宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

太陽系内で一番遠い天体を発見! 考えられていたよりも太陽系は大きいようです

2015年11月20日 | 宇宙 space
発見されたのは、冥王星より3倍も遠い距離にある謎の準惑星。
この準惑星は、太陽系内で最も遠い所にある天体と考えられているんですねー

太陽系近傍には、もっと多くの“浮遊惑星”が存在しているのかもしれません。
冥王星より3倍も遠い距離にある謎の準惑星“V774104”(イメージ図)


太陽系の外縁にある天体

発見されたのは準惑星“V774104”。
現在、太陽から154億キロの距離にあり、直径は500~1000キロと考えられています。

ただ現時点では軌道は不明なんですねー

一方、小惑星“セドナ”も、
発見当時には太陽から最も遠い軌道を回っている、
太陽系外縁天体として知られていました。

軌道は、
太陽に一番近づくときでも50天文単位より内側には入らず、
反対に一番遠いときには1000天文単位も太陽から遠ざかります。
(1天文単位は、太陽から地球までの距離で約1.5億キロ。)

こうした天体の軌道は、太陽系内でさらに遠くにある未知の天体や、
別の恒星の影響を受けているのかもしれないんですねー

“V774104”は、“セドナ”や小惑星“2012 VP113”と同様に、
“内オールト雲天体”という分類に属する天体なのかもしれません。
太陽系で最も遠い天体“V774104”。セドナやVP113よりも遠い位置にある。

これまでの太陽系最遠天体は、
2005年に発見された、太陽から約146億キロの距離にある準惑星エリスでした。

今回、ハワイの“すばる望遠鏡”を用いた観測で“V774104”が見つかったということは、
太陽系が、これまで考えられていたよりも大きいという、さらなる証拠になるんですねー
ハワイにある口径8メートルの“すばる望遠鏡”でとらえられた“V774104”。

ただ、“V774104”の軌道を突き止めて、天体の正確な大きさを決めるのには、
もう少し時間を要するそうです。

でも、この距離に位置していて見えるのですから、
“V774104”は大きい天体なんでしょうね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 冥王星の向こうに、もうひとつ惑星が存在するかも…

準惑星ケレスはどこで生まれた? 議論を呼ぶ探査機“ドーン”が発見したアンモニア

2015年11月19日 | 小惑星探査 ドーン
今年の3月から準惑星ケレスを周回している探査機“ドーン”による、
新たな観測結果が議論を呼んでいるんですねー

46億年前に生まれたケレスは、
ひょっとすると、より低温の太陽系外縁部から火星と木星の間にある小惑星帯へ、
飛ばされて、やって来たのかもしれません。
太陽に照らされる準惑星ケレスの北極周辺。
2015年4月14日と15日に探査機“ドーン”が撮影。


アンモニアを発見したこと

今回の観測で興味深いのは、
NASAの探査機“ドーン”が、ケレスの地表にアンモニア化した鉱物を発見したことでした。

アンモニア化した鉱物が存在するということは、
ケレスが生まれたのは、海王星の軌道よりもさらに外側だということを意味します。

それは、鉱物ができたときは太陽から遠すぎて、
アンモニアが蒸発したり分散したりしなかったと考えられるからです。

その後の5億年のどこかの時点で、
ケレスは重力の作用で太陽系の内側に飛ばされ、
火星と木星の間の小惑星帯までやって来たことになるんですねー

もちろん別の可能性もあるので、
  ・ケレスはずっと遠くで現在の形になり、小惑星帯に移動してきた。
  ・太陽系外縁部の物質をまとって、今の位置で形成された。
どちらとも言えない状態です。

ただケレスが、どこか別の場所から小惑星帯にやって来たという考えは、
突拍子もないというわけではありません。

そもそも、岩石でできた周辺の天体のいずれとも、ケレスは似ていません。

ケレスの形は球状で、大きさは小惑星帯では他を大きく引き離して最大、
水の含有量も一帯では突出しています。

むしろ、小惑星帯より外側にある木星や土星を周回する氷の衛星を、
暖めたような天体なんですねー
探査機“ドーン”からの画像を合成して作成されたケレスのクレーター“オッカートル”。
不思議な明るい点が集まっているが、その組成は未解明。

