井上もやしの日常

ほぼ「つぶやきの墓場」となっております。ブログやSNSが多様化して,ついていけないのでございます。

映画「奇跡」 ~人生はかるかんの味~

2011-06-16 00:18:17 | Weblog
 6月30日まで有効の福島フォーラム招待券(←入場するときにスタンプを1つ押され、3つ貯まると無料招待券がもらえます。)を使うために、鑑賞です。

 最初の感想は、「子ども漫才師・まえだまえだ、恐るべし」。表情が生き生きしていて、動きも実に自然で驚きました。脇を固めるベテラン勢と比べても遜色ありません。

 そして、タイトルは「奇跡」であっても、人生っていうものは奇跡は簡単には起きないけれども、かるかんの味みたいにほんのり甘くて捨てたものでないということ。

 かつて大阪に住んでいた小学生の兄弟・航一と龍之介は、両親の離婚で鹿児島と福岡に別れて暮らしています。新しい環境にすぐに溶け込んだ弟・龍之介と違って、鹿児島に移り住んだ兄・航一は今ひとつ現実を受け入れられず(桜島の火山灰を始めとして…)、フラストレーションを日々溜めていました。ある日、航一は新しく開通する九州新幹線「つばめ」と「さくら」の一番列車がすれ違う瞬間を見ると奇跡が起こるという噂を聞きます。それで、もう一度、家族で暮したい航一は弟と友達を誘い奇跡を起こす計画を立て、列車がすれ違うであろう熊本県内のある地点へと向かいます…というストーリーです。

 映画のタイトルは「奇跡」でも、「つばめ」と「さくら」がすれ違ったところで何も起こりません。是枝監督の前作「空気人形」に描かれたダッチワイフが心を持つような奇跡は全く起こりません。今までの人生が続いていくだけです。新幹線がすれ違う場面に向けて子どもたちが心理的にじわじわと盛り上がっていきますが、実際には奇跡が起こらないので(肩すかしっぽいと感じる人がいるかも知れません。)、筋の起伏がはっきりとした作品とは言えません。でも、日常の細かなところが描かれているのはよく分かります。携帯電話で連絡を取り合う兄弟、かるかんの材料である山芋を円くすり下ろす祖父と孫、気配りがあるのだかないのだか分からない航一の担任教師と養護教諭などなど。

 この21世紀に、小学生7人が居場所を親にもはっきりと告げずに1泊旅行しても警察沙汰にならないのが最大の奇跡でしょう(苦笑)。

 ☆ 総合得点 81点