電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形オペラフェスティバル・オープニングスペシャルコンサートを聴く

2022年11月09日 06時36分59秒 | -オペラ・声楽
山形のオペラシーズンの幕開けに、山響から定期会員向けに招待券が送られて来ました。「山形オペラフェスティバル・オープニングスペシャルコンサート」です。11月8日(火)、夜7時〜、山形市の県民ホールでの開催です。当日は非常勤の勤務日でしたが、早々と夕食を済ませ、高速で会場に乗り入れます。駐車場には仙台ナンバーなど他県の車も目に付き、今回の山形のオペラシーズンはだいぶ注目されているのかもしれません。今回、本当は妻と二人でお出かけの予定でしたが、妻は体調が優れず一人だけで出かけることとなりました。実は私も前々日に寝違えたらしく、右肩が痛くて絶不調だったのですが、開場早々に割当の二階中央右側の最前列という良い席に着くと、新しいホールの雰囲気に気分は盛り上がります。ざっと楽器編成と配置を想像してメモし、開演を待ちました。しまった、オペラグラスを忘れてきた! でも、某NHKホール等の安い席と違って、肉眼で演奏家の表情もはっきり見える規模のホールですので、まあいいか!



今回のプログラムと出演者は、

モーツァルト 「フィガロの結婚」序曲
       「フィガロの結婚」より「もう飛ぶまいぞこの蝶々」
       「フィガロの結婚」より「恋人よ、早くここへ」
モーツァルト 「魔笛」より「なんと美しい絵姿」
       「魔笛」より「パパパの二重唱」
ロッシーニ 「セビリアの理髪師」より「もう逆らうのをやめろ」
      「セビリアの理髪師」より「私は町の何でも屋」
  (休憩)
ロッシーニ 「ウィリアム・テル」より序曲「スイス軍の行進」
ビゼー   「カルメン」より前奏曲
      「カルメン」より「アラゴネーズ」
      「カルメン」より「闘牛士の歌」
マスカーニ 「カヴァレリア・ルスティカーナ」より前奏曲
ヴェルディ 「リゴレット」より「女心の歌」
      「椿姫」より「花から花へ」
      「椿姫」より「乾杯の歌」
  種谷典子(Sp)、中井亮一(Ten)、髙田智士(Bar)、粟辻聡 指揮、山形交響楽団
  ナビゲーター:桂米團治

というものです。



ステージ上には、向かって左から第1ヴァイオリン(8)、第2ヴァイオリン(7)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、その左手にコントラバス(3)の弦楽5部、正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、木管の左手にハープがデンと目立ちます。その後列はホルン(4)、トランペット(2)、バロックティンパニ、最後列にはバスドラムなどパーカッションとティンパニ、トロンボーン(4)という配置になっているようです。

拍手の中、楽員が登場、コンサートマスター髙橋和貴さんに一段と大きな拍手が送られた後、指揮の粟辻聡さんが颯爽と登場、「フィガロ」の序曲で軽快に始まりました。ナビゲーターとして、落語家でクラシック大好きな桂米團治さんが緑色の派手な上着で登場、「フィガロの結婚」のストーリーを簡潔に要約します。「フィガロが、結婚する話です」(^o^)/ たしかに(^o^)/
でもその後でちゃんと要約したあらすじは見事で、軍隊行きを命じられたケルビーノを慰める歌だ、と紹介した「もう飛ぶまいぞこの蝶々」をバリトンの髙田智士さんが歌います。バリトンの声域はオーケストラの主要な音域にかぶるために、なかなか難しいポジションですが、張りのある歌声は見事で、動きのある振り付けがやけに軽快。きっと運動神経がいいんだろうなあ、うらやましい(^o^)/
続いてフィガロの恋人で伯爵夫人の侍女スザンナの歌「恋人よ、早くここへ」、ソプラノの種谷典子さんが歌います。種谷さんは明るいベージュ色のドレスで、歌う時のしぐさがとてもチャーミング。フィガロだけでなく若い男性はイチコロだったことでしょう(^o^)/

そして「魔笛」からの2曲。テノールの中井亮一さんが王子タミーノ役で「なんと美しい絵姿」を歌います。雰囲気的に若い王子役がぴったりで、夜の女王の三人の侍女がいたらきっと追いかけ回すだろうなあと納得です。次が鳥刺しパパゲーノと出会ったパパゲーナによる「パパパの二重唱」。パパゲーノが髙田さん、パパゲーナが種谷さんです。いつも思いますが、この二人による二重唱は、王子タミーノと夜の女王の娘タミーナのもっともらしい試練よりも幸せそうだなあ(^o^)/

プログラム前半の最後は、1月28日に公演が予定されているロッシーニの「セヴィリアの理髪師」から、「もう逆らうのをやめろ」を中井さんのテノールで、「私は町の何でも屋」を髙田さんが歌います。ロッシーニの魅力というのは私はまだ理解できていないのですが、声の、歌の技巧という点ですごい技術が必要な歌だというのはわかります。その意味では、私のような素人音楽愛好家よりもむしろ玄人受けする面があるのかもしれません。

20分の休憩の後、前半のバロック・ティンパニは退き、
ナビゲーター役の桂米團治さんが落語家らしい着物姿で登場します。後半はロッシーニの「ウィリアム・テル」より、序曲「スイス軍の行進」を山響の演奏で。Tp の輝かしい響きで始まった音楽はぴしっと揃った見事なもので、山響の実力を発揮です。続いてビゼーの「カルメン」から「前奏曲」と「アラゴネーズ」。オーボエの旋律に絡むピッコロやフルート、クラリネット等の木管の響きがほんとにエキゾティックです。あらためて気づきましたが、「アラゴネーズ」でTimp.の音にコントラバスがピツィカートで重ねているのですね。こうした細部を目で見ながら聴くのは、今更ながらの発見もあり実演に接する楽しみでもあります。そして登場する高田さんによる「闘牛士の歌」、カッコいいエスカミーリョです。再び山響だけの演奏で、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」前奏曲。私のこの曲に対する刷り込みはカラヤンのものでしたので、なんだか過剰に陶酔的な印象を持っていましたが、粟辻さんと山響の演奏はもっとずっと清楚で好感の持てる美しいものでした。そしてトリをつとめる作曲家はヴェルディです。テノールの中井さんが「リゴレット」より「女心の歌」、DVD 等で劇中で歌われると残酷なほどの軽薄さですが、単独に歌われるとやっぱり有名になるだけはあるなあ(^o^)/
「椿姫」から「花から花へ」、赤いドレスに着替えた種谷さんが華やかな高級娼婦ヴィオレッタに扮し、愛を見出しながら離れることを選ぼうとする、揺れる心情を歌います。「椿姫」で最後とくれば、やっぱり「乾杯の歌」でしょう。中井さんと種谷さんの歌で、思わず歌いだしたくなるようなノリです。会場の聴衆から、すごい拍手! 桂米團治さんが、もう一曲、高田さんも加わって三人でと注文すれば、ヨハン・シュトラウスのオペレッタ「こうもり」から「シャンパンの歌」を。聴衆の手拍子も加わり、とてもいい雰囲気で終わりました。

