宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

宇宙線と高速中性原子から描かれた星間磁場の姿が一致

2014年02月21日 | 宇宙 space
太陽系を包み込む太陽圏“ヘリオスフィア”は、太陽から放出されるプラズマ粒子の流れ(太陽風)に満たされた、バブル状の構造をしています。
ヘリオスフィアと星間磁場の模式図
この太陽圏を、人口物として初めて出たのが、NASAの探査機“ボイジャー1号”なんですねー

“ボイジャー1号”が太陽圏の外で、星間空間の環境を直接観測する一方で、
地球を周回しながら、太陽圏辺境を全体的に観測しているのが衛星“IBEX”です。

“IBEX”は、太陽圏境界で起こる相互作用により、プラズマ粒子が高速中性原子に変わり、まっすぐ飛来してきたところを検出します。
もともとのプラズマ粒子の動きは、辺境の磁場に影響されるので、高速中性原子を観測すれば太陽圏外の磁場のようすが分かるんですねー

今回の研究では、“IBEX”の観測をもとに太陽圏外の磁場マップを、コンピュータシミュレーションで作成。

さらに、宇宙線が全方向から一様にやってくるとして、
宇宙線がその磁場に沿って迂回した結果、どのように観測されるかをシミュレーションしています。

すると、実際に観測される宇宙線の分布と一致していたんですねー
“IBEX”による高速中性原子の観測データから予測される宇宙線分布(右)と、実際に観測される宇宙線分布(左)。

この一致により、“IBEX”の観測から得られた磁場マップの確実性が高まり、
これまで謎だった、「太陽圏の移動方向よりも、その反対側から多く飛来する」宇宙線の不均一な分布も、
太陽圏周辺の星間磁場によるものかもしれない… っというヒントが得られました。

一方で、新たな謎も出てきていいます。
それは、この研究で確かめられた星間磁場の方向が、“ボイジャー1号”の観測と食い違うというものです。

これについては、計測方法が全く違うので、どちらが間違いというものでもないようです。
ただ、この不一致が太陽圏周辺をさらに詳しく知るためのヒントになるようですよ。

銀河中心ブラックホールのそばで、これまでにないフレア現象

2014年02月20日 | 宇宙 space
国立天文台のVERAとアメリカのVLBAの共同観測から、
天の川銀河の中心ブラックホールのそばにある電波源“いて座A”で、
これまでにない変わったフレア現象が発見されました。

これまでの観測結果によると、
巨大ブラックホール近辺の高温プラズマ流全体で何か変化が生じると、
このようなフレアが起るようです。

フレアが起きるメカニズムは、まだ詳しく解明されていません。

でも、これらプラズマ流全体で起きている現象は、
謎に包まれていた“いて座A”の正体を探る上で、重要な手がかりなる可能性があるようです。


フレアが見つかった場所

宇宙に存在する銀河の多くには、その中心に太陽の数100万倍から数10億倍という重さを持った、巨大ブラックホールが存在すると考えられています。

地球が属する天の川銀河の中心にも、
太陽の400万倍の重さを持った巨大ブラックホールがあるようです。

この巨大ブラックホールの近くには、
電波で明るい“いて座A”という天体があることが知られています。

“いて座A”の正体は?

“いて座A”は、「数億から数10億度という非常に高温のプラズマからの光」
だと考えられているのですが、はっきりとした正体は分かっていませんでした。


ただ、この天体を理解することは、
天の川銀河のような一般的な銀河にある巨大ブラックホールで、
何が起きているのかを理解する上で重要なことになるんですねー

国立天文台が保有するVERAを始めとしたVLBIという観測装置は、
非常に高い視力を活かし、ブラックホールの大きさに肉薄するスケールで、
“いて座A”を見ることができます。

なので研究チームでは、
VERAやVLBAを使って2005年から2008年にかけて“いて座A”の観測を行います。

その結果、2007年の5月に“いて座A”が電波フレアを起こしているいることが分かります。
“いて座A”で観測された電波フレア

“いて座A”では、
電波の明るさが数時間から1日の時間スケールで、
変わることが知られています。

でも今回のフレアは、持続時間が最低でも10日以上と非常に長く、
これまでに観測されたことのない種類のフレアだったんですねー

また、この観測結果からは、
フレアが発生した前後で、“いて座A”の構造や大きさに大きな変化が無いことも分かります。

なのでフレアの原因が、
「プラズマ流内の一部の領域にあるのではなく、プラズマ流全体で何か変化が生じた」
っと考えることができます。

このようなプラズマ流全体で起きている現象は、
“いて座A”の正体を探る上で重要な手がかりとなります。

今後、このようなフレアが起きるメカニズムや、
その背景にある“いて座A”のブラックホール周辺のプラズマ流の構造に迫っていくためには、
どうすればいいのでしょか?

これには、電波帯の様々な波長帯でVLBI観測を行い、
“いて座A”のブラックホールの近くのプラズマが電波帯で、
どのような「色(スペクトル)」をしているのか、
観測波長ごとに、どのような形をしているのかを調べていく必要があります。

3月から本格的な科学運用が始まる、
日韓VLBIや、国際サブミリ波VLBIを使った観測が始まるので、
研究が進むといいですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 日本がブラックホールの直接検出へ挑戦!

