいと思われている御様子。
全てのベッドにそれぞれ旅人の想いを乗せ、ブルートレインは東海道本線を下って行く。
僕は独り想い出の詰まった個室に籠り、燈りを消してただ夜の車窓を見ていた。
未来への不安に打ち震えていた二十歳になった夜に、初めての仕事を終えて安堵と別れの寂しさを感じながら家に帰る夜に、確かに同じ車窓を見ていた筈。

横浜、熱海、沼津、富士、静岡…

列車は走る。

浜松を過ぎ、想い出の駅に今夜も敬礼。

豊橋、名古屋、岐阜…

車窓に小雪が舞い始めた。

僕が初めて上京したときに乗った「ガキドン」こと大垣発東京行き夜行鈍行列車の始発駅大垣を通過する。
あの頃、現在の「はやぶさ」「富士」のダイヤは長崎・佐世保行きのブルートレイン「さくら」が使用していた。東京行きの夜汽車に乗り込む、「青春18きっぷ」を握りしめた若くてカネがなくて旅の夢だけ持ち合わせた旅人たちの前を、青く優雅なブルートレインは轟音と共に駆け抜けていったものだ。

関が原を越える頃、小雪は吹雪になった。
雪の中、人々が屋外に集まり火を焚いて囲んでいるのが見える。この辺りの年越しの風習だろうか。


日付が変わる少し前、米原駅に到着。
もう間もなく、今年が終わる。

そして気が付くと、列車は京都駅に滑り込んだ。
既に時刻は0時を回っている。

「明けましておめでとう、最後の年が明けたよ『はやぶさ』、そして『富士』…」


大阪駅では未明にもかかわらず大勢のファンが「はやぶさ」「富士」の到着を待ち構えていた。


神戸の夜景を眺め、普段は消えている筈の明石海峡大橋のライトアップを見る頃にはさすがに記憶が途切れ途切れになってきた。
そのままA寝台の快適なベッドに潜り込んで、陽が昇るまで少し寝ることにする。

ブルートレインで初日の出を見に行こう その5、平成21年元旦・初日の出に続く

ブルートレインで初日の出を見に行こう その3、平成20年12月30日~31日

2009-01-10 | 鉄道
大分駅から操車場へ引き揚げる「富士」号を見送る

ブルートレインで初日の出を見に行こう その2、平成20年12月29日~30日からの続き

東京駅から寝台特急「富士」に乗って大分駅に着いた。
整備の為に操車場に引き揚げていく「富士」の回送を見送ってから…

もう昼が近いので、腹ごしらえをすることにする。
大分駅の1番のりば、改札口横にある立ち食いスタンドで「かしわうどん」を賞味。
この立ち食い店は、元は大分駅で駅弁を販売していた業者さんが駅弁を廃業したあとも続けているそうで、店に立ち寄るのも店員さんと顔馴染みの常連客が多いような風情。
さて大分駅立ち食いの「かしわうどん」、小倉駅や折尾駅や鳥栖駅の「九州かしわ御三家」のものと比べるとやや淡白で味の主張も控えめだが、カウンターに置かれた「揚げ玉(天かす)」を入れ放題なのがいい。

腹がくちくなったら、手荷物をコインロッカーに放り込んで洗面道具だけ持って普通電車に飛び乗り、別府へ移動。

別府と言えば、湯の街。
どうせ夕方の折り返し東京行き「富士」の発車を待つ間は暇なので、温泉に入って夜汽車の疲れを洗い流そうという寸法だ。

別府駅のコンコースにある観光案内所で駅周辺にある「日帰り温泉(外湯)」の場所を聞いて、先ずやって来たのがここ。

駅から高架下を歩いて数分の場所にある、別府市営の温泉「不老泉」。
公民館と共同の建物で、すぐ隣にゲートボール場があったりして地元の御老人の「たまり場」になっているような。
一昔前の小学校のような建物に入っていくと「年末年始期間は入浴料無料」との貼り紙が。おおこれはラッキー!尤も普段も100円という激安料金らしいのだが。