そういえば、桂米團治さんの着物は今日おろしたての米沢紬だったそうで、山響の実力とオペラフェスティバルの宣伝(*1)とともにしっかり地元アピールしておりました。「たねたに」さんって言いにくい名字だけど、さすがは落語家、全体をすらすらとナビゲートしてくれたのは流石でした。裏方の皆様もたいへんお疲れ様でした。大いに趣向を楽しむことが出来ました。



今気づきましたが、18歳以下無料だったんですね! どおりで中高生や小学生みたいな若い子がたくさんいたなあ。いいなあ、この太っ腹! 若い子たちは未来だもの。

(*1):やまがたオペラフェスティバル 公式サイト


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山響と「三大テノールの宴」を聴く

2022年02月24日 06時01分41秒 | -オペラ・声楽
天皇誕生日の23日、午後から山形県民ホール(通称やまぎんホール)で、妻とともに山形交響楽団と「三大テノールの宴」を聴きました。三大テノールと言えば、ホセ・カレーラスが1987年に白血病を発病し、奇跡的に生還した後、この病気の研究とドナー登録を支援する財団を作ったが、これを支援するために、1990年のワールドカップでルチアーノ・パヴァロッティとプラシド・ドミンゴが加わって開会式で歌ったのが有名になり、「三大テノール」の呼び方が定着したト記憶しています。しかし今回は日本の三大テノールと言える、福井敬さん、村上敏明さん、笛田博昭さんが、イタリア・オペラのアリアやその他の有名曲を、藤岡幸夫さん指揮する山形交響楽団をバックに歌うというもので、以前から楽しみにしていたものです。
プログラムは次のとおり。

    第1部
  1. ロッシーニ:歌劇『セヴィリアの理髪師』序曲   山形交響楽団
  2. チレア:歌劇『アルルの女』より「フェデリーコの嘆き」 笛田博昭
  3. プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』より「冷たき手を」  村上敏明
  4. プッチーニ:歌劇『トスカ』より「妙なる調和」     福井敬
  5. ヴェルディ:歌劇『イル・トロヴァトーレ』より「見よ、恐ろしい火を」  笛田博昭
  6. プッチーニ:歌劇『トスカ』より「星は光りぬ」     村上敏明
  7. ジョルダーノ:歌劇『フェドーラ』より「愛さずにはいられないこの想い」 福井敬
        (休憩)
    第2部
  8. ヴェルディ:歌劇『椿姫』序曲   山形交響楽団
  9. レオンカヴァッロ:朝の歌       笛田博昭
  10. デ・クルティス:帰れソレントへ    村上敏明
  11. カルディッロ:カタリ・カタリ     福井敬
  12. ニーノ・ロータ:映画『ゴッドファーザー』より「愛のテーマ」 笛田博昭
  13. ララ:グラナダ            村上敏明
  14. バーンスタイン:『ウエストサイド物語』より「マリア」  福井敬
  15. サルトーリ:タイム・トゥ・セイ・グッバイ  (三人で)
  16. プッチーニ:歌劇『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」ほか  (三人で)

いつもの定期演奏会とは異なり、楽器編成も曲目により変わりますが、弦楽セクションは左から第1ヴァイオリン(10)、第2ヴァイオリン(8?)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、その右後方にコントラバス(4)と増強されているようです。

第1部は、ロッシーニの『セヴィリャの理髪師」序曲に続きイタリア・オペラのアリアの有名どころですが、テノールの歌は、やっぱりいいなあ! 元気が出ます。歌っているのは死を前にしての「星は光りぬ」であっても、オーケストラをバックに朗々と歌っているのを観て聴いて、もうそれだけで、元気になります(^o^)/ そして、川上さんのクラリネットが、いいなあ!
ジョルダーノの「フェドーラ」からのアリアも、ほんとに見事でしたし、今年のNHK-ニューイヤーオペラコンサートでも森麻季さんと「乾杯の歌」でオープニングを飾った笛田さんのヴェルディ『トロヴァトーレ』から「見よ、恐ろしい火よ」も、囚われの母親を救出する決意を歌うあの高い音も素晴らしかった。

休憩の後の第2部は、がらりと雰囲気を変えて、三人ともチラシのような衣装で登場です。これ、コシノヒロコさんのデザインによるものだそうで、地味と言ってよいのか派手と言って良いのかわからないけれど、インパクトがあるのは確かです(^o^)/
山響による「椿姫」序曲の後は、有名どころの歌が続きますが、それにしても最初にこの選曲をした人はすごいなあと思います。ほんとに歌唱力とともに、楽曲の魅力と力があるなあと感じます。笛田博昭さんの歌で聴く『ゴッドファーザー』愛のテーマは、ほんとにイタリア・オペラの音楽のようで、作曲家ニーノ・ロータの面目躍如でしょう。トランペットのソロがかっこよかった〜。三人で歌う「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」は、サラ・ブライトマンの歌とはまた違った迫力と魅力ですし、プッチーニ『トゥーランドット』より「誰も寝てはならぬ」も、三人でというのがすごいのだなと実感。と同時に、増強したオーケストラの力が感じられるフィナーレでした。

山形はもちろん、秋田から熊本まで、満席のお客様の熱狂的な拍手に応えて、アンコールがありました。ヴェルディの歌劇『リゴレット』から「風の中の羽根のように」、いわゆる「女心の歌」と、「オーソレミオ」です。笛田さん、もう「歌いたくてしょうがない」っぽい雰囲気を出しながら、三人で熱唱! いや〜、良かった〜!

