宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

銀河中心ブラックホールに近づくガス雲が明るくなる可能性

2013年05月20日 | 宇宙 space
わたしたちの天の川銀河には、太陽のおよそ430万倍の超巨大質量ブラックホールが存在します。

このブラックホールは“いて座Aスター”と呼ばれ、現在は活発な活動を見せていない状態にあり、
その周辺環境がどうなっているのか注目を集めています。

そして、2012年1月に“いて座Aスター”に接近する、
地球の3倍の質量を持つガス雲“G2”が見つかります。
その後の観測で、このガス雲が“いて座Aスター”の周りを運動する軌道にあり、
2013年に“いて座Aスター”に最接近することが明らかになったんですねー





“いて座Aスター”(白)と
ガス雲“G2”(オレンジ)



東京工業大学では、このガス雲のコンピュータシミュレーションを行い、
ガス雲が2013年に“いて座Aスター”のそばを通過するときに、その強い重力の影響で何が起こるのかを予測しました。

予測によれば、もしガス雲が十分な広がりを持っていれば、
“いて座Aスター”の強力な重力で運動方向に引き伸ばされ、運動面に垂直な方向に強力な圧縮を受けるようです。

そして、さらに強力な圧縮でエネルギーが放射され、
ガス雲が明るく輝くだろうとも予測されています。

ガス雲の形状や大きさ、密度分布などを仮定し、
観測に基づいた運動のデータと合わせてシミュレーションを行うと、
ガス雲が“いて座Aスター”の近くを通過する際に、
ガス雲“G2”はおよそ1年もの間明るく輝くことが示されました。
もっとも明るい時には、ガス雲の明るさは太陽の絶対光度(距離によらない本来の明るさ)の50倍にもなるんですねー

シミュレーション画像では、ガス雲が“いて座Aスター”に近づくにつれて、強力な重力で引き伸ばされていく様子を見ることができます。






中心の白丸が“いて座Aスター”
接近したガス雲が薄く引き伸ばされている
(シミュレーション画像)




ガス雲は、“いて座Aスター”の最も近い所を通過する時には、シミュレーション開始時の100分の1以下にまで薄く潰され、ガスが高温になり光り輝くようになります。

現在把握されているガス雲についての情報を元にして、
今回、シミュレーションが行われましたが、
この結果は、あくまで「可能性」なんですよねー
でも、たいへん興味深い内容にもなっています。

いま、すばる望遠鏡やアルマ望遠鏡など、世界中の望遠鏡や観測衛星が、この現象に注目しています。
なので、観測結果によってシミュレーションの「答え合わせ」ができるかもしれません。

シミュレーションと観測データをつき合わせることで、
ガス雲“G2”を含めた、“いて座Aスター”周辺環境のことがもっと分かるようになるのかもしれませんね。