さて「不老泉」の内部は、洗い場の中央に巨大な湯船が鎮座まします独特なスタイルで天井が高く、広々としていて壮観。
思わず「おお!こりゃすごい!」と呟きながら、早速かけ湯をして湯船に浸かろうとするのだが…「あれ?洗い場の蛇口からお湯が出ない?」すると湯船の中から
「兄ちゃん、今日はタダなんで蛇口からお湯は出ないバイ」と声がかかる。
「え~!?そうなんですかぁ?やれやれ、気前が良いんだか締まり屋なのか分からん温泉だなぁ…」
仕方なく水をかぶってから(う~冷たい!)、湯船の温泉に浸かる。
「あ゛~温かくて気持ち良い…極楽極楽…」
しかしここで重大な事に気が付いた。
「え~っと、洗い場の蛇口から水しか出ないということは…洗髪や背中を流すのも冷水でやれってこと!?」いくら晴れた真っ昼間とは言え、真冬にそんな事したら風邪引くわい。
という訳で、湯船に浸かって暖まっただけで「不老泉」から退散。

昨日今日と夜汽車に連泊しているし、髪を洗って身体も石鹸で流してサッパリしたい。
「洗い場からお湯の出る温泉」を探し求めて、別府の横丁をさ迷い歩くこと暫し。
ここなら大丈夫だろうとやって来たのが、「別府駅前高等温泉」。

“高等”な温泉とは凄い自信の程が伺えるが、梁の様式がスイス辺りの山荘みたいで(建築には不案内なのであまり能書き垂れられませんが)、確かに高等の名に相応しい堂々たる佇まいの西洋館。
とても温泉銭湯には見えない。
玄関には「高等温泉」と「並湯」の2つの看板が出ていたが、番台のおばちゃんからは自動的に「ハイお兄さんいらっしゃい、お風呂ね、300円です」と「高等」の方の入浴料を告げられる。ちなみに「並湯」は100円らしいのだが、また洗い場から冷水しか出ないとイヤなので素直に「高等料金」300円也を支払うと、貸しタオルと洗面器を差し出された。このへんのサービスが「高等」の所以か。

さて「別府駅前高等温泉」は脱衣所が5人も入れば身動きが取れなくなるほど狭く、お風呂場も広々としていた「不老泉」とは対照的にこじんまりしていたが、それでも湯船は熱湯と温湯の2種類あり(温湯は脱衣所の下の穴倉にあり、洞窟風呂のようで面白い)、もちろん洗い場のシャワーからはお湯が出る。
他のお客と譲り合いながら、狭い洗い場で身体を流すのもまた風情があっていいものだ。腰掛けがないので屈んで洗髪をすると腰がきつかったが。

寝台車2連泊の疲れを別府の湯に流して、いい心持ちで湯から上がると番台のおばちゃんから「どうぞ2階で休んでいって下さい」と座敷に通される。
このへんのサービスもまた「高等」の所以か。


しかしこの黒光りする木造の階段の、雰囲気の良さと言ったらどうだ。
まるで映画に出てくる、古い学校の寄宿舎のようだ。

帰り際に番台のおばちゃんに「この温泉の建物、凄く立派な西洋館ですね!」と声を掛けると、
「ええ、もう築80年になるんですよ。皆さん、そこの階段を『昔の学校みたい!』って喜ばれてね。」とのこと。2階には客室もあり、泊まることも出来るそうです。僕も一度泊まってみたいぞ、西洋館の温泉銭湯「別府駅前高等温泉」。

別府温泉も堪能したし、そろそろ大分駅に戻ろうか。
今夜乗る東京行きの寝台特急「富士」号は別府駅にも停車するのでこのまま別府で待っていてもいいが、せっかくブルートレインに乗るからにはやはり始発駅から乗りたい。それに手荷物も大分駅のロッカーの中だ。
「別府駅前高等温泉」はその名の通り別府駅のすぐ目の前の通りにあるので、目抜き通りをちょっと歩くと駅に着く。
駅前に温泉銭湯があるなんて、流石湯の街。