帰りの車中、妻と「良かったね〜」と話しながら帰りましたが、新型コロナウィルス禍の今後や、今はまだ元気でいてくれている老母のことなど、色々な不安や心配は尽きません。でも、ときにこうした演奏会を楽しみ、元気になって帰ることで、明日へのエネルギーとなるように感じています。山形に山響というオーケストラがあることを喜びながら、新しいホールでまた魅力的な演奏会が楽しめますようにと願うばかりです。

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C.クロイツァーの音楽を探してみたら

2022年02月05日 06時01分05秒 | -オペラ・声楽
先日の山形弦楽四重奏団の定期演奏会で、コンラディン・クロイツァー(*1)という作曲家の音楽を知りました。どうやらベートーヴェンよりも10歳ほど年下のオペラを中心として活躍した作曲家らしいとまではわかりましたが、他の曲も聴いてみたいと思い、YouTube で探してみました。

まず、出世作となったという歌劇「グラナダの野営」から、序曲を。
Das Nachtlager in Granada: Overture


続いてピアノ伴奏でクラリネットとソプラノが歌います。
Conradin Kreutzer | Das Mühlrad (水車)


次はミサ曲を。
Conradin Kreutzer (1780-1849) - Missa di Sancta Francisca (1830)


最後に声楽を離れて、ピアノ協奏曲第2番。
Conradin Kreutzer Klavierkonzert No. 2


ふーむ、なるほど。ベートーヴェンの少し後に活躍した人、ということでしたが、今まで私の守備範囲には入ってこなかった作曲家でした。でも、音楽史上で革命的な人ではないかもしれないけれど、魅力的な音楽がまだまだありそうです。クロイツァー、覚えておこう。

(*1):コンラディン・クロイツァー〜Wikipedia による解説

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「ニューイヤー・オペラコンサート2022」を観る

2022年01月04日 06時01分33秒 | -オペラ・声楽
お正月の楽しみは、NHK-Eテレで放送する「ニューイヤー・オペラコンサート2022」です。オペラやバレエを得意とする東フィルを、今年はわれらが山響の常任指揮者である阪哲朗さんが指揮しました。始まりは森麻季(Sop.)さんと笛田博昭(Ten.)さんによるヴェルディの「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」から「乾杯の歌」でした。いつもながら、この音楽が始まると嬉しくなりますね〜(^o^)/
ドニゼッティの歌劇「連隊の娘」から「みんながごぞんじ」では、高橋維(Sop.)さんが元気よく歌い、合唱団の男性陣から赤いハンカチ(?)が振られ、えらい人気です(^o^)/
歌劇「魔笛」から「恋を知るほどの殿方には」、砂川涼子(Sop.)さんと司会の一人である黒田博(Bar.)さんの歌は、できれば寄り添って歌いたいところですが、コロナ禍の現状では離れて歌う愛の歌でも仕方のないところでしょうか。モーツァルトでは他に「ドン・ジョヴァンニ」「後宮からの誘拐」からも取り上げられました。
また、ビゼーの歌劇「カルメン」からいくつかの歌、特に力強く華やかな「闘牛士の歌」はさすがに素晴らしかった。

幕間に相当する歴代の「レジェンド」たちの歌声、立川澄人さん、中澤桂さん、伊原直子さん、市原多朗さん、佐藤しのぶさんなど、ずいぶん懐かしいものでした。まさにオペラ指揮者の阪哲朗さんのインタビューも、経験からくる含蓄、味がありました。

後半のヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」から「夜会は招く」など、こうした有名どころばかりではありませんで、実はコルンゴルトの歌劇「死の都」から、「私に残された幸せ」を森麻季さんが甘美に歌うという、素人音楽愛好家であるワタクシには実に貴重な場面も。
途中、ワーグナーが1曲「ワルキューレ」から「冬の嵐は過ぎ去り」をはさみ、ヴェルディの「ドン・カルロ」から王妃エリザベッタが去りゆく女官に語りかける「泣かないで友よ」を小林厚子(Sop.)さん、好きなんですよ、この歌。「仮面舞踏会」から「おまえこそ心を汚すもの」を上江隼人(Bar.)さんが歌い、続いてプッチーニの「トスカ」から福井敬(Ten.)さんが「星はきらめき」、「蝶々夫人」から花の二重唱「桜の枝をゆすぶって」を小林厚子さんと山下牧子(MS)さん。
ヴェリズモの中から1曲、レオンカヴァルロの「道化師」から「衣装をつけろ」を笛田博昭(Ten)さん、ヴェルディ「運命の力」から「神よ、平和を与えたまえ」を大村博美(Sop.)さん、ベートーヴェンの歌劇「フィデリオ」から第2幕フィナーレ」を森谷真理、石橋栄実(Sop.)、福井敬、宮里直樹(Ten.)、大西宇宙(Bar.)、妻屋秀和(Bas.)さんが、新国立劇場合唱団、二期会合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル、藤原歌劇団合唱部という豪華な合唱団をバックに歌います。
最後は、ヨハン・シュトラウスの喜歌劇「こうもり」から「ぶどう酒の燃える流れに」、出演者がみんな登場して、華やかなフィナーレ。

いや〜、阪さんの指揮も東フィルの演奏も合唱も、良かった〜。今年のニューイヤー・オペラ・コンサートは、特別番組として、「それでも人は歌い続ける」というテーマを掲げています。これは、コロナ禍の中でともすれば感染源の一つのように扱われかねない歌、合唱の意義をあらためて確かめる意味もあるでしょう。管弦楽はもちろん室内楽も大好きですが、一方で歌好き・合唱好きでもある一人として、まったく同感です。電話が入ったりして途中が邪魔されたりしましたが、生中継の良い番組でした。関係者の皆様の努力に感謝と敬意を表します。

【追記】
なんてこったい!タイトルが「2020」になっていた(^o^)/ 「2022」に訂正しました。

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新年の音楽始めは〜R.シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」から

