井上もやしの日常

ほぼ「つぶやきの墓場」となっております。ブログやSNSが多様化して,ついていけないのでございます。

魔法の紙があっても

2011-06-27 23:54:28 | Weblog
 東日本大震災に関して、福島市は被災証明書は発行せず、罹災証明書の発行のみです。それで、一部損壊の我が家では到底もらえないものと思っていました。被災証明書というのは、停電になったとか、断水したとか、交通が遮断したとか、被災者の状況に応じて自治体の基準で発行されます。一方の罹災証明書は居住する家屋について内閣府の基準に基づいて発行されます。だから、申請もなかなか大変だし、市の職員が現場の損害調査に来る順番をひたすら待たなければならないと考えていました。

 ところが、近所の人や親戚がひび割れた壁や落ちた屋根瓦の写真を持参して申請すると割と簡単に証明書がもらえることが分かりました。岩手県盛岡市周辺の市町村が停電を理由に被災証明を発行したのもこれに拍車を掛けているのかも知れません。

 私は仕事があり、明るい時間帯に福島市の支所へ出向くことができないので、22日に母親に行ってもらいました。罹災証明願を記入し、被害のあった10数箇所の写真を持っていってもらいましたが、一番上にある写真をちらっと見ただけで、すぐに市長印を押して証明書を返してくれたそうです。本人が行ったわけでもないのに、あっけない証明でした。

 という訳で、6月25・26日は新潟市に住む二男のところへ行ってきました。その前の週に高速千円が終わったのにがっかりしていましたが、高速道路被災者無料が始まってほっとしました。正確には覚えていませんが、1週間ほど前の朝日新聞「声」に「災害の中でも秩序があった東北の人たちなのに、停電程度で被災証明書を競って貰うのにはがっかりだ。」という内容の首都圏からの投稿がありました。はっきり言って、大きなお世話です。停電があった地域なら、かなりの確率で断水や各種物不足(ガソリンや食料品など)が連日続いていたことでしょう。それに毎日続く余震や放射線の恐怖を感じていたはずです。安全圏にいる人間が、「たったの停電だけで…」と言うのは傲慢の極みです。

 この魔法の紙のおかげで、福島市から新潟市までの往復高速料金約9千円がチャラです。これは初めての経験です。この浮いた高速代で、外食をしよう、服を買おう、本を買おうという気になるのですから、世の中の経済が回る一つの原動力になっていると思います。実際、我が家も無料になった高速代以上に買い物をしました。自粛、自粛でここまで来た被災者にとって福音です。

 でも、予想通り、高速道路は混みました。特に帰り道の高速インターは改善の余地ありです。26日午後8時頃に福島飯坂インターで降りようとしていたら、インターの2キロメートル以上手前から路肩に並んでいる車の列がありました。最初は「あれ、これは何かな?」と思いました。よくよく考えてみれば、飯坂インターで降りようとしている車の列でした。しかし、考えているうちに私の車は進んでしまい、列の最後尾では止まれませんでした。仕方なく次のインターである国見インターへ進みました。ここでは20分くらい並んで料金所の係の方に罹災証明書と自動車免許証を提示し、高速道から出ることができました。

 被災者の小型乗用車だけでなく、貨物トラック(中型以上)やバスも無料なので半端なく混んでいます。それぞれが時間差を付けて、通行する時間帯が集中しないように考えるしかありません。高速千円もそうでしたが、安いところに庶民が集まるという極めて真っ当な結果です。

最後の高速道路千円

2011-06-21 00:03:08 | Weblog
 震災復興の財源確保のために、2年間強続いた土日祝日の高速道路千円が6月19日で終了となりました。

 それで、この週末は思い切って長男が学生生活を送っている盛岡市周辺へ妻と母と出掛けました。4年ぶりの盛岡行きです! 長男がアパートを借りるときにお世話になったAさんや大学の研究室でお世話になったOさんにお会いしたり、余り混雑しないであろう観光地を訪れたりしました。渋滞にはまって動けないのが心配だったので、八幡平山頂レストハウス、焼走り溶岩流、焼肉のぴょんぴょん舎、福田パン、あさ開直売所、平泉中尊寺(←ここはメジャー級ですね!)、牛の博物館などを見学しました。

