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衛星フォボスは、ゆっくりと火星に引き裂かれている?

2015年11月25日 | 火星の探査
火星の衛星フォボスが、ゆっくりと引き裂かれていると、
NASAのゴダード宇宙飛行センターが発表しました。

研究チームによると、フォボスの表面に何本も走る長く浅い溝が、
火星の潮汐力で、ゆっくりと引き裂かれている最初の兆候だそうです。

これまでフォボスの溝は、天体の衝突によって出来たと考えられてきたのですが、
火星の潮汐力によって引き裂かれる際のストレッチマークだったんですねー

惑星との距離が、太陽系の衛星のなかでもっとも近いのがフォボスです。

火星の上空約6000キロの軌道を回っていて、
重力によって100年に2メートルずつ火星に「落下」しているそうです。

科学者たちは3000万年から5000万年の間に、
フォボスが引き裂かれるのではないかと予測しています。

実は同様の説は、NASAの探査機“バイキング”が、
フォボスの画像を地球に送った何十年も前にも提案されていました。

でも、当時はフォボスがもっと硬い天体と考えられていて、
これを引き裂くには潮汐力では弱すぎるとされてしまいます。

いまではフォボスの内部は、
「辛うじて形を保っている厚さ100メートルほどの堆積物の集まり」
かもしれないと考えられています。

海王星に落下中の衛星トリトンも、フォボスと同じような表面を持っているので、
同じような運命にあるのかもしれませんね。

あと、今回の研究は太陽系外の惑星にも当てはまるそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 火星のサンプルも手に入る? 衛星“フォボス”の探査は2倍お得

太陽系の未来かも… 地球も白色矮星に切り裂かれてしまう?

2015年11月24日 | 宇宙 space
12年間にわたる観測で、
死を迎えた恒星と、かつてその恒星の周りにあった惑星との相互作用が、
初めて詳しく解明されました。

遠い未来には、太陽系もこのような運命をたどるようですよ。


年を取れば太陽も赤色巨星から白色矮星になる

質量が太陽の10倍以上の重い恒星は、
超新星爆発を起こして一生を終えることになります。

でも、それよりも質量の小さい恒星は、違う運命をたどるんですねー

太陽の1~8倍程度の質量しかない軽い恒星は、
燃料を使い果たして燃え尽きると、膨らんで赤色巨星になります。

外層は宇宙空間へと放出され、あとには高温高密度の白色矮星が残ります。

こうした過程において、
周りに存在する惑星や小惑星などは、どうなるのでしょうか?
そして、一体何が残されるのでしょうか?

今回、その疑問に答えを出すヒントになる最新の研究成果が発表されました。


白色矮星の周りを取り巻く円盤

この研究では、
ヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡VLTなどを用いて、2003年から12年にわたって観測された、
おとめ座方向の白色矮星“SDSS J228+1040”のデータを調査。
白色矮星と周囲の円盤状構造(イメージ図)

医療の現場で人体をスキャンして診断するのに似た技術、
ドップラー・トモグラフィーと呼ばれるものが使われています。

解析からは、白色矮星の周りを回りながら食い物にされ、
ガス状になって光を放っている構造の詳細な分布が、初めて明らかにされました。

こうした白色矮星の周りのガス状円盤は珍しく、
これまでに7例しか見つかっていないんですねー

研究チームではこの状況を、
1つのはぐれた小惑星が白色矮星に危険な距離にまで接近し、
その強力な潮汐力によって引き裂かれ、白色矮星の周りを取り巻く円盤状構造を、
形成することになったと考えています。

この円盤が作られたのは土星の環と同じようなプロセスなんですが、
スケールは大きく異なるんですねー

“J1228+1040”の直径は土星の7分の1以下しかないのに質量は2500倍もあり、
白色矮星と円盤の内縁までの距離70億キロの間に、
土星とその環はスッポリと収まりまってしまいます。

“J1228+1040”のような天体は、
恒星が一生を終えるときに、どんな環境ができるのかについて、
ヒントを与えてくれます。

70億年後の太陽系の運命を含め、
惑星系で何が起こるのか… 興味が出てきませんか?