で、別府駅に着いたら出迎えてくれたのが、このインパクトあり過ぎる人物像。

駅前広場で旅人に襲いかかろうと…いや、諸手を挙げて歓迎してくれている(のだと思う、思いたい、多分!)このお方、別府を一大温泉観光地に育て上げ「別府観光の父」と呼ばれた実業家、油屋熊八その人である。
明治から大正にかけて別府でホテルやゴルフ場、バス事業を展開し、所謂「温泉マーク」の考案者ともされる油屋熊八の偉業を讃えて建立されたというこのブロンズ像、かなり巨大だし大迫力で奇抜なポーズでとにかく目を引く。何か背後に裾に取り付いた妖怪みたいなのを引き連れてるし。
暫し唖然と見惚れていると、通りすがりの観光客風の若い女性が
「わぁー、すごい!」と驚嘆の声をあげたり、
子供を連れた婆ちゃんが
「ほら、熊八さんがバンザイしとらすよ。すごかねー!」とか言ってる声が聞こえてきて、思わず吹きだしてしまう。
生前は様々なアイデアで別府温泉の売り込みに奔走していたという熊八さんも、自分自身が別府で注目の的になっているんだからきっと喜んでおられるんじゃないでしょうか。

大分駅に戻って、駅前のトキハデパートのデパ地下で今夜の酒とつまみを物色したりしてると、もう「富士」の発車時刻16:43となる。

独特の“山型ヘッドーマーク”を付けた九州島内専用交流機関車ED76に率いられた東京行き寝台特急「富士」が大分駅に入線してきた。
このヘッドマーク、先の大戦前に東京から下関まで、後には貫通したばかりの世界初の海底トンネル「関門隧道」を越えて長崎まで走った、新興大国「大日本帝国」の威信の象徴であった全席1等の超豪華特急列車「富士」号の最後部に連結された絢爛豪華なサロン風展望車のオープンデッキを飾ったものと同じデザインで復元されたもの。
特権階級の人々や富裕外国人しか乗車を許されず、外国語を流暢に話す車掌や給仕が乗務した車内にはフランス料理のフルコースを供する食堂車やバスルームまでも備え、関釜連絡船や長崎港からの国際航路を関してシベリア鉄道、そしてロンドン・ビクトリア駅行きのシンプロン・オリエントエクスプレスと接続していた歴とした国際列車だった栄光の「富士」号の残滓とも言うべきヘッドマークが、衰退し廃止を間近に控えたブルートレイン「富士」号の顔を飾る。

牽引機ED76は午前中に大分行き「富士」を牽引してきたのと同じ66号機だし、客車も同じ編成が折り返すだけなので、要はここまで乗ってきた大分行き「富士」と全く同じ顔ぶれで東京まで引き返すことになる。
馴染みのホテルに連泊してるようなものだ。


東京までの道中、割り当てられたB寝台1人用個室も一昨日「はやぶさ」で乗車した時と同じ部屋。
「ああ、またこの部屋か…」
同じ車輌の同じ部屋だ。


デパ地下のデリカテッセンで入手したおいしいワインと惣菜を楽しんでいるうちに、B寝台1人用個室「ソロ」のロフトのような2階部屋の丸窓には暮れなずむ別府湾が広がる。
湯の街を後にして「富士」は往く


中津駅で後から追い上げてくる特急「ソニック」を先に通すために10分弱の停車。
「ハイテクの振り子機能を駆使して時速130キロで生き急ぐ新型特急は、どうぞお先に!こちとら老い先短い人生を急ぐ気はないんでね。」と「富士」に替わって皮肉の一つも呟きながら、駅構内のコンビニで酒を追加したり、機関車ED76の尊顔を拝したり。


そして門司駅と下関駅では例によって鉄ちゃんが群がり機関車交換大撮影会。
ワインとビールですっかりいい心持ちになっていたので、到底撮影の砲列に加わる気にはなれず、一歩引いて饗宴を見守る。


別府温泉の湯の香とアルコホルのせいでぐっすり熟睡し、目が覚めると一昨日と同じ富嶽が車窓に広がる
日付が変わって今日は平成20年12月31日、大晦日。


一昨日の車窓を再生するように「富士」は「はやぶさ」と共に冬晴れの東海道本線を疾駆し、定刻に東京駅に到着した。

ブルートレインで初日の出を見に行こう その4、平成20年12月31日~平成21年1月1日に続く

ももちゃん謹慎明け

2009-01-08 | ねことか
妹mogmogが正月休みに熊本の実家に帰省している間、京都で留守番していたももちゃん。
mogmogが京都に帰ったら、ももがゴミをあさっていたのが発覚、正月早々謹慎処分を食らっていましたが、ようやく謹慎が解けたようなので新年一発目のもも写真館。


mogmog撮影


旦那のkamiちゃん撮影

叱られてさぞかし反省してるだろうと思いきや、どっちもひっくり返ってますね~
服従の意思を見せてるのか、それとも単に満腹したのか。
そう言えば、ももは以前から意味も無く仰向けにひっくり返って寝るのが好きだったような。

