akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

戦後記録映画選集ー「日本の象徴」

2008-05-29 | 映画・芸術・エンターテインメント
フィルムセンターの、特集「発掘された映画たち2008」。「戦後記録映画選集」を観た。短編記録映画が5つ。
現在のフィルムセンターの場所に1952年開館した当初の「国立近代美術館 記録第1集」、デンマーク体操をするブルマーの女学生たちの姿がひたすら映されている「美の誕生」、1949年に横浜で開催された日本貿易博覧会の記録「貿易まつり」、戦後日本における人間天皇の魅力を紹介した「日本の象徴」、戦争末期に呉沖で沈没し戦後海底から引き上げられた戦標船の輸送タンカーへの修復作業を記録した「さばん丸完成」。

お目当ては「日本の象徴」(1950)。徳川夢声がナレーションを担当している。内容もこれが一番面白かった。終戦から5年。昭和天皇の国民への労いと励ましの全国行脚は、どこでも熱狂的な歓迎を受けた。どんな民に対しても驕ることなく、傍へ寄り、丁寧に同じ人間として声をかける。その姿勢と表情に天皇の人間性が出ていた。多くの国民が彼を現人神として崇め戦に散ったことを思えば責任がないとは決して言えないが、彼自身どれだけ戦争に心を痛めたことか。そう思わせる人物だったからこそ、戦後も天皇は国民に象徴として慕われ続けたんだろう。作品後半は、昭和天皇の「有能な学者としての顔」を紹介。海辺で生物を採取し調査する天皇の生き生きした姿が映し出される。すでにその当時で彼の発見した生物は200余に上っていたとか。映画『太陽』を思い出しながら興味深く観た。

徳川夢声さんのナレーションは、他の作品のナレーションとは明らかに違う。声、調子。言葉と文章(おそらくナレーション原稿も夢声さんの手が入っている)、間、緩急。現代のテレビのナレーションで、読点で1秒や2秒「ス」になったら、「つっかえたからもう一度」録り直しである。そのくらいの間が、彼の場合、観客をひきつける絶妙な語りの一翼をになっている。しゃべるところはしゃべる。ぐいっと引き込む。引き込んだら、しゃべらずに見せるところは見せる。夢声さんの語りにまた学びつつ、精進せねばと思うのでした。

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