ギネスに認定された天文衛星“スペクトルR”

2014年02月19日 | 宇宙 space
ロシアが2011年に打ち上げた電波望遠鏡“スペクトルR”が、世界最大の宇宙に置かれた電波望遠鏡として、ギネス世界記録に認定されたんですねー

“スペクトルR”は、地球にもっとも近い高度が600キロ、もっとも遠い高度が330,000キロで、赤道に対して51.3度の角度で地球の周りを回っています。

“スペクトルR”の最大の特長は、なんと言っても直径10メートルの巨大なアンテナになります。
そして、このアンテナから叩き出される8マイクロ秒角という高い分解能を使い、遠くの銀河やブラックホール、中性子星の詳細な観測や、ダークエネルギーの検出を目的にしています。
このアンテナは、アルミニウムと炭素繊維で作られた27枚の花びらのような部品で構成されていて、
打ち上げ前はつぼみのように折りたたまれて、軌道上で開花したんですねー


また、“スペクトルR”はラジオアストロンと呼ばれる、国際的なVLBI観測計画の一翼も担っています。

VLBIとは超長基線電波干渉計のことで、遠く離れた複数の電波望遠鏡を、あたかもひとつの超巨大電波望遠鏡として観測に用います。
このとき、お互いの距離が望遠鏡の口径となるので、原理上は望遠鏡同士が離れていればより良いんですねー

でも、地上に電波望遠鏡を置く場合には、地球の大きさという制約がでてきます。
MUSES-B“はるか”

そこで、1つ以上の電波望遠鏡を宇宙に置き、地球上の電波望遠鏡と連携させることで、地球上だけでは実現できないほどの、とてつもなく巨大なVLBIを作り出すことができるんですねー

これをスペースVLBIと言い、この技術は1997年に打ち上げられた日本のMUSES-B“はるか”によって、世界で初めて証明されたそうですよ。

原始惑星系円盤に取り込まれたガスの化学変化

2014年02月18日 | 宇宙 space
およそ460光年彼方の原始星で、周囲のガスが原始惑星系円盤に取り込まれる際に、組成が大きく変化するようすがとらえられました。

黒い筋模様原始星“L1527”に引き込まれるガスの動きが、回転優勢に転じる“遠心力バリア”の内側が、“原始惑星系円盤”の構造となる。遠心力でガスが暖められることで、放出された一酸化硫黄分子のリング状分布(紫色)が、電波観測で明らかになった。

星は、宇宙に漂うガス微粒子が集まることで生まれます。

生まれたばかりの星(原始星)の周りに、さらに降り積もったガスや微粒子は、星を取り巻く円盤“原始惑星系円盤”となり、この中でやがて惑星が生まれることになります。

おうし座方向にある原始星“L1527”を取り巻くガスの動きや温度を、アルマ望遠鏡で調べてみると、
星の周囲のガスが、円盤に取り込まれていく過程で局所的に加熱され、大きな化学変化を引き起こしていることが分かりました。
観測されたガス分子の動き。

“原始惑星系円盤”の形成において、
これほど化学組成が変わることが発見されたのは今回が初めて…
これは、アルマ望遠鏡の高い解像度と感度がもたらした成果なんですねー

また、この化学変化のようすから、円盤が成長しつつある外縁部をくっきりととらえることもできました。

円盤外縁部でのガスの化学変化が普遍的なもの、
つまり、私たちの太陽系が生まれたころのプロセスにも当てはめられるものなのか、
それとも、この天体固有のものなのか…

まぁー 今後の観測次第ということです。

火星の黒い筋模様は、液体の水を示す証拠かも…

2014年02月17日 | 火星の探査
3年前に火星で発見された黒い筋模様。
これが、火星に液体の水が存在している証拠かもしれないんですねー
黒い筋模様バリキール・クレーターの岩盤が
露出した地点でとらえられた

この黒い筋模様は“Recurring Slope Lineae:RSL(繰り返し現れる斜面の筋模様)”と呼ばれ、現在火星研究者の間でホットなキーワードになっています。

液体の水の決定的な証拠は、まだRSLで見つかっていないのですが、「水分なしでどうやって現れるのか?」が分からないんですねー

今回、NASAの火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”の画像データから、RSLが現れそうな中緯度付近の岩石質の崖を200箇所探し、RSLが見られる13地点を見つけています。

そして、RSLが残しているかもしれない鉱物などをスペクトル観測で調べ、この筋模様の発生に水が関連するかどうかが検討されました。


結果、塩や水の存在につながる材料は見つからなかったのですが、
ほとんどの地点で、鉄や鉄を含む鉱物がRSLのない斜面よりも豊富でした。
また、RSL自体と同様に、暖かい季節ほど鉄の鉱物の量も多くなるようでした。

1つの可能性としては、粒子の大きさによる寄り分けが地表で起こったことが挙げられるのですが、これは水がなくても可能なんですねー

でも鉱物の酸化や、水分の存在で色が変わった場合も考えられ、これらは両方とも水が存在したことを示しすのですが、直接水分は検出されていません…
観測範囲や観測時間帯(午後に限られている)の問題で、見過ごされている可能性もあります。

そして、もっと有力なのが、氷点の低い塩水が液体のまま流れたという説です。

水の流れが見つかったとなると、それが塩水であっても大発見になります。
これは、火星における現在の気候変動への理解に、かなりのインパクトを与えることになるんですねー

さらに、表面近くに生物が生きられるような環境が存在する… 可能性があるかもしれませんね。