研究者たちは長年ケレスを観察してきました。

でも、地上の望遠鏡では地球の大気が障害になり、
確信をもってアンモニアを特定できず…

なので、ケレスを周回する探査機“ドーン”は、観測には理想的な位置にあり、
地表にある分子が、さまざまな波長の光をどう反射するかを調べることが出来ます。

この波長の中に、
他の物質に交じってアンモニア化層状珪酸塩の痕跡を見つけ出したんですねー
地球上の土に似た鉱物です。

アンモニアのような揮発性の分子が現在のケレスの位置にあれば、
単独では温度が高すぎて蒸発してしまいます。

なので、このアンモニアは小惑星帯よりもずっと低温のどこかで、
鉱物と合わさった可能性が非常に高いんですねー

ケレスは、はるか遠くから現在の位置まで飛んできたか、
太陽系外縁に由来するアンモニアを含む物質が表面に降り注いだかの、
どちらかということになりますね。


極寒のなかで形成された

この2つのシナリオの中では、
ケレスは極寒のなかで形成されたという推測が妥当なようです。

低温のため固体状のアンモニアの小石が、
セレスを覆うほど降り注いだという推測は、つじつまが合わない部分があります。

もし、そうだとすると小惑星帯の天体が、
いずれもアンモニアに覆われているはずです。

でも、そのような観測結果は出ていないんですねー

ただ、実際に起こったのが、
どちらのシナリオなのかを判断するのは簡単ではありません。

ケレスにあるクレーターの大きさと数の独特な分布は、いわば指紋のようなものなので、
どちらが正しいにしても、シナリオとの整合性が取れなければいけません。

原則的には、ケレスのクレーターを分析し、
どちらの予測が適切か突き止めればいいわけです。

やっかいなのは、ケレス全体のクレーターの分布。
なかでも大きなクレーターが無いという点は、
どちらのシナリオとも合わないことです。

さらに根本的な問題も…

ケレスの地表から得られた光の波長が、
小惑星帯で簡単に形成されるマグネシウム鉱物“ブルーサイト”
だとする研究者もいます。

なので、アンモニアの特定事態が誤りという可能性もあるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 準惑星ケレスの地図が公開。光点のあるクレーターは“オッカートル”

冥王星に氷の火山を発見! 最近まで活動していたそうですよ

2015年11月17日 | 冥王星の探査
早いもので、探査機“ニューホライズンズ”の冥王星フライバイから4か月が過ぎました。

当時観測されたデータは、
現在、“ニューホライズンズ”から次々に送られてきています。

そのデータからは、巨大な氷の火山と思われる地形が見つかったり、
小さい衛星の奇妙な振る舞いが明らかになっているんですねー


氷の火山は最近まで活動していた

“ニューホライズンズ”による冥王星の観測データから、
冥王星の2か所で、火山のように盛り上がった地形が見つかりました。

この氷の火山が見つかったのは、
“スプートニク平原(非公式名)”と名づけられた地域の南側で、
直径は数十キロ、高さは5キロ前後。

火山と言っても、火を噴いているわけではなく、
火口からは水の氷や窒素、アンモニア、メタンなどの混合物が噴出した「氷の火山」なんですねー

どちらも、おそらく地質学的な意味で、最近まで活動していたと考えられています。
氷の火山と思われる山の1つ“ライト山(非公式名)”

氷の火山というのは、まだ仮説に過ぎないのですが、
もし本当にそうなら、頂上にあるくぼみは地下から噴出した物質が崩れてできたもののはずです。

一風変わった山の側面にある輪状地形は、ある種の火山流によるものかもしれません。
でも、なぜ輪状なのか、一体どんな物質で構成されているのかは不明なんですね。
氷の火山と思われる山の立体画像(名称は非公式名)


40億年以上も地質学的に活発だった

驚くべき発見は他にもありました。

それは、冥王星の地質学的な年代が、
古いものから中期、比較的若いものと広範囲に及んでいること。

天体の表面の年代決定に用いられるクレーター計数から、
冥王星には約40億年前という、太陽系の惑星形成直後にまでさかのぼる、
古い表面の存在が示されています。

その一方で、全くクレーターの見られない広大な領域“スプートニク平原”は、
過去1000万年以内に形成されたと考えられています。
1000個以上のクレーター(黄色)の位置を示した図。
両サイドの赤紫色っぽい領域は地図未作成領域

