宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

無人宇宙往還機“X-37B”が4回目の飛行へ

2015年05月26日 | スペースプレーン
“X-37B”はアメリカ空軍の無人宇宙往還機。
今回が4回目のミッションになり、
5月20日にアトラスVロケットに搭載され、無事に打ち上げられたんですねー

今回は、電気推進エンジンの試験や新素材の実験などが行われるようです。
アトラスVロケットは、ケープ・カナベラル空軍ステーションから離昇。

“X-37B”は軍事衛星になるため、飛行経路や投入された軌道は不明…
ただ、打ち上げが成功したことだけが発表されました。

ボーイング社が開発した“X-37B”は、
無人の宇宙往還機で、完全な自律飛行が可能。

また、スペースシャトルのように、
整備した上で再使用ができるように造られています。

これまでに同型機は2機が製造され、
1号機が2回、2号機が1回の飛行を行っているんですねー
今回のミッション“OTV-4”は、2号機の2回目のミッションになります。

1号機の1回目のミッション“OTV-1”は、
2010年4月22日に打ち上げられ、同年の12月3日に着陸。

2号機の1回目のミッション“OTV-2”は、
2011年3月5日に打ち上げられ、2012年6月16日に着陸しています。

そして2012年に12月11日から2014年10月17日にかけては、
1号機の2回目のミッション“OTV-3”が行われています。

“X-37B”の軌道上での滞在可能期間は、カタログスペックで270日でした。

でも“OTV-2”では469日間…
“OTV-3”では、さらに上回る674日間(約22か月間)にもわたて、
飛行し続けているんですねー

この長い滞在期間に“X-37B”が宇宙空間で何を行っているのか?
は、やっぱり不明。

なので、新しい機器や素材の実験から、宇宙兵器の試験といった説まで、
さまざまな憶測がされています。

ただ、今回の“OTV-4”に関しては、
電気推進システムの一種であるホール・スラスターの試験を行うことと、
NASAによる材料実験装置が搭載されることが発表されていたりします。

もちろん、それ以外にも何らかの試験や実験が計画されているはずですがね ^^;

水星に似た原始惑星の衝突が、地球の核を形成した?

2015年05月25日 | 宇宙 space
地球内部にあるドロドロの熱い部分“核”は、
今から数十億年前、若き日の地球と水星に似た原始惑星の衝突によってできた、
という説が発表されました。

水星の写真。 水星に似た天体が若き地球に衝突し、
核の融解状態を保つために必要な、放射性元素をもたらしたのかも。

地球の核を直接見ることは出来ません。

でも地震波が伝播するようすから、
その成分は、主に溶けた鉄とニッケルであることが分かっています。

また、これらの熱い物質は、
地磁気およびプレートテクトニクスのもとになっていることも…

ただ分からないことは、
その核が、地球誕生から45億年にもわたって溶融状態を保っていること。
この理由は、謎に包まれているんですねー

地球誕生のきっかけとなった微惑星の衝突。
この衝突で生じた熱は、徐々に宇宙へと逃げていったはずです。

そして、核の成分が鉄とニッケルだけなら、
大昔に凝固していなければ、おかしいんですねー

そこで疑われたのが放射性元素の存在。
その崩壊によって生じた熱が、
核の融解と地磁気を維持していると考えられています。

でも具体的に、どの元素が関わっているのかは、
まだ明らかにされていません。

この説では、ウランとトリウムを、その最有力候補としています。

そして、これらの放射性元素は、
まだ形成過程にあった地球に、水星に似た原始惑星が衝突したときに、
もたらされた可能性があるそうです。


地球内部の放射性元素として候補に挙がっていたのは、
カリウム、ウラン、トリウムの3種類。
では、この中のどれが、核の融解に関わっていたのでしょうか。

さらに、地球誕生時から地殻に存在すると考えられる、
サマリウムとネオジムという希土類元素の比率が、
小惑星に見られる両元素の比率と異なるのは?

これら2つの疑問の要因は、太古の衝突にあるそうです。

根拠は、惑星形成論、水星やその他の惑星のデータ、高温実験などなど…
複雑な説明が伴うのでカットです。

シナリオは、
太陽系の初期に、小惑星のような天体が衝突して地球が生まれたあと、
水星によく似た組成の何かが衝突し、
地球の化学物質が、独自の構成をもつようになったというもの。


若き地球と惑星サイズの天体が衝突したとする説は、
これが初めてではありません。

多くの専門家が、
火星サイズの天体が地球に衝突した際に、溶けた岩が宇宙に飛散し、
それが冷えて月になった(ジャイアント・インパクト説)と考えています。

ただ、月形成をもたらした天体は、火星ほど大きくなく、
水星ほどの大きさだったのではないか…
つまり、月を作った天体と、放射性元素をもたらした天体は、
同じものだったのかもしれませんね。

1万3000光年彼方の系外惑星

2015年05月24日 | 宇宙 space
NASAの赤外線天文衛星と地上望遠鏡の共同観測から、
天の川銀河の中心方向1万3000光年彼方に、系外惑星が発見されたんですねー

系外惑星の観測は、地球に似た天体を探すために行われています。
こうした遠方の惑星の存在を探ることに、なにか他に意味があるのでしょうか。
今回発見された惑星は、太陽系と天の川銀河の中心の中間あたりに位置している。

共同観測が行われたのは、NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”と、
チリ・ラスカンパナス天文台のワルシャワ望遠鏡。