 画像は福田パンの店内。TFMラジオドラマ「あ、安部礼司」に登場する刈谷勇さんの妻イズミさんが盛岡市出身の設定で、ドラマの中で福田パンの話題が以前出ていたので、寄ってみたいと思っていました。長男も「ああ、そこって有名!」と言っていました。菓子パンの種類が沢山あるのかなと考えていましたが、そうではなく、店内でコッペパンにお好みのジャムや具をはさんでくれるサービスが行われていました。パンの中に入れてもらえるものは40種類ほどのようです。駐車場にはひっきりなしに県外ナンバーがやって来ました。福島市で言えば、たけだパンや光月堂みたいな歴史あるパン屋さんでした。

 6月20日以降、高速千円はなくなりましたが、罹災証明書や被災証明書があれば東北地方の高速道路プラス常磐道・磐越道の一部が無料で使えるようです。当初、家屋半壊以上の被害がないともらえないという認識でしたが、無条件で被災証明書を発行したり、停電を理由に被災証明書を発行したりする自治体が出てきているので、発行条件のハードルはかなり低くなったです。今週中に我が家の亀裂の走った壁や割れたコンクリート基礎部分の写真を持参して、一部損壊として市役所に申請してみます。

映画「奇跡」 ~人生はかるかんの味~

2011-06-16 00:18:17 | Weblog
 6月30日まで有効の福島フォーラム招待券(←入場するときにスタンプを1つ押され、3つ貯まると無料招待券がもらえます。)を使うために、鑑賞です。

 最初の感想は、「子ども漫才師・まえだまえだ、恐るべし」。表情が生き生きしていて、動きも実に自然で驚きました。脇を固めるベテラン勢と比べても遜色ありません。

 そして、タイトルは「奇跡」であっても、人生っていうものは奇跡は簡単には起きないけれども、かるかんの味みたいにほんのり甘くて捨てたものでないということ。

 かつて大阪に住んでいた小学生の兄弟・航一と龍之介は、両親の離婚で鹿児島と福岡に別れて暮らしています。新しい環境にすぐに溶け込んだ弟・龍之介と違って、鹿児島に移り住んだ兄・航一は今ひとつ現実を受け入れられず(桜島の火山灰を始めとして…)、フラストレーションを日々溜めていました。ある日、航一は新しく開通する九州新幹線「つばめ」と「さくら」の一番列車がすれ違う瞬間を見ると奇跡が起こるという噂を聞きます。それで、もう一度、家族で暮したい航一は弟と友達を誘い奇跡を起こす計画を立て、列車がすれ違うであろう熊本県内のある地点へと向かいます…というストーリーです。

 映画のタイトルは「奇跡」でも、「つばめ」と「さくら」がすれ違ったところで何も起こりません。是枝監督の前作「空気人形」に描かれたダッチワイフが心を持つような奇跡は全く起こりません。今までの人生が続いていくだけです。新幹線がすれ違う場面に向けて子どもたちが心理的にじわじわと盛り上がっていきますが、実際には奇跡が起こらないので(肩すかしっぽいと感じる人がいるかも知れません。)、筋の起伏がはっきりとした作品とは言えません。でも、日常の細かなところが描かれているのはよく分かります。携帯電話で連絡を取り合う兄弟、かるかんの材料である山芋を円くすり下ろす祖父と孫、気配りがあるのだかないのだか分からない航一の担任教師と養護教諭などなど。

 この21世紀に、小学生7人が居場所を親にもはっきりと告げずに1泊旅行しても警察沙汰にならないのが最大の奇跡でしょう(苦笑)。

 ☆ 総合得点 81点