さらに、最新のクレーター計数データによって、
冥王星上に中期に当たる年代の地形も発見されることに…

このことは、冥王星は40億年以上の長い歴史を通じて、
地質学的に活発だったということを意味しているんですねー


疑問はカイパーベルト天体の形成

クレーター計数は、
カイパーベルト天体の成り立ちにも影響を与えることになります。

太陽系の外縁部で無数の天体が密集するカイパーベルトにあるのが冥王星です。

そして、この冥王星と衛星カロンには小さなクレーターが少なすぎるので、
カイパーベルトには、予測よりも小さな天体が少ないということになります。

でも、そうすると
「幅1キロ程度の小天体が集まってカイパーベルト天体が形成された」
とする、長年のモデルに疑問が生じることになるんですねー

そして、幅数十キロのカイパーベルト天体は直接形成された、
というモデルが支持されることになります。

多くのカイパーベルト天体が、現在の大きさで誕生したのかもしれないというのは、
研究者にとって実にエキサイティングことになります。

“ニューホライズンズ”の次のターゲットになる、
幅40~50キロのカイパーベルト天体“2014 MU69”の探査によって、
ひょっとすると太陽系を形成する元になった原初の天体の姿が、
初めて見えるくるのかもしれませんね。


冥王星の4衛星

“ニューホライズンズ”のミッションは、
魅力的な冥王星の衛星と、その変わった特徴にも光を当てています。

たとえば、月を含め太陽系のほぼすべての衛星は、
自転と公転が同期しています。

でも、カロンを除いた冥王星の4つの小衛星は、
自転の方がはるかに速いことが分かったんですねー

最も外側の衛星ヒドラは、冥王星の周りを1回公転する間に89回も自転していました。
ひょっとすると、カロンの影響で小衛星の自転速度が変化したのかもしれません。

さらに、4衛星のうちいくつかが、2つ以上の天体の合体から生まれたことも、
データから示されました。

このことにより冥王星は、過去にもっと多くの衛星を従えていたことが考えられ、
大きな衝突の結果、カロンが作られたのかもしれません。


冥王星の大気

“ニューホライズンズ”による新しいデータからは、
冥王星の上層大気が著しく冷たくコンパクトで、
大気が宇宙空間へ逃げ出す割合は、これまでの説より3桁以上も低いことも分かりました

冥王星からの大気散逸プロセスは、彗星に似ていると考えられてきましたが、
どうやら、地球や火星で起こっているメカニズムと同じようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 巨大な割れ目と氷火山活動… 衛星カロンには激動の歴史があった。

銀河から引きはがされ長くたなびくX線の尾? 引きはがしていたのは銀河団中心の高温プラズマ

2015年11月16日 | 宇宙 space
X線天文衛星“チャンドラ”による観測で、
銀河団に属する銀河から引きはがされたX線で輝く尾のようなものが見つかりました。

尾の長さは約25万光年もあり、
X線の尾としては、これまでに検出されたものの中で最も長いそうです。


これまでで最も長い尾

今回の研究では、ボン大学の研究者がNASAのX線天文衛星“チャンドラ”を用いて、
ヘラクレス座方向の銀河団“Zwicky 8338”を観測しています。

すると、銀河団の中心から100万光年ほどの距離にある、
銀河団内の銀河“CGCG254-021”のあたりに、
約24万8000光年もの長さにわたって伸びる、X線で輝く尾が見つかります。
銀河団“Zwicky 8338”のX線画像。
長方形内が頭部分、正方形で囲まれた部分が尾になる。

尾を作っているガスが失われたと考えられる時期は、
宇宙のタイムスケールで言うと、ごく最近のこと。

銀河から引きはがされたX線の尾としては、
これまでに見つかった中では、最も長いものになるそうです。

さらに、まるで彗星のように「頭」と「尾」のような、はっきりとした特徴があることや、
頭は尾よりも温度が低いことも分かります。

彗星に似た形の銀河で起こったガスの引きはがしには、
どうやら、銀河団の中心に存在する高温プラズマが重要な役割を果たしているようです。

研究者たちは、このプラズマと銀河が相互に作用することで、
明るいX線と長い尾が作られていると考えています。

銀河から引きはがされたガスの量は非常に多く、
ほとんどが銀河から失われたと見られているんですねー


こちらの記事もどうぞ ⇒ はぎ取られたガスの中で生れた超巨星

新タイプのブラックホール発見などなど… JAXAが天文衛星“すざく”の科学的成果をとりまとめ

2015年11月15日 | 宇宙 space
日本で5番目のX線天文衛星

X線天文衛星“すざく”の科学的成果をJAXAがまとめたんですねー

“すざく”は、宇宙の高温プラズマの高精細な分光観測と、
高感度・広帯域の測光・分光観測によりブラックホール周辺の物質運動、
銀河団の形成・進化の問題に、新しい光を当てるために開発されたX線天文衛星です。

