宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

2つの太陽をもつ惑星は、どこからやって来たのか?

2014年02月11日 | 宇宙 space
スターウォーズに登場するタトゥイーン星のように、
2つの太陽を持つ惑星は、どのようにして形成されたのか?

こうした2つの太陽の周囲を公転する惑星は、連星からもっと離れた場所で形成され、
移動してきたらしいことがシミュレーション研究から分かってきました。
2つの太陽を持つ“周連星惑星”(イメージ図)

2つの恒星がペアを成す連星系。
この連星の周囲を公転する惑星を“周連星惑星”といいます。

“周連星惑星”は2011年に初めて見つかったばかりで、まだその発見例は少ししかありません。

理論上では、連星周囲の重力環境では、
惑星の材料となる岩石の小天体が、ぶつかり合い粉々になってしまうので、
惑星の形成が難しいと考えられています。

このことは、最新のコンピュータシミュレーション研究でも、同様の結果が出ているんですねー

ブリストル大学では、2012年に発見された“ケプラー34b”をサンプルに、
およそ100万個の小天体の衝突過程を、精密にシミュレーションしています。

“ケプラー34b”は、はくちょう座の方向およそ5000光年彼方にある惑星で、
28日周期の連星の周囲を約289日周期で公転しています。
中心の連星からは、太陽-地球間と同程度の距離があります。

シミュレーションから分かったことは、
“ケプラー34b”の現在の軌道では、惑星まで大きく成長するのは難しいこと。

つまり、“ケプラー34b”は中心の連星からもっと離れた場所で形成され、
その後、今ある場所に移動してきたとするほうが妥当だということになります。

この研究結果からすると、これまでに見つかっている“周連星惑星”のほとんどが、
形成時の位置からかなり動いて今の位置にやってきたと考えることができます。

いったい、どうやって移動してきたんでしょうね。

木星の移動が、地球に水をもたらした?

2014年02月10日 | 宇宙 space
太陽系の“メイン・アステロイドベルト”と呼ばれる小惑星帯。
ここに位置する、10万個の小惑星の大きさ・位置・組成について、最新の地図が完成したそうです。
木星の移動が、小惑星をはじき飛ばした。
(イメージ図)

太陽系の中で、火星と木星の間にある小惑星の軌道が集中している領域を“メイン・アステロイド・ベルト”といいます。

現在、“メイン・アステロイド・ベルト”に位置する小惑星には、太陽に近く温度の高い場所で形成されたものと、太陽系の辺縁のより寒冷な場所で形成されたものとが入り混じっているんですねー

小惑星は1980年代に考えられていたように、形作られた場所にそのまま留まっているわけでなく、太陽系初期に起きた惑星の大移動の影響で激しく移動したという説を、この地図は裏付けているそうです。

今回の研究では、宇宙の地図作成プロジェクト“スローン・デジタル・スカイサーベイ”のデータを利用し、
直系5キロまでの小型の小惑星表面の波長から、太陽系のどこで形成されたのかという特定が行われました。

そして、このサイズの小惑星がひじょうに多様で、乾燥したタイプから水分の多いタイプまで、多様な小惑星が揃っていることが分かったんですねー

小惑星のタイプが多様ということは、“グランド・タック・モデル”と呼ばれる、太陽系初期の惑星大移動に関する理論を補強すると考えられています。

このモデルでは、木星は太陽系形成の初期には、現在の火星よりもさらに太陽に近い内側に移動し、その後に現在の位置まで離れたと考えられています。
このときに太陽系の周辺部である、海王星周辺の冷たい環境で形成された小惑星を内側に引き寄せ、さらに内側の水星のあたりにあった小惑星を弾き飛ばしたそうです。

こうした小惑星の移動は、地球にどうやって水がもたらされたのかを、解明する手掛かりになるとも考えられているんですねー

地球に存在する水のほとんどは、小惑星の衝突によって、太古の時代にもたらされたというのが天文学者の説です。
この説のとおりだと、惑星の移動の影響で、小惑星の衝突につながる移動が起きたということになります。

