宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

重いブラックホールの軽い食事

2013年05月17日 | 宇宙 space
ヨーロッパの天文衛星“インテグラル”と“XMMニュートン”が、
おとめ座の方向4700万光年彼方にある銀河“NGC 4845”で起った、
X線フレア(爆発的に強い放射)を検出しました。

この銀河には少なくとも過去20~30年の間に目立った活動は見られず、
X線など高エネルギーでの放射がとらえられたのは今回が初めてになるんですねー

2011年1月のピーク時には、放射強度が通常の数千倍にも達していて、
その後1年ほどかけて、ゆっくりと弱まっていく様子を、
NASAの衛星“スウィフト”や、国際宇宙ステーションのX線監視装置“MAXI”が見守ることになります。

その後の分析で、このフレアは銀河中心の巨大質量ブラックホールの近くにあった軽い天体が、
破壊され吸い込まれる際に発せられたことが分かりました。





重力で周囲の天体を
飲み込むブラックホール
(イメージ図)



飲み込まれた天体の質量は、
もっとも重い場合で、質量が足りず恒星になりそこねた天体である褐色矮性、
もっとも軽い場合で、巨大ガス惑星程度と見積もられています。

最近の研究では、重力の作用で惑星系から追い出された、フリーの惑星が多数存在することが分かってきているので、これもそうした天体の1つなのかもしれません。

ブラックホールが恒星を飲み込んだ っと思われる現象は、これまでにも観測されているのですが、
こうした軽い天体は今回が初めてなんですねー

“NGC 4845”の中心に潜むブラックホールは、質量が太陽の30万倍と計算され、
X線の強さの時間変化から見て、天体を破壊してからその破片が高温で輝きを放つまで、2~3か月かけてじっくりと味わったようです。

そして、ブラックホールが飲み込んだのは、天体の全質量の1割ほどにあたる外側部分だけで、
高密度のコアは食べ残しとなって、ブラックホールの周囲に残されていると考えられています。

天の川銀河でも今年、このX線フレアと同様の現象が起こるのではないっと予測されています。
でも、こちらは褐色矮性や惑星ではなく、地球の数倍程度の質量を持つガス雲なんですねー

近くにある銀河で、こうした現象が見つかる可能性は数年に1回程度あるようです。

なので、飲み込まれる天体の種類やブラックホールのサイズの違いで、どのようなことが起こるのか?
今後の観測で明らかになっていくと思いますよ。