謹慎明けも相変らずのももちゃんでした。

おせちに飽きたら「宇宙食」を食べよう!スペースカレー編

2009-01-05 | 食べる
お正月と言えばやっぱり、おせち料理。
家族と一緒にコタツでおせちをつつくのは、日本のお正月の醍醐味ですねぇ。
とは言え、何度も同じおせちを食べ続けるとやっぱり飽きる。それに数の子とか伊勢海老とかゴージャスなおかずはあっという間に食べ尽くして、気が付くとゴマメとか蒲鉾とかありきたりなおかずばっかりになってるし…
いやいや、贅沢を言ってはならん、正月早々職を失った非正規雇用の人たちも苦労されてるし、暖かい部屋で御馳走を食べられるだけで何と幸せなことか…

とか何とか言いながら、やっぱりいい加減おせちにも食傷気味なので、趣向を変えてカレーを食べましょう。
それも普通のカレーではない。
年末のブルートレイン車中での一口ようかんに続く宇宙日本食の試食第2弾、今回は国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在用に特別に開発された「SPACE CURRY(スペースカレー)」だ!


シルバーメタリックに輝くこちらの箱が、JAXA認証ハウス食品謹製の宇宙日本食、スペースカレー。


箱を開けてみると、無愛想なレトルトパック。

さてこのスペースカレー、ISSではお湯を使わずに専用の加熱トレーで温めて食べるそうだが(トレーごと温めるって、飛行機の機内食みたいな感じなのかな?)、箱に表示された「地上での作り方」によると通常のレトルトカレー同様に熱湯で3~5分間沸騰させて温めて食べろとのこと。
但し、容器に移しても絶対に電子レンジでは温めるな、とある。具が破裂するらしい。

鍋にお湯を沸かして、温めること5分。
ご飯をよそったお皿に「スペースカレー」をあけると…

おお、普通においしそう!

早速食べてみると…
「う~ん、美味い。いかにも正統派のカレーらしい味がする。」
しかし、実際には「無重量下での味覚の鈍り」を考慮してスパイシーで濃い口の味になっているとか。また、ウコンとカルシウムを多く含むとある。
そのせいか、とてもしっかりした味のおいしいカレーです。
具材もビーフカレーとあるがマッシュルームや舞茸、エリンギがゴロゴロ入っていてキノコ好きにはたまらないかも。
それにしても…「ああ、とうとう宇宙で日本の国民食カレーを食べる時代になったかぁ~!」

おせちに飽きた口には大満足の宇宙日本食「スペースカレー」、価格は1箱で税込み525円也(かなり割高だが…キノコとウコンとカルシウムがたっぷりだからコストがかかるのかな?)。
全国の科学館や東京駅前の「JAXA i 」で入手できます。
ちなみに今回食べたのは、昨年秋の佐賀でのJAXAタウンミーティングの時に、会場の佐賀県宇宙科学館で買ってきたもの。こんなこともあろうかと、大事に保存しておいたのです。

取っておいたのは正解だった、やっぱり「世界天文年」のお正月には宇宙食カレーだね!

ブルートレインで初日の出を見に行こう その2、平成20年12月29日~30日

2009-01-05 | 鉄道
品川から回送されて来た下り寝台特急「はやぶさ」「富士」、機関車EF66に牽引され東京駅に到着

ブルートレインで初日の出を見に行こう その1、平成20年12月28日~29日からの続き

東京駅に朝10時前に到着してから7時間余り、冬の短い日は暮れて、折り返して下り九州行きの「はやぶさ」「富士」の発車時刻が近付いてきた。

17時20分頃、品川の車輌基地で整備を済ませた「はやぶさ」「富士」編成が東京駅に回送されて来る。
列車がプラットホームに据え付けられても、すぐには乗車は出来ない。品川から東京駅まで牽引してきた機関車EF66を切り離して編成の反対側に連結し直す機回し作業が済むまで約20分間、ドアが開くのを暫し待つ。