また、地球とよく似た環境を持つ太陽系以外の天体“系外惑星”でも、同様のことが起きたのかという疑問も出てくるんですねー

もし、同じプロセスが必要だとすれば…
水があり、居住可能な“系外惑星”は、考えられているよりも稀な存在なのかもしれませんね。

赤外線でとらえた三裂星雲

2014年02月09日 | 宇宙 space
NASAの赤外線天文衛星“WISE”がとらえた、三裂星雲(M20)の画像が公開されました。
この画像では、可視光線だと暗い裂け目のように見える部分が、赤外線では明るく輝いているようすが良く分かるんですねー







“WISE”が撮影した三裂星雲付近。
4種類の波長の赤外線で撮影されたものを合成している。






三裂星雲は、いて座の方向約5400光年の距離にあり、天文ファンや天体写真愛好家に大人気の天体です。

画像の中で、広い範囲に緑色に見えているのは水素ガスで、三裂星雲は左下の黄色やオレンジ色の部分になります。

三裂星雲の愛称は、可視光線では暗い線によって星雲が3つに分かれているように見えることからきているのですが、
この暗い線はチリでできていて、“WISE”による赤外線画像では、3本の明るい線として黄色く見えるんですねー

三裂星雲では星が爆発的に生まれているので、「星のゆりかご」と表現されることがあります。

これは、大質量星からの放射や恒星風が、周囲のガスやチリを吹き飛ばしていて、
星雲内でこうした現象が起こることによって、新しい星の誕生が引き起こされるからです。

右上の赤い部分は、ひじょうに若い星々によって温められたガスで、
画像のあちこちに広がっている青い点は、さらに成長した星たちでになります。
星雲で生まれた赤ちゃん星たちも、やがてはこれらの星と同じような姿になっていきます。


“WISE”は、予定ミッションが終了した2011年2月に、ほとんどの搭載機器をオフにして省エネの冬眠モードに入り、再稼動したのが昨年の9月になります。
2年半ぶりに目覚めた後、赤外線天文衛星“NEOWISE”と改名し、地球近傍小惑星の観測を行うんですねー

アメリカが2025年までの実現を目指す、小惑星捕獲・有人探査の目標となる天体も、この“NEOWISE”の観測対象から選ばれるかもしれないそうですよ。

今年の秋は、火星から彗星の一斉観測がありますよー

2014年02月08日 | 流星群/彗星を見よう
今年の10月19日には、火星に“サイディング・スプリング彗星”が最接近します。
NASAでは、火星探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”や、火星探査車“キュリオシティ”による彗星の一斉観測を計画しているようです。




赤外線天文衛星“NEOWISE”がとらえた“サイディング・スプリング彗星”



“サイディング・スプリング彗星”は、2013年1月にオーストラリアのサイディング・スプリング天文台が発見したオールト雲起源の彗星です。
軌道が火星のそばを通るので、火星に衝突するのでは っと発見当時は話題になったんですねー
マーズ・リコナサンス・オービター
マーズ・オデッセイ
オポチュニティ
キュリオシティ
マーズ・エクスプレス

そして、ハッブル宇宙望遠鏡や赤外線天文衛星“NEOWISE”の観測から、火星から13万8000キロを通過することが分かりました。

これは地球に置き換えると、地球-月間のおよそ3分の1程度の距離になり、近くを通るのですが衝突コースとはいえないようです。

“サイディング・スプリング彗星”は、今年の4月から5月にかけて太陽に近づき、表面の氷が溶けて多くのダストを放出するはずです。
そして、これらのダストが火星に多く降り注ぐことが予測されているんですねー

こうした彗星の活性化が、どの程度起きるのでしょうか?
これについて、NASAの研究者による検討が行われています。

現在、火星では火星周回探査機“マーズ・リコナサンス・オービター”と“マーズ・オデッセイ”、火星探査車の“オポチュニティ”と“キュリオシティ”、そして欧州の“マーズ・エクスプレス”が活動しています。

さらに今年の9月には、昨年11月に打ちあげられた火星探査機“メイブン”、インド初の火星探査機“マンガルヤーン”が到着する予定なんですねー

火星の薄い大気でも、彗星から来る宇宙チリから地表の探査車を守る効果はあると考えられているのですが、
火星の上空を周回する探査機には、損傷が起きる可能性もあるようです。

通常の宇宙チリが、探査機に大きな損傷を与える可能性は数パーセントなんですが…
でも、今回の“サイディング・スプリング彗星”からもたらされる、秒速56キロにもなる宇宙チリの危険性は、通常の10倍以上になるようです。

