井上もやしの日常

ほぼ「つぶやきの墓場」となっております。ブログやSNSが多様化して,ついていけないのでございます。

映画「希望の国」 ~安住の地なき世界~

2012-12-25 22:50:25 | Weblog
 先日の総選挙は「反原発」が一大ムーブメントになると思っていました。しかし、自民党が返り咲き、昔の日本がまたやって来そうです…。

 本日の昼間、フォーラム福島で映画「希望の国」を鑑賞しました。
あらすじは「goo映画」さんから引用します。

  ***引用ここから***
東日本大震災から数年後の長島県を舞台とする。酪農を営む小野泰彦(夏八木勲)は、妻・智恵子(大谷直子)と息子・洋一(村上淳)、その妻・いずみ(神楽坂恵)と、平凡ではあるが満ち足りた暮らしを営んでいた。隣に住む鈴木健(でんでん)と妻・めい子(筒井真理子)も、恋人・ヨーコ(梶原ひかり)と遊んでばかりいる息子・ミツル(清水優)に文句を言うことはあるが、仲良く生活していた。しかしある日、長島県に大地震が発生し、続いて原発事故が起きた。そのような事態が人々の生活を一変させた。警戒区域が指定され、鈴木家は強制退避が命じられたが、道一本隔てた小野家は非難区域外だった。泰彦は、洋一夫婦を自主的に避難させるが、自らは住み慣れた家に留まった。その後、泰彦の家も避難区域に指定され、強制退避の日が迫る中、泰彦は家を出ようとはしない。その頃、避難所で暮らしていた鈴木家の息子・ミツルと恋人のヨーコは、瓦礫だらけの海沿いの街で、消息のつかめないヨーコの家族を探して歩き続けていた。果たして、原発に翻弄される人々に明るい未来は訪れるのか……。
  ***引用ここまで***


 東日本大震災の数年後に、東電福島第1原発の事故級の原発事故が再び起きた…という設定の落ち着いたテンポの映画です。園子温監督といったらエキセントリックというか不条理ものっぽい映画の監督だとの印象があります。事故後、すぐに小野家の庭に原発から20km圏内と20km圏外の境目のバリケードが築かれたり、地震と津波に襲われたゴーストタウンを野生の牛やヤギが散歩していたり、おなかに子どもを宿していることが分かったいずみが防護服を着たりと、もしかしたら観客はそんなオーバーなと思うかも知れません。でも、これは不条理劇でも何でもなく、福島の現実なのです。事故当時そうだったし、今も解決されずに残っている問題も数多くあります。普通、「おなかに赤ちゃんがいますよ。」と言われたらおめでたいことなのですが、これが不安の始まりになります。「放射線の影響はないのかしら?」「将来、結婚できるのかしら? そして、子どもを産めるのかしら?」と母親たちの悩みは今もふくらみ続けています。いずみの悩みは福島の母親たちの悩みです。夏でも汗だくでマスクをしたり、どんなに暑くても長袖のコートみたいな厚手の服を着たりと、次世代を守ろうとしている母性を見てきました。

 フィクションという形でありながら、この映画に描かれるエピソード一つ一つ(例えば、車が「福島」ナンバーなのでガソリンスタンドが被曝を恐れて給油してくれないとか、マスコミが何も伝えていない時期に防護服姿の警察官や自衛隊がやってきたこととか、作物や家畜が放射線で汚染されて自殺してしまう農家や酪農家がいたこととか。)が震災当時に口コミで流れてきたこと、地元新聞で報じられていたことそのまんまで、あの苦しかった時期を思い出し、涙ぐんでしまいました。福島の住民にとって、これはノンフィクションなのです。はっきり言って、園監督らしさが、現実に起きてしまった不条理にすっかり食われています。それだけに何故に「『第2の』東電福島第1原発事故」と半端な設定にしたのだろうと思いました。「長島県」などという架空の県を作らずに、今回の事故を真っ正面に描いて欲しかったです。映画を見ていると、事故を起こした原発に近い「楢葉町」などの実在の土地が出てきます。描き方の半端さが悔やまれます。

 物語のラスト近く、若夫婦が放射線を恐れて遠くの町へ避難し、安堵の表情を浮かべます。しかし、それも束の間、洋一の線量計が警報音を鳴らし始めます。映画タイトルに反して「希望なき祖国」。「いざというときは国も県も市も町も村も信じられない。」これが現実なのです。

 ☆ 総合得点  85点

安部礼司「大人の成人式」当選!