太陽系近くの起源が明らかに! 25年も前のデータから分かってきたこと

2015年11月23日 | 宇宙 space
衛星“ヒッパルコス”のデータから、
太陽系近傍に存在する高温大質量なOB型星の3次元立体分布図が作られました。

これにより、太陽系のお隣さんにあたる領域に、
新しい星のグループの存在が明らかになります。

さらに、オリオン座の星の起源に光が当てられたほか、
これまで知られてきた“グールド帯”は、
存在そのものに疑問が投げかけられているんですねー


星の位置や運動を観測

“ヒッパルコス”は、
1989年に打ち上げられたヨーロッパ宇宙機関の位置観測衛星です。

1993年まで観測を続け、
星々の位置や運動の高精度なデータをもたらしてくれたんですねー

“ヒッパルコス”の観測データからは2次元の地図が作成され、
太陽系の近傍に関する理解や知識は大きく変わることになります。

でも、2次元に投影した地図では、
見かけの構造が現れてしまったり、反対に重要な構造が隠れたりしてしまうので、
3次元宇宙のすべての特徴は表せませんでした。


スペクトル型

太陽の光をプリズムに通すと、虹の七色にわかれますよね。
これは他の恒星からの光でも同じです。

この色の系列をスペクトルと言い、
色は紫、藍、青、緑、黄、だいだい、赤と中間の色を含めて順番に並んでいて、
光の波長の順(短い方から長い方へ)なんですねー

なのでスペクトルとは、
光(波)を波長ごとに分解したときの成分ととらえることもできます。

太陽のスペクトルをよく見ると、
ところどころに黒い線(暗線)が入っているのが分かります。

これをフラウンホーファー線と言い、
この1本1本の黒い線は、太陽の大気中にある特定の原子(やイオン)に対応しています。

太陽の大気中の原子(やイオン)が、
特定の波長の光を吸収するため黒い線ができます。

もちろん他の恒星からのスペクトル中にも、
このようなフラウンホーファー線を見ることができます。

なので、フラウンホーファー線の位置によって、
恒星の大気中に、どのような原子が存在しているのかが分かるんですねー

スペクトル型は、恒星をその発光のスペクトルの種類や強さによって分類したもので、
恒星の表面温度とともに恒星の色とも深く関係しています。

今回の研究で行ったのは、
太陽から約1500光年以内にあるスペクトル型がOやBの恒星“OB型星”の、
3次元分布図作成。

OB型の恒星”には、オリオン座の三ツ星やリゲル、しし座レグルスなどがあり、
太陽は近すぎて色がよく分かりませんが、
遠くから見れば黄色に見えるG型の恒星になります。

これにより、2次元で見たときとの違いが示され、
高温星の分布に新たな構造があることや、
OB型星がどのように形成されたのかが分かってきます。
(左)天の川銀河(イメージ図)、
(右)太陽系近傍のOB型星の分布を示した3次元立体図。


太陽系近くにある3つの巨大な流れ

太陽系の近傍には、
高密度の星団とOB型星がゆるく集まってできた、
3つの巨大な流れのような構造があるようです。

1つ目の構造は、
“さそり座”から“おおいぬ座”まで達する1100光年以上にわたるもので、
6500万年以上の星形成の歴史があると見られています。

“ぼ座”にある2つ目の構造は、500光年以上の範囲に広がっていて、
その歴史は3000万年ほどと考えられています。

そして、“オリオン座”に位置する3つ目の構造が、
最も重要な意味を持つようです。


巨大な流れから分かった星の起源

“オリオン座”にある、
地球から250~800光年の距離に位置する5つのOB型星は、
これまで起源が謎で、約1300光年の距離にある「オリオン座大星雲ではない」と、
考えられてきました。

でも、3つ目の構造の発見によって
遠く離れたこれらの星々は、実は1000光年以上の長さを持つ、
2500万年の星形成史がある巨大な構造の一部らしいという、
答えが出ることになります。