2022年01月03日 06時00分43秒 | -オペラ・声楽
新年の音楽始めは、なんともはや、な音楽になりました(^o^)/
R.シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」をレーザーディスクで。このオペラ、実は今年の山響50周年かつ第300回定期演奏会で、演奏会形式で抜粋を上演することになっています。もともと、1980年代に購入したレーザーディスクですが、こうして今も変わらず楽しむことができるのは何度も機器の修理をお願いしている電器屋さんのおかげで、まことにありがたい。

多くのオペラのストーリー上の破綻や破天荒さにはあまり驚かないようになっていますが、題名から想像するイメージとは異なり、最初から元帥夫人と若い青年貴族の不倫のベッドシーンから始まることにはいささか驚いたものでした。元帥夫人はキリ・テ・カナワ、若いツバメの伯爵オクタヴィアンにアン・ハウエルズ。お邪魔虫のオックス男爵にオーゲ・ハウグランド、助平オッサンのオックス男爵よりもバラの騎士の役割を果たしたオクタヴィアンに恋をしてしまうゾフィー役にバーバラ・ボニーという配役で、英国コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団、同合唱団の演奏、指揮はゲオルク・ショルティです。

堂宇を圧倒する、いわゆるオペラアリア的なシーンよりも、会話のウィットが軽やかな音楽にのせて綴られるタイプの音楽が多いです。でも、元帥夫人がやがて離れていくであろう若い恋人を思いながら自分の年齢をふりかえり時のむごさを思う場面などは、こちらもしみじみと共感できますし、幕ごとにシーンを止めたり、1枚目と2枚目のディスクを交換する際に休憩したり、来客もないのんびりしたお正月向きの楽しみ方かも。



YouTube におけるオペラの映像というのは権利関係が難しそうですので、すでにパブリックドメインになっている「ばらの騎士」組曲から、オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団の演奏を。
R. Strauss: Rosenkavalier Suite, Ormandy & PhiladelphiaO (1964) R. シュトラウス ばらの騎士組曲 オーマンディ


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CALMUS Ensemble の動画を楽しむ

2021年12月14日 06時01分01秒 | -オペラ・声楽
以前、旅先でシューマンの合唱曲を楽しんだときに、CALMUS ensemble による「流浪の民」が素晴らしかった(*1)ので、このグループの動画に注目しておりました。強い風が吹いた師走の雪の日、久方ぶりに CALMUS ensemble で検索し、いくつかの動画を楽しみました。

クラシックではありませんが、まずはエルトン・ジョンの「 Your Song 」から。YouTube には2012年に登録されていますので、それ以前の収録ということになります。
CALMUS - TOUCHED - Elton John - Your Song


続いて2013年、J.S.バッハを。教会カンタータ第26番「はかなくむなしき地なるいのち」(*2)
CALMUS - Ach wie flüchtig, ach wie nichtig BWV 644, BWV 26


2014年、ライプツィヒにて、マックス・レーガーの「夜の歌」。
CALMUS - Max Reger: Nachtlied (aus op. 138)


これは楽しい歌芝居! 2014年、ライプツィヒ、モーツァルト風「白雪姫」。
CALMUS - Das mozärtliche Schneewittchen


もうすぐクリスマスなので、賛美歌「ふるさとを離れて遠く」を。2015年に登録されています。"De Tierra Lejana Venimos" は英語なら「From a Distant Home」でしょうか。この讃美歌、どことなく中南米風なテイストもあるような音楽です。プエルトリコ? いいですね〜。
Calmus Ensemble - De Tierra Lejana Venimos




コロナ禍を経た現在、メンバーも少し変わってきているみたい。カウンターテナーが女声になり、女性が二人になっています。2021年5月、聴衆の入らないヴァーチャル・コンサートです。Calmus Ensamble の Channel より。
Halleluja³ | Calmus Ensemble


うーん、CDがほしいなあ。

(*1): 旅の空の下、シューマンの合唱曲を聴く〜「電網郊外散歩道」2018年7月
(*2): 訳詞によるとこんな内容です。

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モーツァルトの歌劇「魔笛」を観る〜二期会公演

2021年10月10日 08時40分06秒 | -オペラ・声楽
日曜の午後、山形市のやまぎん県民ホールで、宮本亜門演出の二期会オペラ、モーツァルトの歌劇「魔笛」を観ました。だいぶ前から楽しみにしていた公演で、新型コロナウィルス禍の動向にやきもきしながらなんとかなりそうだと判断してチケットを購入していたものです。今回は開演時刻を間違わずにホールに到着、妻と共に二階席へ。



やや高い位置からではありますが、オーケストラ・ピットの手前の方は見えません。目を凝らしてよくよく見ると、指揮者席を中心に左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリン、コントラバスという対向配置のようで、ピットが横長になるため管楽器はいつもの正面奥ではなくて、木管楽器が左手、金管楽器が右手、正面奥にはチェレスタ?、やや右手奥にティンパニという配置のようです。

指揮者の阪哲朗さんが登場、満員の聴衆に一礼すると、「魔笛」序曲の、あの三和音が始まります。ほんとはワクワクする序曲の間に期待が高まるところでしょうけれど、こんどの演出ではすぐに幕が上がり、立方体の手前の二面と天井が開いた形のスクエアな舞台で、現代風な家庭劇が展開されます。どうやらわがままなパパが酔っ払って暴れ、奥さんが怒って子供を置いて出ていくというふうな状況のようで、このパパが窓から飛び出すとそこからいかにもRPG風の魔笛の世界が始まるという設定。なるほど、プロジェクションがうまく使われているようです。

第一幕、例によって三人の侍女が登場しますが、なんとまあ、極端に胸を強調した演出です。一瞬、冬瓜を二個かかえているのではないかと思ってしまうほどで、お色気よりは滑稽さをねらったものみたいです。一瞬、グロテスク系の演出じゃなかろうなと心配しましたが、続いて登場する夜の女王も同系統のもので、ははあ、これは夜の女王の側は肉欲を象徴するものなんだなと理解。パパゲーノとタミーノのアリアや夜の女王のアリア等も好調で、山響もモーツァルトの音楽を柔軟にバランスよく聴かせてくれます。

