宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

巨大な“まゆ”に包まれた、生まれたての星

2013年10月11日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡の観測から、巨大な分子の雲に包まれた原始星が見つかりました。

この発見により、ひょっとすると星が誕生する過程は、
これまで考えられていたよりも多様なのかもしれません。
原始星を“まゆ”のように温かいガスが取り巻き、
極方向に分子流が噴出している(イメージ図)

わし座の方向にある赤外線暗黒星雲“MM3”の中に、
ガスやチリの“まゆ(ホットコア)”に包まれた、生まれたての星があります。

赤外線暗黒星雲とは、赤外線でも見通せず、暗く見えるほど濃いガスやチリの雲のことで、
集団で生まれる星の故郷と考えられているんですねー

核融合を始める前の生まれたての星(原始星)は、
大量のガスが集まってくる重力エネルギーによって光り、
その光で星を包むガスやチリのホットコアが温められて、
メタノールやシアン化エチルなどの有機分子が作られます。

こうした有機分子が放つ電波を、アルマ望遠鏡でとらえることで、
摂氏マイナス140度にまで温められたホットコアと、
中にひそむ原始星の存在が明らかになったんですねー

赤外線暗黒星雲“MM3”の赤外線画像(左)、アルマがとらえた原始星周囲の電波画像(右)

“MM3”に見つかったホットコアの大きさは、
800×300au(1au=太陽から地球の平均距離、約1.5億キロ)で、
これは通常の10倍もの規模です。

原始星から噴き出すガス分子流の鮮明な観測から、
この分子流がわずか740年前に噴き出し始めたことが分かったんだとか…

若くしてこれほど大きなホットコアを持つということは、
原始星のエネルギーがひじょうに大きいということになります。

このメカニズムとしては、
通常の原始星の場合よりも大量のガスが一気に降り積もっている、
あるいはホットコアの中に複数の原始星が存在する可能性が考えられます。

アルマ望遠鏡の解像度がさらに向上すれば、
星に降り積もるガスの様子をより詳細に調べることができ、
星形成の多様性の謎に迫れるかもしれませんね。