このプロジェクトでは、
重力マイクロレンズ現象から系外惑星の探査を行っています。

重力マイクロレンズ現象とは、
恒星の前を、もう1つの恒星が通過したときに、
手前の星の重力がレンズのように働いて、
向こう側の星が明るく見える現象。

手前の星の周りを惑星が回っていれば、
このレンズ作用に変化が生じるので、
そこから惑星の存在が分かるんですねー

今回の観測では、地上のワルシャワ望遠鏡に加えて、
地球から2億キロの位置にある“スピッツァー”でも、
この重力レンズ現象を同時観測。

すると、惑星の存在によるレンズ作用の変化が、
地上より20日早く見られることになります。

このタイムラグから恒星の正確な距離が求められ、
この惑星が木星の半分程度の質量になることも分かりました。
重力マイクロレンズ効果を使った観測手法の概念図。

この手法で銀河バルジ(銀河中心部の膨らみ)に存在する惑星が、
30個ほど見つかっていて、最も遠いものでは2万5000光年彼方になるんだとか。

遠方の惑星を検出することで、
銀河スケールでの系外惑星の分布に偏りがあるかどうかを、
調べることが出来るんですねー

“ニューホライズンズ”がとらえた冥王星と衛星カロン

2015年05月23日 | 冥王星の探査
今年の7月、冥王星に接近する探査機“ニューホライズンズ”がとらえた、
冥王星と衛星カロンのカラー画像が公開されました。
冥王星(大きい点)と衛星カロン
探査機“ニューホライズンズ”

“ニューホライズンズ”は、2006年に打ち上げられたNASAの探査機。
目標天体の冥王星と、その衛星カロンを目指して9年半の旅を続けてきました。

そして、今年の7月14日には、
冥王星に最接近し、通過しながら観測を行う予定なんですねー

その“ニューホライズンズ”が旅の途中に撮影した、
冥王星と衛星カロンのカラー画像が公開されたということです。


近づく冒険の目的地

撮影時の冥王星~“ニューホライズンズ”間の距離は、
地球から太陽までの距離よりも近い約1億1500万キロ。

この距離から撮影しても、
冥王星と衛星カロンは、まだ単なる明るい点にしか見えず…

でも探査機を正確に、冥王星との最接近ポイントに導くうえで、
(冥王星表面からわずか1万2500キロ)
重要なデータになるんですねー

“ニューホライズンズ”は、冥王星の大気や表面のよすを探査するほか、
衛星カロンの大気の有無などを調べることになります。

また、計画が始まった2001年には見つかっていなかった、
他の4つの衛星(ニクス、ヒドラ、ケルベロス、ステュクス)の調査や、
他に衛星がないかどうかも探す予定。

さらに、冥王星を通り過ぎた後にも、太陽系外縁天体を探査するそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 冥王星の衛星が、不規則な自転をするのはなぜ?

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に予想外の発見! 磁場は存在しない…

2015年05月22日 | 彗星探査 ロゼッタ/フィラエ
ヨーロッパ宇宙機関の彗星周回探査機“ロゼッタ”のミッションにより、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に、磁場が存在しないことが分かりました。

昨年11月に、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着離した、
実験機“フィラエ”による測定では、
同彗星の核が磁気を帯びている証拠を見つけられなかったんですねー
彗星周回探査機“ロゼッタ”から切り離された、
実験用着陸機“フィラエ”のカメラがとらえた、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。

母船の彗星周回探査機“ロゼッタ”から、
7時間かけて20キロ下の彗星に降下した“フィラエ”は、
荒っぽい着地を行うことになります。

“フィラエ”は、地球上では重さ100キロでも、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の弱い重力の中では、
羽毛より軽くなるんですねー

このため、固く凍った彗星表面で数回バウンドし、
暗い溝の中に傾いた状態で、ようやく止まることになります。

でも、このアクシデントは、
結果的に、今回の研究にとって大きな幸運をもたらすことに…

彗星表面を横切る予定外の飛行により、
表面に接触した4か所と、表面から上のさまざまな高度で、
“フィラエ”は正確な磁場観測データを収集。

このデータを分析した結果、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、
著しく非磁性の天体であることが分かりました。


ただ、この発見により、
彗星や他の太陽系天体の形成に関する主要理論が、
否定される可能性が出てきたそうです。

それは測定結果が、一部で提唱されているように、
「惑星形成の重要段階に磁気力が関与している」わけではない可能性を、
意味するからでした。

これまでの仮説では、太陽、小惑星、彗星、衛星、惑星などは、
鉄の一種である磁鉄鉱の微粒子が大半を占める、
チリとガスが渦巻く円盤“原始惑星系円盤”から、形成されたと考えられています。

この仮説によると、
ミクロレベルでは、原始惑星系円盤の磁場が物質を凝縮させ、
原始天体形成の一助になったとされています。

でも、それ以降の物質降着段階で、
磁気力が、どのような役割を担ったかは不明なんですねー

天体が直径数百メートルから数百キロへと巨大化し、
重力が支配的な力になる以前の惑星形成の中間段階に、
磁気力が関与していたかもしれないことは、
一部の説で示唆されていたことでした。

なので、“フィラエ”の測定結果は、
この説を否定するかもしれないということです。

ただチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星が、
全ての彗星核を代表するのかどうか、という問題は残るのですが…

磁気力が、
「原始太陽系では、これまで考えられていたよりもはるかに小さい」
ものだったのかもしれませんね。