今夜乗車するのも、昨夜と同じB寝台1人用個室「ソロ」。
しかも、「はやぶさ」と「富士」は東京駅での折り返しの際にそれぞれ使用する編成を取り替える「タスキ掛け運用」が組まれているので、今夜の下り「富士」の車輌は昨夜の「はやぶさ」として東京へ上って来た編成だ。B寝台1人用個室「ソロ」は「はやぶさ」と「富士」にそれぞれ1両ずつしか組み込まれないので即ち、昨夜乗ったのと同じ「ソロ」の車輌に今夜も乗ることになる。


しかし今夜の部屋は昨夜の2階部屋ではなく1階部屋。
壁と窓が屋根に沿って丸くカーブしていて、室内に階段もありロフトのようだった2階部屋とは対照的に、こちらの1階部屋は直線的インテリアで、ベッドの上には2階部屋の出っ張りもあり「階段下の物置」のような雰囲気。
だが天井が高く室内でも立って移動できるし、居住性は悪くない。
2階部屋だと「屋根裏から見下ろすような」車窓になるが、1階部屋だとプラットホームを歩く人を下から見上げるような感じの車窓になる。
東京駅10番のりばで「はやぶさ」「富士」を見送るギャラリーを見上げながら、定刻の18:03に東京駅を出発。
暫らく街灯かりの煌びやかな東京近郊区間を先行する普通列車に追いつかないようにゆっくり流して、熱海の海が見えてくる頃には車窓も暗闇になる。

丹那トンネルを抜けてJR東海管内に入り、車窓には今朝見た見事な富士山が夜の闇の中に聳えているであろうが、旅の始まりの疲れが出たのか睡魔に取り付かれ「おやすみ放送」を聞く前にソロ個室の幅70㎝シングルベッドの床に着いた。

平成20年12月30日
早寝をしたので目が覚めるのも早い。
寝台車では夜更かしをして走り去る夜の景色を眺めるのも楽しいが、早起きして夜明け前の静かな街並みを眺めるのもまた夜行列車の醍醐味である。
どちらも捨てがたい旅情があり、両方味わいたくてつい寝不足となることが夜汽車の旅の秘かな悩みだったりするのだが、今回の旅ではドーンと贅沢にブルートレインに4連泊だ。今日は夜更かし、明日は早起きと、幾通りもの楽しみを順に試すことが出来るのが嬉しい。

さて、下り九州行き「はやぶさ」「富士」で早起きをしたら、夜明けの瀬戸内海を眺める以外にも是非押さえておきたいものがある。
午前7時頃、徳山駅発車と同時に始まる弁当の車内販売である。
そして「はやぶさ」「富士」の朝食弁当と言えば、柳井駅で積み込まれる限定5食の“幻の柳井幕の内”に尽きる。
天燈茶房でも何度か紹介したこの“幻の駅弁”、現在は柳井駅での駅売りがないので「はやぶさ」「富士」車中でのみ入手することの出来る「駅で買えない駅弁」なのだ。

以前から一部好事家の間で珍重されていたが、ネットのクチコミと「はやぶさ」「富士」廃止間近との相乗効果で、現在は徳山駅到着と同時に車内販売ワゴンが1号車デッキに積み込まれ売り子さんが乗車する前から「柳井幕の内」目当ての行列が出来て、そのまま即完売となる大人気ぶりであるという。
僕も行列に加わるべく徳山到着30分程前から1号車に赴いてみると、何と既に先客が数名…「しまった、出遅れたか!」と内心ハラハラしながら列に並ぶも、果たしてどうにかギリギリ限定数量中の1個を手に入れることが出来た。

朝早くから苦労して手に入れた、これが“幻の柳井幕の内”。

封印のシールをよく見ると…

とてもよく出来た、おいしい弁当のようです!


