何で「マッサン」のヒロインに「ゴンドラの唄」なんて歌わせるの? 英語のスタンダード曲の方がよかったんじゃないの??
年度替わりの忙しさが一段落しないものの,気分転換に映画館へ。
原作はいがらしみきおのマンガ「かむろば村へ」。いがらしみきおは,私が大学生のときに衝撃を受けた漫画家です。当時の月刊宝島は毎号,新人漫画家を紹介するページがあり,そこに彼の4コマギャグマンガが何本か紹介されていて,起承転結の「結」のぶっ飛び具合にそれこそぶったまげました。そして,竹書房や白夜書房で出版されている彼の作品を読みました。これは,宮沢賢治,井上ひさしに次ぐ,東北三大天才だと感じました。「ぼのぼの」以前の頃です。実は,彼の「かむろば村へ」は未読でありましたが,「きょうのおことば」「I(アイ)」などは読んでいたので,映画化したものを見てみたい欲求に駆られ,「バードマン」ではなく,迷わずにこちらに向かいました。
簡単にストーリーを紹介すると,お金アレルギーの元・銀行員の高見武晴(松田龍平)がお金を使う必要のない生活を夢見て,東北の限界集落寸前のかむろば村にある古民家を100万円で買い上げてやって来て,実に濃厚な村人と関わりながら,人間らしさを取り戻していく話です。兎に角,村人たちがとっても濃いメンバーです。ま,ひと癖もふた癖もあると言った方がいいです。世話好きなかむろば村長の天野(阿部サダヲ),ヤクザの青木(荒川良々)と組んで美人局で金を稼ぐ女子高生・青葉(二階堂ふみ),助役に村長立候補をけしかける隣町議員の青砥(皆川猿時),武晴に農業を教えるみよんつぁん(モロ師岡),天野のスーパーでパートで働き,大型バイクを乗り回すいそ子(片桐はいり),天野の過去を追い回す多治見(松尾スズキ)などなどと,ホントに芸達者な役者たちが登場して,かむろばの世界を作り上げています。特に,村で神様と呼ばれて不思議な力を持っているなかぬっさん(西田敏行)がこの映画に文鎮のようなぶれない重さを与えています。当然でありますが,役者たちは主に福島弁を話していますが,西田敏行の福島弁は完璧です(笑)。
人は何で生きているのか? 金とは何なのか? 人の生き甲斐って何だろう? 有史以来人間が文明を築くたびに議論されたであろうこれらの問いに答えようとするのが本作です。いがらしみきおの深遠な哲学を,ブラックに近い笑いを交えて分かりやすい形で描いています。ラストシーンの,武晴が村長選挙に立候補し,その演説中に帯封がされた札束にライターオイルを掛けて火を付けるシーンがあります。これで,無一文,裸一貫という状態。ここからが金の力を借りない,自分自身の生身の人間としての戦いが始まるんだとのメッセージが潔いです。そして,何度か登場するなかぬっさんの「なーんでも解決すっからぁ。ただす,おめぇが思ったようには解決すねぇけどなぁ。」という台詞が人生そのものなのであることを痛感させます。
☆ 総合評価 87点
原作はいがらしみきおのマンガ「かむろば村へ」。いがらしみきおは,私が大学生のときに衝撃を受けた漫画家です。当時の月刊宝島は毎号,新人漫画家を紹介するページがあり,そこに彼の4コマギャグマンガが何本か紹介されていて,起承転結の「結」のぶっ飛び具合にそれこそぶったまげました。そして,竹書房や白夜書房で出版されている彼の作品を読みました。これは,宮沢賢治,井上ひさしに次ぐ,東北三大天才だと感じました。「ぼのぼの」以前の頃です。実は,彼の「かむろば村へ」は未読でありましたが,「きょうのおことば」「I(アイ)」などは読んでいたので,映画化したものを見てみたい欲求に駆られ,「バードマン」ではなく,迷わずにこちらに向かいました。
簡単にストーリーを紹介すると,お金アレルギーの元・銀行員の高見武晴(松田龍平)がお金を使う必要のない生活を夢見て,東北の限界集落寸前のかむろば村にある古民家を100万円で買い上げてやって来て,実に濃厚な村人と関わりながら,人間らしさを取り戻していく話です。兎に角,村人たちがとっても濃いメンバーです。ま,ひと癖もふた癖もあると言った方がいいです。世話好きなかむろば村長の天野(阿部サダヲ),ヤクザの青木(荒川良々)と組んで美人局で金を稼ぐ女子高生・青葉(二階堂ふみ),助役に村長立候補をけしかける隣町議員の青砥(皆川猿時),武晴に農業を教えるみよんつぁん(モロ師岡),天野のスーパーでパートで働き,大型バイクを乗り回すいそ子(片桐はいり),天野の過去を追い回す多治見(松尾スズキ)などなどと,ホントに芸達者な役者たちが登場して,かむろばの世界を作り上げています。特に,村で神様と呼ばれて不思議な力を持っているなかぬっさん(西田敏行)がこの映画に文鎮のようなぶれない重さを与えています。当然でありますが,役者たちは主に福島弁を話していますが,西田敏行の福島弁は完璧です(笑)。
人は何で生きているのか? 金とは何なのか? 人の生き甲斐って何だろう? 有史以来人間が文明を築くたびに議論されたであろうこれらの問いに答えようとするのが本作です。いがらしみきおの深遠な哲学を,ブラックに近い笑いを交えて分かりやすい形で描いています。ラストシーンの,武晴が村長選挙に立候補し,その演説中に帯封がされた札束にライターオイルを掛けて火を付けるシーンがあります。これで,無一文,裸一貫という状態。ここからが金の力を借りない,自分自身の生身の人間としての戦いが始まるんだとのメッセージが潔いです。そして,何度か登場するなかぬっさんの「なーんでも解決すっからぁ。ただす,おめぇが思ったようには解決すねぇけどなぁ。」という台詞が人生そのものなのであることを痛感させます。
☆ 総合評価 87点