宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

初期宇宙に発見した例外的なスターバースト銀河

2013年05月26日 | 宇宙 space
まだ星形成活動が穏やかだった129億年前の宇宙。
そこに、最大級の勢いで次々と星が生まれる、スターバースト銀河が見つかりました。

天の川銀河には1000億個以上もの星が存在するのですが、
それよりもずっと多くの星を含む大質量銀河もたくさんあります。

こうした銀河の星々は、
銀河形成の初期の頃に爆発的な勢いで次々と生まれたと考えられています。

また宇宙の歴史において、
銀河で星がもっとも活発に作られたのは今から約100億年前。

つまり宇宙が始まってから約40億年近く経ってからだということが明らかになってきています。

こうした中、129億年前の宇宙において、
すでに天の川銀河の2000倍以上の勢いで星を作り出す銀河が、
国際共同研究で見つかったんですねー

りゅう座の方向に位置する銀河“HFLS3”に含まれる星間物質の量は、
太陽1000億個分、天の川銀河の40倍にもなり、
まさにガスから星が作られている最中だということが分かります。
天体までの距離の根拠となる銀河“HFLS3”の広帯域スペクトル(上)
銀河の紫外線放射(下)にダスト(下左)や星間ガス(下右)の分布を重ねた画像

さらに、この銀河には水素やヘリウム以外の重元素が多く含まれていました。

重元素は恒星の中の核融合反応や超新星爆発で作られます。

なので、この時点で大量の星が生まれ、
超新星爆発などで周囲に重元素がまき散らされていたことがうかがえるんですねー

星形成活動が穏やかだったはずの初期宇宙。
ここに見つかった例外的なスターバースト銀河は、
当時の星形成活動や、銀河の進化の歴史を探るのに重要な鍵になりそうですね。

超新星爆発を起こして姿を消した黄色超巨星

2013年05月25日 | 宇宙 space
夜空に輝く星のうち大質量のものは、あるとき自分自身の質量を支えきれなくなって、
急激につぶれて大爆発を起こすことがあります。

これは“重力崩壊型超新星爆発”と呼ばれる現象で、
超新星爆発を引き起こす星の性質や、爆発の多様性の起源を追求することは、宇宙物理学において重要な課題となっているんですねー

これまで、“重力崩壊型超新星爆発”を起こすほど大きな質量の星は、
爆発の直前には、星の生涯の末期にあたる、大きく膨れ上がった低温の星“赤色巨星”か、
明るさが太陽の10万倍程度、表面温度が数万から10万Kに達している高温の恒星“青色コンパクト星”になると考えられていました。

でも、りょうけん座の銀河“M51”に出現した、超新星“SN2011dh”は様子が違っていました。

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されていた超新星爆発前の画像を解析したところ、
超新星爆発が起こった場所に、星の進化の途中であり超新星爆発を起こさないはずの黄色超巨星があったのが見つかったんですねー

早期の光学観測や電波観測から、爆発した星は暗くて見えない“青色コンパクト星”であり、
見つかった黄色超巨星は爆発した星の伴星か、超新星とは無関係で地球からは、偶然同じ場所に見えていたと考える研究者もいました。
もちろん、この場合には超新星の光が収まった後には、再び黄色超巨星が観測できるはずです。

一方、初期の光度曲線を流体力学的計算によってモデル化する理論研究では、
爆発した星が黄色超巨星であるとした時のみ、観測された光度曲線をよく再現することをつきとめていました。

また、2つの大質量の星がひじょうに接近した連星系の進化を計算し、黄色超巨星に成長して爆発する場合があることを見つめ出しました。
さらに、この計算から超新星の光が収まった後には、黄色超巨星は観測されず、伴星の“青色コンパクト星”が観測されることを予測しています。





超新星出現前(左)と
出現2年後(右)



そして、2013年3月にハッブル宇宙望遠鏡による観測から、
超新星の場所が、爆発前にあった黄色超巨星の明るさより暗くなっていること、
すなわち黄色超巨星が、確かに無くなってしまっていることが分かりました。
黄色超巨星が消えてしまうという、流体力学的計算による理論研究の予測が観測により証明されたんですねー

黄色超巨星の爆発が証明されたことによって、パズルの最後の一片として残されたのは、
連星のモデルから予測される、黄色超巨星の伴星であった星を発見することになりました。

計算によると、黄色超巨星が爆発した時点で、伴星は大質量の青色の星に進化していることになります。
この星は表面温度が高いので、主に紫外線領域の光を発していて、
爆発前の可視光領域の観測では、黄色超巨星の明るさに隠されていたと考えられます。







超新星爆発直前の
青色コンパクト星(左)と
黄色超巨星(右)の連星系
(イメージ図)





でも近い将来、超新星爆発の光がじゅうぶんに暗くなった後であれば、暗い伴星でも観測可能になると予測されています。
2014年には、ハッブル宇宙望遠鏡や、すばる望遠鏡を用いて観測を行い、
超新星爆発メカニズムのモデルの最終的な検証を行うようですよ。

はぎ取られたガスの中で生れた超巨星

2013年05月24日 | 宇宙 space
銀河の中ではなく、銀河から引きはがされたガスの中で生れた大質量星が、
5400万光年彼方の“おとめ座銀河団”で見つかりました。

銀河の大集団である銀河団の中心分は、
摂氏100万度ほどの高温プラズマとダークマターに満ちています。

ここに銀河が落ち込むと、
銀河のガスが高温プラズマとの相互作用によってはぎ取られるんですねー

この、はぎ取られたガスの中では、どのような星形成が行われるのか?