2001年に旧宇宙研が第23号科学衛星(ASTRO-E11)の開発に着手。
2005年7月10日にM-Vロケット6号機で打ち上げに成功し、“すざく”と命名されています。
X線天文衛星“すざく(ASTRO-E11)”

日本で5番目のX線天文衛星で、日米の国際協力により製作が進められた“すざく”。

観測天体は、世界中から募った観測提案の中から審査によって選ばれるという、
国際天文台として機能してきたんですねー

“すざく”は、目標寿命の2年を大幅に超える10年にわたって観測を続けてきました。

国際天文台として世界中の研究者に観測の門戸を開き、
2014年12月末までに、査読付き論文762件、学位論文227件を発表するなど、
多くの成果創出に貢献してきています。


世界最高レベルの感度で多くの発見へ

広い波長域にわたって世界最高レベルの感度を達成するなど、
高い観測能力を実証した“すざく”。

銀河団の合体などによる宇宙の構造形成、
ブラックホール直近領域の探査(エネルギー解放や時空構造の解明)などについて、
成果を挙げてきました。

具体的に挙げると、

ペルセウス座銀河団をX線で観測し、
外から落ち込んでくるガスが塊をなして銀河団に落下し、
理論予測の通りの位置で銀河団ガスとの衝突が起きていること、
高温ガスに占める鉄の割合が銀河団の外縁部まで、
どこでも一定であることを発見。
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した、
ペルセウス銀河団中中心に位置している銀河“NGC 1275”

可視光で見ると、一見普通の渦巻き銀河に見える“ESO 005-G004”、“ESO 297-G018”をX線で観測。
その中心に、極めて厚いガスに埋もれたまったく新しいタイプの活動銀河核(ブラックホール)が、
存在することを発見。
“ESO 005-G004”の中心核にある巨大ブラックホール周囲(イメージ図)
まわりを囲む物質は「ドーナツ」よりも「殻」に近く、
ほとんどの光がさえぎられている。

“はくちょう座X-1”のブラックホールに伴星からガスが落ち込む際、
そのガスが最後の100分の1秒程度の間に10億度以上にまで急激に加熱され、
高エネルギーX線を出すことを発見。
ブラックホール連星系(イメージ図)
左側の伴星(恒星)から、右側のブラックホールに物質が吸い込まれている。
ブラックホール周辺に円盤状にたまった物質が、X線で明るく輝いている。

などなど、多くの発見に貢献しているんですねー


10年の科学観測を終了

一方、衛星搭載バッテリの劣化が進み、
観測継続のためにバッテリの使用方法を工夫しながら科学観測を続けていました。

でも、今年の6月1日以降、
衛星の動作状況を知らせる通信が間欠的にしか確立できない状態が続き、
JAXAでは復旧運用を行っていたんですねー

この問題の原因は、
バッテリーの劣化か故障による電力不足だと推測されていて、
電源が失われた“すざく”は姿勢制御ができず、
およそ3分間に1回の周期で無制御にスピンをすることに…

そのため、スピン中で衛星の太陽電池パドルに、
太陽の日が当たっている時間だけ衛星の電源が入り、
日が当たらなくなると、ただちに衛星の電源が切れる、
という状況に陥っているんですねー

その後、JAXAでは科学観測を終了することに決定。

通信やバッテリー、姿勢制御の状況から、
科学観測を再開することが困難な状態だと判断したそうです。

現在は、運用終了に向けて作業中で、
JAXAのスペースデブリ発生防止標準に基づき、搭載の推進系燃料は排出済み。

また、ハッテリ切り離し運用も完了し、送信電波も停波する予定です。

“すざく”は地球を回り続けたのち、
2020年代前半には大気圏に再突入し、燃え尽きる見込みになっています。


こちらの記事もどうぞ ⇒ X線天文衛星“すざく”が10年の科学観測を終了。目標寿命は2年だった…