さらに研究チームでは、
“オリオン座”の赤色巨星であるペテルギウスについても発表。

これまで、よく分かっていなかったペテルギウスの起源が、
新たに発見したOB型星のグループ“Taurion”だということです。

また、これまで“グールド帯”として知られてきた構造が、
実は幻影かもしれないという内容も発表されています。

これまで“グールド帯”は、
長さ3000光年にわたる不完全な環状構造を持つOB型星の集まりだと、
思われてきました。

でも、これは2次元に投影した結果表れた見せかけの構造なんだとか…
“グールド帯”は、2次元投影が見せるものをだますという完璧な例だそうです。

今回の研究では、25年も前の“ヒッパルコス”のデータが、
現在の技術を使うことで研究に恩恵をもたらしてくれること、
そして3次元立体視の可能性を、はっきりと示す結果になりました。

ただ、太陽系近傍の本当の姿を明らかにするには、
現在のモデルでは不十分…

形成から進化にいたるまで、
まだまだ多くのことを学ぶ必要があります。
研究は始まったばかりですね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 銀河の地図作りから分かった、大質量星形成領域が遠ざかっていく様子

ロシア製エンジンが使えず軍事衛星が打ち上げられない? アメリカ衛星打ち上げサービスの現状

2015年11月22日 | 宇宙 space
アメリカ空軍の次世代GPS衛星“GPS III”の打ち上げ契約の入札に、
アメリカの基幹ロケットを運用するユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社が、
参加しなかったそうです。

2006年に、ボーイング社とロッキード・マーティン社の、
衛星打ち上げ部門同士が合体し設立された会社がULA社です。

主に、デルタIVロケットとアトラスVロケットの運用を行い、
これまでにアメリカ国防総省やNASAなどの衛星を打ち上げてきました。

そうULA社は、
アメリカ政府向けに打ち上げサービスを提供してきた会社なんですねー


ロシア製エンジンの購入数制限

デルタIVロケットと違い、
アトラスVロケットにはロシア製エンジンが使われています。

ただ、このロシア製エンジンが、
クリミア半島をめぐるロシアとの対立が原因で、
アメリカ議会により購入数を制限されてしまいます。

アトラスVロケットは、そのロシア製エンジンがないと飛ばせず…
デルタIVロケットは価格が高く、他の入札者に勝てない…

またULA社ではアメリカ製エンジンを使う、
次世代ロケット“ヴァルカン”の開発を進めています。

でも、“ヴァルカン”の完成は早くても2019年で、
軍事衛星を打ち上げるための認証を得るには、さらに時間が必要だったりします。

なのでULA社では、
ロシア製エンジンの購入数制限を取り払う働き掛けをすることになります。

アメリカ議会に対して、
購入数の制限を取り払う法律を可決することを求めるのですが、
入札の期限までに認められず…
ULA社は、入札を辞退するしかなかったんですねー

この入札にはスペースX社も参加しているようですが状況は不明。

また、ULA社が辞退したことで競争入札にならなかったので、
仮にスペースX社が入札に参加していたとしても、そのまま受注できたかどうかは不明なんですね。

さて、アメリカ空軍の次世代GPS衛星の打ち上げは、どうなるのでしょうか?


こちらの記事もどうぞ ⇒ 双子の探査衛星打ち上げ成功! アトラスVロケット

天体を破壊する白色矮星を初観測! 少しずつ謎は解明へ

2015年11月21日 | 宇宙 space
大きさは地球ほどなのに、
質量が太陽ほどもある高温で高密度の星が白色矮星です。

そんな白色矮星が、近くにある天体を粉砕している様子が、
今回初めて観測されたんですねー

そして、まもなく破片は白色矮星に飲み込まれることに…

多くの研究者が、こういう現象が起こっていると考えていましたが、
今回ついに現場を押さえることが出来たというわけです。
初めて観測された、白色矮星が近くの天体を崩壊させている現場。
崩れていく天体は、今後100万年以内に白色矮星の表面に金属のチリだけを残して、
消滅すると考えられる。


