akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

美しき倉敷の

2005-11-06 | 活弁
町と瀬戸内の風景を堪能して帰りました。

今回の公演の旅は、倉敷市児島の矢吹ご夫妻を始めとするたくさんの方々の力によって実現しました。児島での活弁上映会は、数十年ぶりだと思います。戦前に体験した数人以外は、年輩の方々も初めての体験だったはず。上演後、いろんな方が声をかけて下さり、嬉しそうにお話して下さいました。
大正生まれのおばあちゃんは、ちょうど「生れてはみたけれど」の作品中の子役たちと同じくらいの世代。映像の風景の懐かしさだけでなく、活弁上映の昔の思い出が蘇ったようで
「子どもの頃、学校の体育館で、何度か無声映画を観たんじゃよ。毎回、学校の男の先生が説明してくれるんじゃ。楽しかったんじゃよ。活弁、いうとその先生の口調が思い出されてなあ。佐々木さんいう活動弁士が来る、いうから、男の人だと思うとったんじゃが。びっくりしたわい。いやあ、でも本当に楽しかった。いいもん見せてもろうたなあ」

水先案内人として乗ったピースボートでのご縁で実現した公演ですが、そのクルーズの時のパッセンジャーや、ワークショップ参加の方々も、東京や名古屋、広島、福山などから駆け付けて下さり、とてもにぎやかで楽しい旅となりました。感謝、感激です。

下津井の港、瀬戸大橋、鷲羽山、王子が岳、大原美術館、アイビースクエア、染体験、いがらしゆみこ美術館等々、昨日は晴天、今日は雨、どちらの表情も素敵でした。

倉敷美観地区は本当に美しいところ。
倉敷川のほとりの路上に、晴れた日のみ、お店を広げているアクセサリー屋さんがたくさんおります。ふと足を止め、私がそこで買ったアクセサリー二つ(写真)。

これは、壊れてしまった古い時計の部品を分解し、組み合わせて作られています。
左が、明治時代の懐中時計をカットしたもの。真鍮も使われています。
右は、柱時計の歯車の一つ(後ろにAs Time Goes Byと彫られています)に、小さな腕時計の文字盤と、懐中時計の部品(古いものなので、本物のルビーが使われています)をつけたもの。
二つ並べると、月と太陽みたいでしょ。
「時」を刻む道具が、その寿命を終えて、また別の「時」を伝え始める。
見ているだけで、かなりロマンを感じます。映写機の部品のミニチュアにも見えたりして。

時計を分解しては丁寧にアクセサリーにしているおじさんは、とても優しい目をしていて
商売っけもなく、とにかく時計の部品を愛おしそうに作業しておりました。
「これは1930年代のスイスの時計、これは…」と頬を紅潮させ訥々と説明してくれ、どの作品もとても興味深く素敵だったので、思わず話し込んでしまいました。

そして選んだ二つですが、聞けば、そのおじさん、映写機を回したり、分解したり(修理を頼まれて)、同時録音の頃の録音機を分解したこともあるそうで。
しかも。
「うちのおじいちゃんは、無声映画のバイオリン弾きだったんですよ」
活動写真の楽士である!
「倉敷の大きい映画館では何人もの楽団で弾いて、田舎の小さな劇場ではバイオリン一人で演奏したと言ってました」
児島の地域だけでも十を超える映画館があったというから、倉敷はもっと盛んだっただろう。
「トーキーの時代になって、失業したそうですけどね。祖父は30年前に亡くなりましたが、当時使っていた鈴木製のバイオリンが、今でも家にありますよ」
そのうちに、笑顔のおじさんはお客さんに囲まれて、私たちはそこを後にしました。

地方公演の楽しさは、その土地に生きてきた方々のお話を聞けること、土地の空気、文化に触れられること。これは何にも変えがたい喜びです。
楽しく、感動をたくさんいただいた旅でした。

たくさんの出会いと学びを下さった矢吹御夫妻に感謝。



コメント (3)
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