ザラストロが登場、なんだか仮面ライダーみたいな頭だなと思ってよくよく見たら、大脳のシワがむき出しになっているのでした。なんともグロテスクですが、要するに理性の象徴なのでしょう。こういうのがロールプレイング・ゲーム風というのだろうか、インパクトはありますがあまり趣味の良いものではありません。三人の童子はソプラノが演じています。こちらは今風の少年みたいで、好感が持てます。

パパゲーノの前にパパゲーナがはじめて現れるところは、やっぱり面白い場面です。今回は車イスに乗って登場し、パパゲーノを口説きます。この老婆が第2幕では18歳の飛び跳ねるキャピキャピのギャルに変身するのですから、パパゲーナはある意味ずいぶんラッキーな役柄かも(^o^)/

第2幕の中では、やっぱり夜の女王のアリア「復讐の炎は地獄のように燃えて」がすごいです。これに合わせるオーケストラも、中間色の音色を排し原色ギラギラで迫力満点。悪役の一人モノスタトスが霞んでしまうほどです。でも、どーして夜の女王は自分でザラストロを殺そうとせず、娘に殺させようとするのだろう? お話の都合上いたし方ないのですが、不思議な人です、夜の女王(^o^)/

まあ、タミーノとパパゲーノの試練に対する向かい方は実に対照的で、真面目で優等生のタミーノ、天衣無縫、率直ストレートなパパゲーノと、魅力的な人物造形かつ音楽となっています。沈黙の試練はパミーナの誤解を招き、深い悲しみのアリアを導きますし、僧侶たちの合唱は新型コロナウィルス禍になって以来、しばらくぶりの生合唱かもしれません。堂々たる合唱で、良かった〜! 最後の試練を経たタミーノとパミーナの幸福感もいいけれど、何と言っても素晴らしいのがパパゲーノとパパゲーナの喜び溢れる二重唱です。「パ・パ・パの二重唱」は、歌える・演じられる喜びを爆発させたような素晴らしいものでした!

フィナーレの後、画面は一転して最初の現代風の家庭劇に戻ります。試練を終えた若いパパは現実に戻り、妻も家庭の平和も戻ってきてハッピーエンドに。

ゲーム画面を模したと思われるスクエアな舞台装置や、多用されたプロジェクション・マッピングも有効でしたし、ロールプレイング・ゲーム風なデフォルメはいささかグロテスクな面もありましたが、たいへんおもしろく「魔笛」の世界を描いていたと思います。阪哲朗指揮山形交響楽団の演奏は、オーケストラ・ピットから見える限りでは、トランペットの長さから判断してたぶんナチュラル・トランペットを使っているものと思います。座席位置からは見えませんでしたが、ホルンもおそらくナチュラル・ホルンでしょう。音の抜けの良さから判断して、ティンパニもバロック・ティンパニを採用しているものと思います。例えばパミーナの嘆きの場面における弦楽の美しく哀しい響きに現れていたように、オーケストラ自身が作曲当時の時代考証を踏まえてバランスの良い澄んだ響きを実現していることが力になり、山響らしい素晴らしいモーツァルトのオペラ公演になっていたと思います。良かった〜!

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アカペラで歌われた一人多重唱をいくつか

2021年05月16日 06時00分40秒 | -オペラ・声楽
ギター音楽を中心に興味深い記事を連載しているブログサイト「六弦音曲覗機関」で、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を取り上げて(*1)いました。その中で、ある女性が一人アカペラで多重録音したらしい「スカイ・ハイ」が良かったので、美貌の、いや、備忘のために記事にすると共に、アカペラで歌われた一人コーラスをいくつか集めてみました。

まずは、きっかけとなったアカペラ「Sky High」から。ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」第3楽章のアレンジです。歌っているのは現在バンクーバーの大学院生「クリヤマユウリ」さん。
【Acapella】Sky High 【ゴスペラーズ/のだめカンタービレ巴里編】


続いて、讃美歌「主よ、みもとに近づかん」。acapeldridge というだけで、歌っている人はよく知りません。
Nearer, My God, To Thee


同じく acapeldridge で、讃美歌「安らかな流れのときも」
It Is Well with My Soul


昔から、アナログの時代にはマルチトラックレコーダーでテープに録音する形の一人多重録音というのはありましたが、現代はコンピュータの利用で映像付きデジタルレコーディングが簡単にできる(*2)ようです。いやはや、才能ある人たちには良い時代かもしれませんが、逆に新型コロナウィルス禍の中で一人アカペラ多重録音を強いられているとすれば、それは必ずしも喜ばしいことではないのでしょう。そういえば、しばらくカラオケもやったことがありません。ゴスペラーズ「Sky High」のカラオケバージョンで、鼻歌程度にでも歌ってみるとしましょうか(^o^)/
【カラオケ】Sky High/ゴスペラーズ

(*1):ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番ハ短調」〜「六弦音曲覗機関」より
(*2):例えば:無料録音アプリ「Acapella」でやる、楽器の一人アンサンブルが最高に楽しいからおすすめ


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LDプレーヤーは今回も修理でき、オペラ作品のさわりを楽しむ

2021年05月01日 06時00分12秒 | -オペラ・声楽
我が家のレーザーディスクプレーヤー(SONY MDP-A10)は、昭和60年代末に購入したものですのですでに30年以上になりますが、地元の電気屋さんに何度か修理してもらい、今だに現役です。今回は、トレーが開く際にカバーが下に降りるところを障害物にぶつけてしまい、動かなくなったという機械的なトラブルでした。幸い、破損はなく今回も修理できたということで、戻ってきました。



画質の点では、現代のDVDのほうが良好なのですが、なにせ今まで道楽で集めたオペラ等ボックス物のLDが、小型のキャビネット上下二段分あります。完全に壊れたら諦めるつもりではいますが、お気に入りの作品、例えばヴェルディの歌劇「ドン・カルロ」とかプッチーニの歌劇「ボエーム」など、ハードが動くうちは楽しみたいものです。