白色矮星は偶然見つかった

地球から約570光年離れている“WD 1145+017”は、おとめ座の白色矮星です。

この白色矮星が、
奇妙なふるまいをしている証拠を最初に発見したのは、
系外惑星探査衛星“ケプラー”でした。

“ケプラー”は、
惑星が恒星の手前を通過(トランジット)する時に見られる、
わずかな減光をとらえます。

そして、このわずかな減光から惑星の存在を検出する、
トランジット法を用いて太陽系外惑星を探していました。

太陽のような星が年をとると、膨れ上がって赤色巨星になります。

その後、外層のガスが失われて出来るのが、
おそろしく高温で高密度の燃えさし、白色矮星です。

一方、“ケプラー”が探しているのは、生命が居住できるような太陽系外惑星。

そうした惑星は、
比較的若い主星の周りの穏やかな環境にあると考えられています。

なので、今回見つかった白色矮星は“ケプラー”の観測対象ではなく、
たまたま視野に入ったのが白色矮星“WD 1145+017”だったというわけです。

そして、“WD 1145+017”の前を何らかの天体が横切っていて、
トランジットが起きていることが分かるんですねー


奇妙なトランジット現象

でも、その天体の正体を明らかにするには、
地上にある数基の望遠鏡を使って、観測を行う必要がありました。

観測の結果、
問題の天体は白色矮星のまわりを猛スピードで公転していて、
1周するのに、わずか4.5~4.9時間しか掛かっていませんでした。

このことから、白色矮星からその天体までの距離が、
地球から月までの距離より、はるかに小さいことが分かります。

そして奇妙なことに、この天体は非常に小さかったんですねー

一般に、白色矮星は非常に小さいので、
ふつうの惑星が前を横切れば、ほとんど見えなくなってしまいます。

でも今回の観測では、白色矮星は最大で40%しか暗くなりませんでした。

奇妙なことは他にもあり、
ぐっと暗くなることもあれば、あまり暗くならないこともあるというバラつきや、
予想通りのタイミングで暗くならないということもありました。

トランジットを起こしているのが惑星なら、急激に明るくなるなずなんですが、
暗くなってから徐々に明るくなることもありました。


白色矮星の周りにあるチリの雲

天文学者が白色矮星の奇妙な性質に気付いていなかったら、
説明するのが困難な現象がありました。

実は10年ほど前から、
一部の白色矮星の大気中にマグネシウム、ケイ素、アルミニウムなど、
比較的重い元素が存在していることが分かり、科学者たちは首をかしげていました。

こうした元素は、比較的短期間で消滅するはず…
なのに消滅していないということは、比較的新しい時期に補充されたことを意味します。

もう一つの奇妙な事実は、
多くの白色矮星のまわりに、チリの雲が渦を巻いているように見えること…
おそらく、この雲が白色矮星の大気に重元素を補充していると思われます。


微小な天体が破壊されてできたチリの雲

私たちの太陽系にあるチリは、小惑星どうしの衝突によって生成されています。

でも今回の観測によると、
“WD 1145+017”のまわりのチリは小惑星どうしの衝突でなく、
惑星の破片や小惑星といった微小な天体が、
白色矮星の強力な重力場によって、破壊される過程で生成されているようでした。

こうした微小天体は、崩壊しながら長いチリの尾を引いています。

なので、白色矮星の前を横切って明るさを暗くしているのは、
微小天体そのものではなく、このチリの尾の方になるはずです。

微小天体から離れるにつれてチリの尾が薄くなり、光を通すようになる。
そう考えれば、白色矮星が暗くなってから徐々に明るくなることに説明がつきます。

チリの雲は生まれては消えてゆくから、
トランジットが起こったり起こらなかったりする謎も解けます。

さらに、岩石質の微小天体に豊富に含まれる重元素が、
白色矮星の大気に供給される仕組みも説明できることに…

今回の偶然で幸運な発見は、
将来的には、強力な観測技術として太陽系外惑星の研究に利用されるかもしれません。

そして、崩壊する惑星と金属に汚染された白色矮星を、
もっとよく調べることで、惑星の核に由来する物質と、
マントルに由来する物質を区別できるようになるかもしれません。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 海のある惑星の存在確率が高まる? 白色矮星に大量の“水”