これが中身。
泣けてくる位オーソドックスな、「正しい日本の幕の内弁当」です。
特に目立ったおかずが入っている訳でもない、でもひとつひとつのおかずがしっかり作られた、丁寧なお弁当。
そして、何よりご飯がおいしい!列車の到着時刻に合わせて炊いているんだろうね、ほんのりと炊き立ての温かさが残っているよ。
何度食べても食べ飽きない、我が家の朝ご飯のような、そんなしみじみおいしい「柳井幕の内」。「はやぶさ」「富士」の廃止と同時に消えてしまうであろう、まさに幻になろうとしている“幻の駅弁”、あと何度食べられることか…

朝食を済ませると、8時半に本州最後の駅となる下関に到着。
ここで機関車交換。東京まで1往復世話になったEF66の51号機が切り離される。





下関では車掌さんも交代。
ここまで不眠不休で列車を守ってきたJR西日本の車掌さん2名が下車し、JR九州のスタッフに交替する。

関門トンネルをくぐって、九州上陸。
九州の玄関口の門司駅で、列車は分割され熊本行き「はやぶさ」と大分行き「富士」に分かれる。


さて、いつもは僕の地元熊本へと向かう「はやぶさ」に乗って、「富士」を門司駅に残しお先に出発…するのだが、今日乗っているのは大分行きの「富士」だ。
いつもは慌しく発車する門司駅でも、「はやぶさ」の出発を待ってからの発車なので余裕がある。
散歩がてら隣のプラットホームまで出向き、「はやぶさ」の出発を見送る。



「いつもはあっちに乗ってるんだよな~」とか思いながら「はやぶさ」を見送っていると、「あの~、何か皆さんあの列車の写真を撮ってるみたいですけど、珍しい列車なんですか?」と声をかけられる。
冬休み中なんで特にギャラリーが多いので、事情を知らない人には不可思議な光景に見えるんだろうなと心中で苦笑しつつ
「来年春に廃止されるんですよ。九州最後の寝台特急です」と説明すると
「はぁ~、寝台特急ですか!きっと古い列車なんでしょうねぇ。そうですか、無くなるんですか!私も撮っておこう!」と、その方も携帯で撮影を始めた。

微笑ましい気分で門司駅を発車。次の小倉駅まで「はやぶさ」を追いかけるように走った「富士」は、鹿児島本線から日豊本線に分岐して九州の東海岸を南下していく。


日豊本線に入ってすぐに、JR九州の車輌工場である小倉工場の脇をかすめる。
工場側線に、新幹線と在来線を直通運転する「フリーゲージトレイン」の試験車輌が停車しているのが見える。
僕の実家近くの新八代駅にはこの「フリーゲージトレイン」を在来線の鹿児島本線から九州新幹線の線路に通すための「ゲージチェンジャー」があったのだが、結局一度も実際に走行試験をすることなく設備が撤去されてしまった。このまま実用化されること無く、闇に消えていくのだろうか…勿体ない…

日豊本線は海沿いから内陸に入り、峠を越えていく。
再び海が見えてくると、湯の街別府。終着駅大分は近い。



11:07、寝台特急「富士」は、大分に到着した。
「やれやれ、出発から3日目にして、また九州に戻ってきたな。」

ブルートレインで初日の出を見に行こう その3、平成20年12月30日~31日に続く

ブルートレインで初日の出を見に行こう その1、平成20年12月28日~29日

2009-01-04 | 鉄道
東京行き寝台特急「はやぶさ」、熊本駅に入線する

仕事納めを終えてから、寝台特急「はやぶさ」に乗り込みました。
目指すは終着駅東京…ではない。この暮れに慌しそうな東京には用はない。
東京に着いたら、次の列車に乗り換える。
次の列車とは?
「勿論、寝台特急『富士』!」
即ち、東海道山陽九州筋に残ったブルートレイン最後の二つ星である「はやぶさ」号と「富士」号を乗り継いで、九州と東京を行き交おうという寸法だ。

この酔狂な旅の目的は、ただひたすら最後の正統派ブルートレインの旅路を味わい尽くすこと、そしてこれが最後の機会となる「ブルートレインの車窓から初日の出を拝む」こと。ついでに「『富士』の車窓から富士山を眺めること」も楽しみたいね。
一富士二鷹三何とか…と言うが、富士はそのまま列車名だし沿線には本物もあるし、隼(はやぶさ)は鷹の仲間だし、あとは茄子を持って乗り込めばさぞかし豪勢な初夢が拝めそうな旅になりそうだね。