ただ探査機に与える影響を慎重に計る必要はあるのですが、火星に大接近する彗星を、火星探査機で一斉に観測できる機会に、期待が寄せられているんですねー

実は2013年に、アイソン彗星が火星に接近した際にも、観測が行われています。

この時は、“サイディング・スプリング彗星”よりも80倍以上の距離があったので、“マーズ・リコナサンス・オービター”で撮影した画像でアイソン彗星の核は、1ピクセル程度の大きさしかなかったそうです。

今回、彗星の核を“マーズ・リコナサンス・オービター”のハイライズ・カメラで撮影すると、数十ピクセルの大きな画像が得られるようです。

また、火星探査車の“キュリオシティ”と“オポチュニティ”は、彗星の尾を構成する粒子の規模を計る指標として、地表から流星雨を観測する役割を担うようです。

“サイディング・スプリング彗星”は、火星への最接近から6日後に太陽に最も近づきます。
ただ、次に太陽系の内側に戻ってくるのは、100万年先になるそうです。

今秋、火星に彗星が大接近、火星探査機による一斉観測を予定

赤外線で分かってきた、超巨大ブラックホールの活動性

2014年02月07日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡で赤外線観測した28個の合体銀河。
この合体銀河で、超巨大ブラックホールが大量の物質を飲み込んで活性化され、ブラックホール周辺のガスがひじょうに明るく輝いているようすがとらえられました。

また一方で、合体銀河には複数の超巨大ブラックホールが存在すると考えられていたのですが、2つ以上の活動的な超巨大ブラックホールが検出された割合は全体の約15%しかなかったんですねー






すばる望遠鏡で撮影した、合体中の“大光度赤外線銀河”の赤外線画像。




現在の一般的な銀河形成理論では、ガスを豊富に持つ銀河同士が衝突・合体して、大きな銀河へ成長してきたと考えられています。
銀河の合体中には、ガスが集められることで星生成活動が活発になるんですねー

また、元の銀河の中心に存在する太陽の100万倍以上の質量を持つ超巨大ブラックホールに、物質が落ち込むことで、
ブラックホール周囲の円盤状ガスがひじょうに高温になり、とても明るく輝く“活動銀河中心核活動”が起こります。

これらの活動を観測的に理解することは、銀河形成を解明する上で重要なんですが、
大量のチリとガスに埋もれた場所で活動が生じる考えられていて、可視光線ではよく見えないんですねー
なので、チリによる吸収の影響を受けにくい、赤外線での観測が必要になってきます。

国立天文台ハワイ観測所の研究チームでは、赤外線で明るく輝く合体銀河“大光度赤外線銀河”を高解像度撮影することで、
チリに埋もれた活動的な超巨大ブラックホールを精密に研究する手法を確立したそうです。

活動的な超巨大ブラックホールと星生成活動は、どちらもチリを温めます。
でも、エネルギーの変換効率が異なるので、赤外線での光り方が違うので区別ができるんですねー

今回すばる望遠鏡に搭載された、近赤外線分光撮像装置“IRCS”と補償光学装置を用いて、合体中の“大高度赤外線銀河”を29個観測。
そして、2種類の赤外線波長の画像を比較したところ、28個の銀河において少なくとも1つの活動的な超巨大ブラックホールが存在することが確認できました。

これは、ガスを豊富に持つ合体銀河では、超巨大ブラックホールに大量の物質が落ち込んで明るく輝き、“活動銀河中心核活動”として観測されやすいということを示しているんですねー


チリに埋もれた活動的な超巨大ブラックホールの存在が、
複数確認された4個の合体銀河の赤外線画像。

一方で、2つ以上の活動的な超巨大ブラックホールが見つかった天体は4個しかありませんでした。

なので、合体銀河中に存在するすべての超巨大ブラックホールに、激しく物質が落ち込んでいる訳ではなく、その活動性に個性があると考えることができます。

超巨大ブラックホールへ物質が落ち込んで、その周囲が明るく輝く現象は、銀河全体の性質ではなく、ごく周辺のガスの運動などによって決まるんですね。













合体銀河における活動的な、超大質量ブラックホール付近。(イメージ図)