台湾中央研究院では、この疑問について調べるために、
“おとめ座銀河団”に秒速1000キロもの猛スピードで落ち込む銀河“IC 3418”から、
はぎ取られたガスを調べました。

“おとめ座銀河団”は5400万光年彼方にあり、
銀河団としては地球にもっとも近いところにある銀河団です。

NASAの紫外線宇宙望遠鏡“GALEX”による以前の観測では、
“IC 3418”から引きはがされた低温のガスでできた長さ5万光年にも及ぶ尾の中で、
大質量星が生れていることが分かっていました。

紫外線宇宙望遠鏡“GALEX”がとらえた銀河“IC 3418”
引きはがされたガスが5万光年もの尾を伸ばし、その中で青色超巨星が生れている(矢印)
下は、“すばる望遠鏡”で得られた、青色超巨星のスペクトル
通常の星生成活動では説明できない、星表面から吹き出すガスの風の存在を示している


今回、台湾中央研究院では、すばる望遠鏡での分光観測などにより、
この尾の中に単独で存在すると思われる青色超巨星を発見したんですねー

5000万年以上前に、尾の中で生れたとみられる大質量星…

これを調べることで、
銀河内での通常の星生成とはまったく異なる環境で星が生れる様子が、
見えてくるようです。

惑星の作られ方が大気から分かる?

2013年05月23日 | 宇宙 space
ペガサス座の方向130光年彼方の恒星“HR 8799”には、4つの巨大ガス惑星が見つかっています。
そのうちの1つ“HR 8799c”の大気に、水蒸気と一酸化炭素が含まれていることが分かりました。








ケック2望遠鏡でとらえた
HR 8799惑星系
アルファベットが惑星





水蒸気があるといっても、地表がなく、惑星が作られたときの名残りだそうです。
そして、摂氏500度を超える高温な環境なので、生命が住める星でもないんですねー

ただ、大気の成分が分かると、惑星のどのようにして作られたか分かるようです。

惑星が作られるプロセスには、“コア成長モデル”と“重力不安定モデル”の2通りが考えられています。

恒星が作られると、その周囲には惑星の材料となるガスやチリの円盤ができるのですが、
太陽系形成のプロセスとされる“コア成長モデル”では、
惑星の固体の中心核が徐々に形成されはじめ、十分に成長すると円盤からガスを吸収するようになります。






恒星を取り囲む円盤の中で
惑星が作られる様子
(イメージ図)




もう1つの“重力不安定モデル”では、円盤の一部が自己重力でつぶれて、
あっという間に惑星が形成されることになります。

今回観測された“HR 8799c”のデータでは、酸素に対する炭素の比率が高いことから、
“コア成長モデル”で惑星が作られたようです。

時とともに円盤中のガスがだんだん冷えると、水の氷の粒が作られて酸素が消費されるので、
酸素の割合が少なくなるんですねー
そして氷やチリの固体微粒子から中心核が作られ、惑星が形成されはじめます。

固体の中心核が十分に成長しさえすれば、その重力ですばやく周囲のガスが引き付けられ、
今のような巨大ガス惑星になります。
そのガスが酸素の一部を失ったので、“重力不安定モデル”で形成された場合よりも、
酸素と水が少ない状態なったということです。

“HR 8799”の惑星は、恒星から遠く離れていて、
しかも最小のものでも木星の3倍の質量がある巨大惑星ばかりなので、
直接個別に観測することができます。
なので、惑星大気の絶好の研究対象になるんですねー

“HR 8799”系は、太陽系を大きくしたものといえ、
中心星から遠い巨大ガス惑星の存在に加え、もっと近い距離に地球のような惑星を発見したとしても不思議ではありません。

今後、さらに研究を進めれば、
巨大ガス惑星の性質と大気とを、より詳しく理解できるのかもしれません。

40億年前の小天体爆撃の痕跡

2013年05月22日 | 宇宙 space
月には約40億年前に、次々と飛来した小天体により刻まれたとされる、
クレーターや盆地が残っています。

太陽系の誕生から間もない頃、“後期重爆撃期”と呼ばれる時代があり、
集中的な衝突が続いた時期がありました。

こうした集中的な衝突は、木星や土星のような巨大ガス惑星の軌道が移動して、それらの重力の影響で軌道が変わった小天体の一群が、太陽系の内側に飛び込んできたものと考えられています。

この重爆撃期については、1960~1970年代にアポロ計画で持ち帰られた月の石が多くを語っていて、
今回NASAの月科学研究所などにより、小惑星ベスタ由来の隕石からも、同時期に高速で衝突を受けた痕跡が見つかったんですねー

衝突の跡が残る月の裏側(左)、小惑星ベスタ(右)


ベスタ由来の隕石に含まれる、アルゴン同位体の分析から、太陽系内部とともに重爆撃を受けたことが判明しています。

ベスタは、火星軌道と木星軌道にはさまれた小惑星帯の中で2番目に重い大型天体で、
直径は約530キロもあります。

初期の小惑星帯を再現したシミュレーションでも、
ベスタを襲った衝突物は、月に高速でぶつかることができる軌道を持つことが分かりました。

今回の研究の成果で、“後期重爆撃期”がいつ始まったのか? どのくらいの間続いたのか? について新しい発見があるかもしれません。

また、重爆撃は太陽系の内側だけでなく、
小惑星帯自体も襲ったイベントだったことも今回分かったんですねー