平成20年12月28日

寝台特急「はやぶさ」号、東京行き。
15:57に始発駅の熊本を発車する。


これが今夜一晩過ごす部屋。
B寝台1人用個室「ソロ」、1泊の寝台料金は6300円也(勿論、他に運賃と特急料金が必要ですが)。
個室ではない2段ベッドのドミトリースタイルの通常型B寝台と同じ料金で利用出来るので大人気の「ソロ」、室内は狭いが人目を気にせず好き勝手に寛げるのでかなり快適。
今夜確保した部屋は屋根裏部屋の2階室で、通路からドアを開けて階段を登ったところにベッドがある。ちょっとロフトのような雰囲気、高い位置にあるので当然、窓からの眺めも良い。

定刻に熊本駅を発車。
暫らくは新幹線工事現場の真っ只中を進んでいくが、やがて熊本市郊外の田園地帯に抜ける。

日の短い今の時期は、熊本駅を発車する頃には既に夕暮れ時。


大牟田、久留米と鹿児島本線の主要駅に停まりながら、九州の中心駅となる博多を目指し北上していく。
そうしているうちに、進行方向左側に面した個室の車窓には冬の夕陽が沈んでいく。


博多、小倉と大都市駅にたて続けに停車して客を拾い、車内はほぼ満席となった模様。
九州最後の停車駅となる門司駅に到着すると、ここで大分からやって来る「富士」号を待って約30分の停車となる。
いつもは改札口を出て駅ビル内のコンビニや弁当店に酒や食糧の買出しに行くのだが、今日は帰省している妹に頼んで弁当を拵えてもらって持参しているので、買い物に行く必要はない。
それでもここまで狭いB寝台個室に閉じこもっていたので、身体を伸ばすべく駅周辺をブラブラ散歩する。


夜の散歩から帰ってくると、「はやぶさ」は既に転線して「富士」と連結しており、機関車も熊本からここまで引っ張ってきてくれた九州内専用機ED76から関門トンネル用のEF81に換わっていた。

門司駅を発車するとすぐに関門トンネルに突入する。
駅構内から12輌編成の列車を引き出した交直両用電気機関車のEF81は、トンネル進入口の手前にあるデッドセクション(無通電区間)を惰性通過中に九州内標準の交流20000ボルト(60ヘルツ)から本州内の直流1500ボルトに機関車内の電気規格を切り替え、そのまま本州へと足を踏み入れる。
全長千数百キロの「はやぶさ」「富士」の行程で、EF81が担当するのは関門トンネル区間の門司駅~下関駅間の僅か1駅間のみ。それでも、走行中の交直切り替え能力を持ち海底トンネルの塩害から電気機器を守る特殊塗装に守られた機関車EF81無くして、「はやぶさ」「富士」は東京と九州の間をロングランすることは出来ない。


数分間で関門海峡の海底を潜り抜け、「はやぶさ」「富士」は下関駅に到着。
編成の先頭では短い勤めを終えたEF81が切り離され、東海道山陽本線用機関車EF66が連結された筈だ。
「はやぶさ」「富士」の到着を待っていたプラットホーム上の立ち食いうどん店が店仕舞いするのを見ながら列車は発車する。

下関を発車すると、後はただひたすら闇の中を走っていく。
午後9時を回ると「おやすみ放送」があり車内も消灯され(僕は個室にいるので、当然ながら室内の灯りは点いたままだが)、車内は眠りに落ちる。

日付が変わって深夜2時前、編成最後尾の1号車のデッキから流れ去る夜の線路を眺める。
闇の中に星雲のように浮かび上がった姫路駅を通過した直後、列車は四国行きの夜行快速「ムーンライト高知・松山」と、そして「はやぶさ」「富士」の下り列車とすれ違う。
かつてはこの区間には一晩に数十往復もの夜行列車が行き交い、夜汽車がひっきりなしにすれ違っていた時代もあったのだが、現在は夜行列車同士のすれ違いも僅かな機会となってしまった。
九州へと向かう「はやぶさ」「富士」の赤いテールランプが走り去るのを見てから、部屋に戻り今夜はもう寝ることにする。