2012-12-24 19:21:53 | Weblog
 今日、「あ、安部礼司」番組公開収録観覧チケットが届きました。収録日は1月13日(日)、場所は横浜の日産グローバル本社ギャラリーです。


 今年2月の横浜・あべ博(あべはく)、3月の岩手県釜石市の復興祈願公開収録を観覧している者としては、またあの心地よさを味わいたいと思い、応募しました。ラジオドラマに出てくる安部礼司さんの部署のまとまりのよさも素敵ですが、ドラマ出演者のほんわかしたチームワークも大好きです。今回のテーマは「大人の成人式」。成人式の2倍半強の年齢なのにまだまだ子どもの私には打って付けです。

 収録日は3連休の中日なので、何とか都合をつけて見に行きたいと思っています。

映画「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 」 ~物語の暴走~

2012-12-19 23:34:22 | Weblog
 劇場版4部作の第3弾です。

 テレビ東京で放映されたアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」全26話を再構築して、映画4部作にするはずでしたが、第2弾の「破」からアニメ版とは違った物語の展開になり、アニメ版には出ていなかったキャラクターも登場しています。今回の「Q」はそれがさらに加速しています。

 前作で起きた「ニアサードインパクト」から14年経った世界が本作で描かれます。衛星軌道上の初号機と共に回収された碇シンジが14年後の世界で目を覚まします。そこは、父親のゲンドウたちのいる「ネルフ」と、葛城ミサトや赤木リツコやアスカ・ラングレーたちが作った反ネルフの組織「ヴィレ」が戦っていました……。シンジでなくても、観客も口あんぐりだったと思います。例によって、難解なエバ用語を多用していて、分かったんだか分からなかったんだかの世界観でした。(←いや、いつものことか。)

 この作品って基本的に思春期の心の闇(「自我とは」とか「対人関係はどうあればよいか」とか)を全世界(宇宙?)に拡大解釈して描いていると思うのですが、「Q」では渚カヲルの存在によって、シンジにとって心地よい世界(「自己愛」。極端に言えば「自慰」。とにかくミサトもゲンドウもアスカもシンジに対して冷たすぎます。)を表現したかったのかなと思いました。そして、消化不良のまま、予告編を見せられました。(←いや、いつものことか。)4部作の最後は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 」。思わせぶりなタイトルです。「新」ではなくて何故に「シン」? 楽曲の反復記号→リフレイン→ルフラン→魂のルフラン?

 ストーリーはよく分からなかったのですが、何も考えずに戦闘シーンの迫力を味わうならいいかもしれません。なかなかにクオリティーが高い戦闘シーン続出です。


 ☆ 総合得点  71点 

 

映画「人生の特等席」 ~父娘関係の再生~

2012-12-19 22:44:36 | Weblog
 久々の映画鑑賞です。クリント・イーストウッド主演の、メジャー・リーグの老スカウトマンの物語です。


 粗筋は「goo映画」さんから引用します。
(引用ここから)
長年大リーグの名スカウトとして腕を振るってきたガス・ロベル。伝説のスカウトマンとして知られる存在の彼だったが、年齢のせいで視力が弱ってきていた。それでも引退する素振りを微塵も見せない彼に、球団フロントは疑問を抱き始める。そんな苦しい立場のガスに救いの手を差し伸べたのは、父との間にわだかまりを感じ続けてきたひとり娘のミッキーだった。ガスはスカウトマンの誇りをかけ、父娘二人で最後のスカウトの旅に出る。
(引用ここまで)

 私はクリント・イーストウッドの主演作や監督作はさほど見てきませんでした。自分が中高生の頃は「ダーティ・ハリー」のキャラハン刑事として、近年は「父親たちの星条旗」や「チェンジリング」等の社会派の監督というのが私にとってのイーストウッドです。

 この「人生の特等席」は全くひねりがない、ど直球勝負の父と娘の再生の物語です。父親に見放されたと思い込んで育ち、周りの人と壁をつくりがちなミッキー(エイミー・アダムス)が徐々に父親の愛情に気付き始める様子を感動的に描いています。最初、老いのために視力が衰えて自室で転んだり、車庫入れで車をガリガリこすったりしている父をどちらかというと義務感からちょっと手助けしてやろうと思い、スカウトの旅に同行した娘。しかし、最近のパソコンで野球選手のデータだけを収集してスカウトを進める風潮に反して、地方のリーグや学生野球の現場に出掛けて自分の目で選手を見、そして選手の動きを音で感じる父親の地道な姿勢に引かれていきます。また、娘が少女時代に性的ないたずらをされそうになったときに父親が救ってくれたこと、別居生活の訳などが語られ、2人のわだかまりがなくなり、二人三脚のスカウトの旅となっていきます。

 終盤、ガスがスカウトを見送ろうと言った強打者を球団がドラフト指名し、それに対抗してミッキーが世間の知らない剛腕の新人投手を見つけ出して対戦する場面はややご都合主義と感じましたが、非常に分かりやすく、肩の凝らないストーリーでよかったです。


 ☆総合得点  84点