昨日はお天気がいまひとつのうえに風が強くて寒い日で農作業日和ではなく、メトロポリタン歌劇場のプッチーニ「トゥーランドット」第1幕のさわりを観たり、リッカルド・ムーティ指揮ミラノ・スカラ座のヴェルディの歌劇「エルナーニ」(*1)、ヴィクトル・ユーゴー原作による戯曲で、見方によれば一種の西洋チャンバラの音楽を楽しみながらグータラ過ごしました(^o^;)>poripori



(*1):エルナーニ〜Wikipediaより

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山形オペラ協会「フィガロの結婚&コジ・ファン・トゥッテ」を聴く

2021年03月07日 06時01分14秒 | -オペラ・声楽
日曜の午後、雪消しを中断して河北町の「サハトべに花」ホールに出かけました。山形オペラ協会の「オペラって面白い!〜"フィガロの結婚"&"コジ・ファン・トゥッテ"〜モーツァルトの世界へようこそ」というガラ・コンサート・スタイルの演奏会です。少し出遅れたため駐車場はだいぶ混んでおり、ホール前の駐車場はすでに満車、道路向かいの駐車場に停めることができました。

人口が1万8千人程度の町にあるホールは、席数が約800席あまり、ヴァイオリニストの堀米ゆず子さんはこの町の豪農堀米家の孫にあたります。そんな関係で、ちゃんとしたクラシック音楽の演奏会が開かれることもたびたびあり、コロナ対策は万全にとりながらも、お客さんの入りはずいぶん大勢です。



プログラムは、第1部が「フィガロの結婚」、第2部が「コジ・ファン・トゥッテ」です。指揮は佐藤寿一さん、演奏は山形交響楽団、演出は藤野祐一さん、山形オペラ協会(*1)の公演です。

ステージ奥にオーケストラが入り、客席側のほう、指揮台の両脇に透明なポリエチレンのシートで区画を作って、歌い手はここに入って歌う形です。新型コロナウィルス禍の中では、オペラ公演もソーシャル・ディスタンシングを余儀なくされるということなのでしょう。



今回の席は左手前方でしたので、オーケストラの配置はほとんど見えません。たぶん、左から第1ヴァイオリン(6)、第2ヴァイオリン(5)、チェロ(4)、ヴィオラ(4)、右手奥にコントラバス(2) で、 6-5-4-4-2 という、いつもの弦楽五部より縮小した形だったのではと想像しています。正面奥に管楽器とティンパニが位置しているようで、たぶんフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット各2?、それにティンパニという楽器編成でしょうか。レチタティーヴォではピアノもあるらしいんだけれど、どこにあるのか全く見えません(^o^)/

ステージ正面には、映像としてはじめはイメージ映像、歌が始まるとイタリア語の歌詞の意味が字幕で表示されるしくみで、これはわかりやすいです。

司会とナレーター役として、フリーアナウンサーの板垣幸江さんが登場、相変わらずの名司会ぶりに加えて、オペラのあらすじを簡潔にわかりやすく紹介してくれます。
第1部「フィガロの結婚」から、今回は曲順を少し変更して、

  • 序曲
  • 第17曲 ひどいぞ!なぜこんなに (スザンナ、伯爵)  鈴木洋子、藤野祐一
  • 第11曲 愛の神よ、安らぎを与えたまえ (伯爵夫人)  真下祐子
  • 第12曲 恋とはどんなものだろう (ケルビーノ)    松浦恵
  • 第10曲 もう飛ぶまいぞこの蝶々 (フィガロ)     鈴木集
  • 第5曲 さあ、そちら様がどうぞ (スザンナ、マルチェリーナ) 大沼麻子、渡邊みづき
  • 第21曲 そよ風にのせて(手紙の二重唱) (スザンナ、伯爵夫人) 佐藤美喜子、真下祐子
  • 第28曲 とうとうその時が来た〜恋人よ早くここへ (スザンナ) 佐藤美喜子
  • 第1曲 5・・10・・20 (スザンナ、フィガロ) 鈴木洋子、鈴木集
  • 第29曲 妻よ、許してください【最終景】       出演者全員

序曲が始まると、山響のモーツァルト演奏には楽しさとワクワク感があり、やっぱりいいなあ。歌い手の皆さんは、若い人もベテランもそれぞれ持ち味を発揮して、良かった。とくに明るいフィナーレの直前、モーツァルトの和解の音楽は、どうしてこうもしみじみと素晴らしいのだろう!

休憩の後、第2部「コジ・ファン・トゥッテ」は、だいぶ前に東根市で公演を観たことがありますので、ストーリーはよく承知していますし重唱に聴きどころが多いことも実感しているところですが、さて今回は

  • 序曲
  • 第4曲 妹よ見てちょうだい (フィオルディリージ、ドラベッラ) 真下祐子、越後桂
  • 第13曲 かわいいデスピーナ! (フィオルディリージ、ドラベッラ、デスピーナ、フェランド、グリエルモ、ドン・アルフォンゾ) 藤野恵美子、越後桂、深瀬浩子、佐藤祐貴、鈴木集、藤野祐一
  • 第14曲 岩のように動かず (フィオルディリージ) 藤野恵美子
  • 第17曲 愛の息吹き (フェランド)        佐藤祐貴
  • 第19曲 女も15になれば (デスピーナ)      大沼麻子
  • 第23曲 この心を受け取って (ドラベッラ、グリエルモ) 松浦めぐみ、鈴木集
  • あなた様にお辞儀します、美しいお嬢様【最終景】 出演者全員

うん、やっぱり重唱が素晴らしい。こましゃくれたデスピーナの歌も楽しいけれど、二重唱、三重唱、六重唱など、異なる人物がそれぞれの感情や思惑を別々に表現しながら声のアンサンブルとなるモーツァルトの音楽が、ほんとに見事で、いいなあ。

いや〜、楽しかった。妻と二人、久々にオペラ、声楽を楽しみました。新型コロナウィルス禍の中で、ともすれば置き去りにされがちな「声」の音楽。信頼と共感に基礎をおく音楽の分野なのに、感染を恐れて疑惑と排除の目にさらされがちな今日この頃、緊急事態宣言のさなかの大都市ではできない公演が、感染者数のごく少ない田舎では可能だということを示した公演でもありました。

(*1):山形オペラ協会〜公式ホームページ

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新型コロナウィルス禍の年、オペラ歌手パトリシア・ヤネチコヴァの近況