平成20年12月29日

名古屋辺りで起きようと思っていたのだが、気が付くと列車はもう静岡を過ぎている。
「しまった、昨夜の夜更かしのせいで寝過ごしたか!」と飛び起きて、顔を洗ったりしているうちに「はやぶさ」「富士」は由比の海岸を駆け抜け、部屋に戻るといきなり車窓に富士山が聳え立った。
富士駅に到着する直前に渡る富士川鉄橋は、東海道本線随一の富士山の名所として知られる。
「それにしても、この見事な富士山、元旦まで取っておきたいような勿体ないような見事さだね」富士山を仰ぎ見ながら、「富士」号は「はやぶさ」と共に富士駅に到着する。


そのまま列車は青空の下を走り続け、定刻に終着駅東京に到着した。




下関からここまで「はやぶさ」「富士」を率いて来た機関車EF66が機回しされて編成最後尾に連結され、品川の基地へと回送されていくのを見送る

さて、「はやぶさ」の次に乗るのは今夜の大分行き「富士」だが…
その前に先ずは、我孫子駅に遅い朝食兼昼食を食べに行こう

ブルートレインで初日の出を見に行こう その2、平成20年12月29日~30日に続く

ブルートレインで「宇宙食」を食べよう!YOHKAN編

2009-01-03 | 食べる
東京駅の赤煉瓦の丸の内口を出て右手に行ったところに「丸の内オアゾ」という再開発ゾーンがあり、えらく小奇麗でお洒落なお店などが並んでいてまぁ普段の僕には余り縁が無いような場所なのだが、この一等地にJAXAの情報センター「JAXA i 」がある。
東京駅前にあるので、列車で上京した際などにふらっと遊びに行けて便利なのだ。



JAXAの最新プロジェクトに関する展示などの他に休日にはいろいろイベントもやっていて、ブルートレイン「はやぶさ」「富士」の乗り継ぎ待ちで立ち寄った僕も打ち上げが近付く温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」のクイズラリーに参加したり(職員の方が丁寧に採点してくれたけど、満点でしたw 花マルなんて貰ったのは20年ぶりだな~)、御馴染の月周回衛星「かぐや」のハイビジョン地球の出映像を眺めたりして楽しんでから、お土産に買ったのがこれ。

JAXA認証、ヤマザキ製パン謹製の「宇宙日本食 YOHKAN」!
遂に宇宙でもヤマザキの一口ようかんを食べる時代になりました。
ちなみに栗と小倉の2種類があり、それぞれ350円也。

レジを打ってくれたJAXA iスタッフの方によると「パッケージは実際に国際宇宙ステーション(ISS)に持ち込まれる実物と全く同じもの」だそうです。
「ですから、とても丈夫で簡単には破れないようになっていますよ。」
「そうですか!実は、今夜寝台列車に乗って夜食に食べようと思っていたんで、パッケージが丈夫なのは好都合ですよ。持ち運んでいるうちに破れて荷物がようかんまみれになる心配がありませんからね~」
「あ、でも、これ丈夫過ぎるんで開封しにくいんですよ。開ける時はハサミを使って切って下さいね」
「えっ!?…困ったな、ハサミなんか持ち歩いてないぞ…」

まあ何とかなるでしょう、という訳で乗り込んだブルートレイン「富士」号の車中で早速食べてみることにした、宇宙食ようかん。
心配していたパッケージの開封は、力を入れてねじ切れば何とか素手でも開けることが出来た。
物物しい銀色フィルムの袋の中から出てきたのは…

「地球上バージョン(普通にその辺のお店で売ってるやつ)」と全く同じ、個別パックの一口ようかん。
お味の方は…無重量状態のISSでは味覚が鈍るので、宇宙食はかなり濃口の味付けになっていると聞いたことがあるのだが、特に甘過ぎるという事もない至って普通のようかんの味でした。おいしいです。
敢えて云うなら、小倉より栗の方が栗の粒入りでおいしかったかな。まぁその辺は好き好きでしょう。

しかし、一口ようかんは普通は1個100円もしないだろうから、この宇宙食ようかんの値段は殆ど「宇宙に持って行けるほど丈夫なパッケージ代」という事になるね。
そんなことを考えながら見上げるブルートレイン「富士」の車窓には深々とした夜の闇にオリオン座が横たわっているのであった。