akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

ふるさとの

2008-01-02 | FAMILY
父の誕生日。みんなでお祝い。

午前中はNHK時代に取材をした酒田市内の車椅子の御夫妻を見舞い、午後から友人たちと会う。
幼馴染みと高校同期の友人から、結婚の報告が。相性よさそうと引き合わせたのが一年ちょっと前のこと。大好きな友人たちの結婚、なんて嬉しいことだろう。

夕方、地元で農業をやっている幼馴染みと合流。地元農家の厳しい現状を聴く。

ひと昔前までは「作り手は作り手、売り手がいて買い手がいて、米農家は作っていればいい」という意識が強かった。だが、もうそんな時代じゃない。それで満足な生活ができるならいいが、いくらいい米を作ろうと思っても米は安く叩かれ、値崩れを起こし、どんな米を作ってもこれだけにしかならないと作り手は意欲を失っていく。赤字が膨らむばかりなのに、旧体制の組織の中でやっていかなければならないことには、大きな不安がのしかかる。

「安全でおいしい米を作りたい。それを消費者に届けたい」という作り手としての熱い思い。
「この地域の農業全体をなんとかしなければ」という、地域の組織の中で、若手として周りから託された期待や責任の重さ。
二つの想いが同時に成り立たない現実に苦しむ。

なんとかしなくてはと思っても、地域の農業全体を変えるには、体制や意識を変えなくてはならない。地域組織の旧体制が変わらないのは、その上の農協組織が変わらないからで、農協が変わらないのは国の体制が変わらないからで…。皆苦しくて、これでは成り立たないと思っているのに、体制を変えていくだけの労力、気力、術、時間はない。
小さな組織の中では、自分が、異端になるわけにはいかない。大きな組織の中では、自分の属する組織が、異端になるわけにはいかない。まず、その意識を変えることが難しい。

作り手が売り手に「こうしてほしい」と思うことを言えないで、一生懸命作ったものは「とにかく大量にひきとってもらわなきゃ」と二足三文で捌かれて、一方では、そうやって叩いて叩いて買い集めた米にくず米までまぜて「高級ブランド米」として偽って売る業者がいる。腹が立つ。

米の流通制度が変わって作り手が直接販売できるようになってから、地域の中にあって、組織を抜けてやっている農家もいる。「異端」の風を受けながら、一人でこだわりの栽培をし、顧客を開拓し…、青色申告でサラリーマン並みの収入を申告したのは地域の農家でその家だけだった。

父が庄内経済連で自主流通米の販売担当だった頃はよかった。父は毎晩遅かった。接待に意見交換、クレーム対応。全国に出張で飛び回り、ほとんど家にいなかった月もある。
ブランド米が「新潟米コシヒカリ」「宮城米ササニシキ」そして「庄内米ササニシキ」だった頃。庄内米の売り上げも一番良かった時期で、父は「一番いい時代に担当させてもらった」と振り返る。自分の仕事の話はあまりしなかったが、「庄内米はいい米だ」という話はしょっちゅうだった。銀座の有名なお鮨屋さんも庄内米ササニシキを使ってくれていた。「握る時には粘り気があって握りやすく、口に入れるとはらりとほどけるような触感。一番いいシャリ」だったらしい。
水が良く、稲作に適した気候。農家の方々が作ってくれるこの土地の米への信頼感。どこに行っても自信を持ってオススメして、最後は「自分を信頼して下さい」。売り手と買い手の信頼感である。

その頃から20年。時代も変わり、庄内米の主要銘柄も変わり、米全体の消費量も落ち、制度も変わり、環境も変わりつつある。

でも、作る方も売る方も自信と誇りを持っていなければ、売れない。作り手と売り手と買い手の信頼関係も大事な要素。個人でも、組織でも、それは変わらない。

作るからには、「おいしいね」とか「もっと買いたいね」「もっと売りたいね」と喜ばれるものを作って、自分自身も豊かになりたいはず。私も、「おいしい庄内米」が多くの人に喜ばれてたくさん出回る日を夢観ている。

夜、夕食後、父の誕生日祝いを兼ね、久しぶりに家族皆でカラオケに行った。父はまず裕次郎。それとご当地ソング。父のレパートリーに北海道を舞台にした歌が多いのは、北海道への営業の機会が多かったからだと初めて知った。20年前は北海道の米の品質はまだまだだったから、庄内米が重宝されていたのだ。「ご当地ソングはどごでも喜ばれっし、盛り上がっがらの~」そりゃそうだ。

それで。父上の歌。声もいいし、音程もバッチリ、なのだが…。出だしは一緒なのに、いつのまにか、カラオケ伴奏と輪唱になっている!しかも、1番も2番も3番も、同じリズムで早くなる。あんなに大きくメロディ伴奏が流れているのに、本人はアカペラで歌っているつもりなのか。困るんだよねえ、これ。手拍子をどっちに合わせるべきか。
コメント
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