2020年12月07日 06時01分54秒 | -オペラ・声楽
新型コロナウィルス禍の中、2020年は演奏家の皆さんもだいぶ不自由を強いられたことでしょう。以前、取り上げたオペラ歌手パトリシア・ヤネチコヴァさん(*1)が、自身の YouTube チャンネルに自宅の音楽室と思われる動画を投稿していました。もしかすると感染拡大で演奏会がキャンセルされた時期に、こうしたプライベート収録を行っていたのでしょうか。

スロバキアの作曲家、ミクラス・シュナイダー・トルナスキー(1881〜1958)(*2)の曲のようです。2020年10月、ヤネチコヴァさん本人の投稿みたい。
Patricia Janečková - M.Sch. Trnavský: Zo srdca - V našom dvore na javore


次はロッシーニ。やはり2020年10月、ご本人の投稿。
Patricia Janečková - G. Rossini: Petite Messe Solenelle - Crucifixus


ヴィヴァルディ、ヘンデル、モーツァルトなど、チェコ北東部の年、オパヴァにおける演奏会風景。こちらはご本人によるものではないようですが、2020年8月の投稿。全員ではないものの、マスク姿の聴衆が2020年のリアルな現状を表しています。
2020 - Patrícia Janečková - Concert in Opava


12月に入り、クリスマスも近づきました。街は賑わいも少なく例年のような雰囲気ではありませんが、逆に静かに音楽を聴くにはよいのかもしれません。

(*1):へぇ〜、そうなんだ!〜パトリシア・ヤネチコヴァのこと〜「電網郊外散歩道」2019年10月
(*2):Mikuláš Schneider-Trnavský〜Wikipedia より、標準カトリック讃美歌集を編集した人のようです。

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プッチーニの歌劇「トゥーランドット」を観、聴く

2020年11月01日 06時02分15秒 | -オペラ・声楽
まずは痛恨の大失敗から。私の手帳には、15時開演とメモしてあったのですよ。もちろん、私の思い込みによるうっかりミス。老母に晩御飯も作り、万全の態勢で出かけて駐車場に車を入れたのが14時、コンビニでのど飴などを買って、余裕だなと思っていたのです。そうしたら、「まさかの」14時開演! チケットを確認したら、たしかに14時と書いてある。嗚呼!
何の話かというと、妻と二人でプッチーニの歌劇「トゥーランドット」を観に出かけたのです。

気を取り直して、第二幕から入場。新県民ホールはステージ前にオーケストラピットを設け、ステージ両側に日本語字幕、正面上部に英語字幕を準備してあり、原語イタリア語には全く疎い素人音楽愛好家にもわかりやすい配慮です。うん、これなら古いレーザーディスクの字幕よりも大きくて字が読みやすいかも(^o^)/

第一幕のあらすじを簡単に紹介すると、ダッタンの王子カラフは、中国の都・北京で、戦火で離れ離れになっていた父王ティムールと女奴隷の召使リューと再開し、喜びに浸りますが、その頃の北京はなんとも残酷なことになっていました。皇帝の娘トゥーランドット姫に求婚した外国王族の王子は、姫の出す三つの謎に挑戦し、解けない場合は惨殺されるというのです。王子カラフは、姫の美貌にポーッとなり、父とリューの反対にもかかわらず、謎に挑戦することにしてしまいます。



で、第二幕です。三人の大臣ピン、パン、ポンがおかしみのある幕間劇を演じます。今はトゥーランドット姫に求婚し謎解きに敗れた外国の王族の処刑に明け暮れる日々、「こんな仕事やだ〜」「故郷へ帰りたい〜」といった心境でしょうか。
一転して謎解きの場面。何やら三人の女性ダンサーが宙吊りになり、死と亡霊を象徴する怪奇幻想趣味の情緒を漂わせる中でトゥーランドット姫が登場。アリア「この宮殿で、幾千年もの昔」を歌います。そんな大昔の話を持ち出して、求婚する若者を次々に処刑するなんて、私なら先天的に残虐無道な姫なのではなかろうかと疑うところですが、王子カラフは自信満々、謎解きに挑戦し三問とも正解します。姫はうろたえ、「こんな人と結婚するなんて嫌よ!」と父(皇帝)に訴えますが、「約束は神聖」と拒絶され、カラフを憎みます。王子カラフは、逆に「私の名前は?」という謎を出し、夜明けまでを期限に命を投げ出します。姫とカラフの二重唱、地を這うような低音が不気味さを示すオーケストラの響きなどが印象的な第二幕です。

幕間の休憩の後、第三幕です。トゥーランドット姫は住民に恐怖のお触れを出しますが、それは王子の名を明らかにできなければ住民を死刑にするとの無茶苦茶なものでした。三人の大臣は、カラフに財宝や美女など様々な誘惑を持ちかけますが、カラフはこれを拒絶。「誰も寝てはならぬ」を歌い、勝利を確信します。ところが、カラフと一緒に話をしていたという住民の密告があって父ティムールと召使リューが捕らえられ引き立てられてきます。拷問により口を割らせると脅すトゥーランドット、王子の名を知っているが言わない、それは愛ゆえにと「氷のような姫君の心も」を歌い、自ら死を選ぶリュー。カラフよりも父ティムールの悲嘆と哀惜の歌が胸に迫ります。葬送の音楽に続くのは、カラフとトゥーランドットの心理ドラマを描く音楽です。

まあ、王子が接吻すると氷のような姫の心も溶け去るというのは、昔のステレオタイプなロマンス話の定番ですからそれほど呆れはしませんで、荒唐無稽な物語でもちゃんと音楽として成り立たせてしまう全曲の幕切れは立派なものでした。鳴り止まない拍手、カーテンコールでは聴衆が起立して関係した皆さんを讃えます。本当は「ブラヴォー!」の声が多数かかるところですが、「ブラボー・タオル」を掲げて意思表示している方が大勢いました。全く同感、妻と二人で、良かったね〜と話しながらホールを後にしました。



