akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

岡山映画祭『豪傑児雷也』活弁

2007-11-05 | 活弁
3日開幕の岡山映画祭2007。オープニング企画は「松田完一 メモリアル」。
昨年12月に火災で亡くなった岡山の映画人松田完一氏の追悼を兼ね、コレクターであった氏の寄贈フィルムを里帰り上映。生前の彼のインタビューを編集した作品も上映されました。
この度は、岡山出身の日本初の活動写真大スター「目玉のまっちゃん」こと尾上松之助主演『豪傑児雷也』に地元の活動弁士が口演するという目玉が!その弁士のお二人矢吹勝利むつみ夫妻が私の活弁ワークショップ出身ということで、僭越ながら公演を見守りに伺ったのですが、これが大成功を納め、本当に嬉しく思っているところです。

岡山映画祭から彼らに、「地元の活動弁士として、地元出身のスターの映画に活弁をつけてほしい」という話があったのが夏前のこと。矢吹夫妻は2年前から私の倉敷市児島での公演を実現して下さっていて、私は昨年の夏フィルムセンターでこの『豪傑児雷也』の活弁をやった時から、「目玉のまっちゃんの故郷岡山で、彼らにやってもらう機会などがあったらさぞ盛り上がるだろう」と思っていたので、即座にやるように勧めました。様々な役割を抱え忙しくしていた二人は躊躇していましたが、7月に北とぴあで行った活弁ワークショップ公演で、以前共に活弁をやった仲間たちが堂々とステージに立ち場内を湧かせている様子を観て奮起(本人談笑)。それから数カ月、自分達で台本を作り、練り直し、かけあい活弁の練習を重ねてきました。
台本も、かけあいも少しばかりのアドバイスはしましたが、お二人が練って稽古を重ねたものです。知識も経験も豊富、度胸もサービス精神も人一倍の方々なので、本番は大丈夫だろうと思っていましたが…
まず行きの新幹線でハプニングの一報。
「事前に渡されて練習していたビデオテープの速度と、リハーサルしたフィルムの速度が違う!速くて全然セリフが入りきらないし、一ケ所映像が違うところもあって」という。私もそういう経験は何度となくいたしましたが、彼らにとっては初舞台。二人でだいぶ台本を削って、あとはアドリブ、と彼らも逆に開き直り、私もざっと目だけ通して「とにかく楽しんで語って下さい!」と本番に送り出し。

さて本番は、大成功でした。台本も豊かな知識に裏付けされたもので、とてもわかりやすく、そこに岡山の地名や岡山弁も盛り込み、随所に笑いが起こります。息もぴったり、チャンバラシーンのドタバタのコメントは、まるで夫婦げんか?登場人物の声の語り分けや掛け合い、先日観た時にアドバイスした点もクリアされていて、のびのびと語って下さいました。これも、何度も何度も観ていて映像が頭にしっかり入っていたからでしょう。もちろん、彼らがノって語れたのは、柳下美恵さんの生演奏のおかげでもあります。終わって、拍手喝采。
師匠と紹介されかなり面映い思いをしつつ、お二人の初舞台の成功と会場の空気を一緒に体験でき、お客さまも皆さん笑顔で、本当に嬉しいことでした。

松田完一さんの寄贈フィルム『街の子』『孝女白菊』を柳下さんの生演奏で、そして『松田完一 映画の記録2』も、会場で拝見させていただきました。
松田さんの著書「岡山の映画」(岡山文庫)には、無声映画時代からの岡山市周辺の映画の歴史が、ご自身の映画遍歴と共に詳細に記されています。(明治大正時代の各映画館にいた弁士の名前も、洋画、現代劇、時代劇に分け細かくあげています)小学校時代から映画館に入り浸り、生涯映画を愛し続けた方でした。彼はインタビューにも、無声映画の魅力を「1に弁士、2に音楽、3に映像」だと言っています。様々な弁士の語りに魅了された活動の世界を懐かしげに語るスクリーンの松田さんはとても穏やかな顔をしていました。松田さんの貴重な記録映像をこうして残して下さった岡山映画祭の皆様にも敬意を表します。

岡山映画祭は来月上旬まで。映画祭の成功と発展を心より祈念いたします。この度は誠にありがとうございました。
矢吹勝利、むつみ夫妻の活弁奮闘記は、NHK岡山放送局の夕方のニュース番組(18:10~)で、7日にリポートされる予定です。リポーター中川歩さんにも御礼申し上げます。

コメント (2)
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