今回の公演は、演出と振付の大島早紀子さんの意図で、コンテンポラリー・ダンスが取り入れられたところが特徴だろうと思います。実際、怪奇幻想小説のような雰囲気を全編に漂わせているところは、手元にあるレーザーディスク(ゼフィレッリ演出)のものとも違う、独自の雰囲気を持ったものだと感じましたし、歌唱も演奏も素晴らしいものでした。ほんとに良かったと思います。

とりわけ心に残ったのは、リューの死を悼む老王ティムールの嘆きです。国を追われ、眼が見えなくなった無力な老人を一途な心で世話をしてくれたリューを、息子の行動で死なせてしまった哀惜と絶望、複雑な感情を隠して歌われる名場面。おそらく私が若い頃だったならば、この嘆きの歌を素通りしてしまっただろうと思いますが、年輪を重ねてはじめて観念としてではなく実感として理解共感できるのではなかろうか。思わずうるっときてしまいました。もしかすると老王ティムールは、女癖の悪い夫プッチーニと不倫をしていると疑った妻が自殺に追い込んだ小間使いを悼む、60代半ばの作曲家自身の姿なのかも。加藤浩子さんによる作品解説から、そんな想像をしてしまいました。

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10月末のプッチーニ「トゥーランドット」公演チケットを入手

2020年09月19日 06時03分34秒 | -オペラ・声楽
先日の山響定期で、プッチーニの歌劇「トゥーランドット」のチケット(*1)がまだ入手可能であると聞き、県民ホールチケットデスクに電話で問い合わせてみました。すると、一番高いSS席と一番安いX席などはすでに完売しているけれど、S席、A席、B席はまだ残があるとのこと。早速S席を2枚、申し込みました。もう1枚は、いつもお弁当を作ってくれて、元気老母のお相手をしてくれる妻へのプレゼントです。

過日、通勤の帰りに山形市に寄り道し、新県民ホールの事務室で、10月31日に予定されているプッチーニの歌劇「トゥーランドット」のチケットを購入して来ました。車で行った関係で駐車代の小銭があるか心配しましたが、それほど時間もかからず30分未満で用件はすみましたので、駐車料金は無料。その代わり、城南陸橋付近が工事中のため激混み状態で、久々に山形市内の渋滞に巻き込まれて往生しました(^o^;)>poripori



帰ってから公演のチラシをよく見たら、出演者の中に「リュー:砂川涼子」さんのお名前を見つけました。「ボエーム」で可憐な中に芯のあるミミを演じた2007年の公演を録画で再聴(*2)して感銘を受けたばかりです。以前、エヴァ・マールトンがトゥーランドットを演じたレーザーディスクでこのオペラを観ていますが、王子カラフは、リューの犠牲を前にしながら、なんで冷酷なトゥーランドットに心を寄せるの? まったく女性を見る目がないねと不思議でしたが、さて今回はどうか。

(*1):グランドオペラ共同制作「トゥーランドット」〜山響ホームページより
(*2):録画DVDで砂川涼子等が歌うプッチーニ「ラ・ボエーム」を聴く〜「電網郊外散歩道」2020年5月

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録画DVDで砂川涼子等が歌うプッチーニ「ラ・ボエーム」を聴く

2020年05月07日 06時01分43秒 | -オペラ・声楽
日中は快適な気温でも、朝晩は少し肌寒いものですから、夜は古い録画を引っ張り出してあれこれ観ることになります。映画で「レベッカ」など古いモノクロ作品を手にとってはみたものの、ちょいと季節感には合わないかも。で、結局選んだのは、だいぶ前に録画していたNHK「芸術劇場」で、藤原歌劇団によるプッチーニ「ラ・ボエーム」。岩田達宗さんが演出し、砂川涼子さんがミミを歌った2007年の公演です。たしか、この時が森田美由紀アナウンサーの最終回だったはず。YouTube にも動画がありました。

森田美由紀 - 砂川涼子 & 岩田達宗 - ボエーム 2007


砂川涼子 - 私の名はミミ - ボエーム 2007


お金で愛は買えないけれど、お金が愛を潤すことができるのは確かです。健康保険もなさそうな1830年代のパリで、ミミが苦しんだ肺結核も怖い病気だったことでしょう。
番組を全部観ましたが、演出も、出演者も、若さがあふれる舞台です。いいなあ! 
そういえば、録画したあの頃(*1)は、13年後に新型コロナウィルスなどというものによって、演奏会も映画もレストランもみな延期や中止や休業になるなんて思いもしなかった。

(*1):NHKの芸術劇場で藤原歌劇団の「ボエーム」を観る〜「電網郊外散歩道」2007年4月

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へぇ〜そうなんだ!〜パトリシア・ヤネチコヴァのこと

2019年10月20日 06時04分02秒 | -オペラ・声楽
先の演奏会で聴いた曲目、レハールの喜歌劇「ジュディッタ」から「熱き口づけ」をネット上で探しているうちに見つけたのが、パトリシア・ヤネチコヴァ(Patricia Janečková)が歌った動画(*1)でした。このソプラノについて、Wikipediaの説明(*2)を眺めていたら、「ドイツ出身スロバキア人のオペラ・ソプラノ歌手」との記述の後に、「チェコスロバキアのテレビ番組タレントマニアにおいて2010年11月に優勝」し、その後テレビ放送を通じて有名になったとあります。へぇ〜、そうなんだ! ポール・ポッツやスーザン・ボイルみたいなものか〜。野次馬根性で、検索してみました。

Patricia Janečková talentmania

で、見つけたのがこれ。12歳です。
Patrícia Janečková First Audition,12, Amazing Pure Tone So Beautiful!! | "TIME TO SAY GOODBYE"

技術的には未完成でしょうが、いやはや堂々たるものです。

そしてスーパーフィナーレでの歌唱。
Patrícia Janečková - O mio babbino caro - SUPERFINÁLE Talentmania


テレビ番組で優勝して、小学校に戻り、歓迎される様子まであります(^o^)/
Patrícia Janečková coming to primary school

チェコスロバキアの小学校の様子も興味深いところ。

2011年、セザール・フランクを歌います。13歳。
2011 - Patricia Janečková, Eva Hornyáková - Panis Angelicus (C. Franck)


2013年、15歳。モーツァルトを歌います。
Patricia JANEČKOVÁ & Eva DŘÍZGOVÁ JIRUŠOVÁ: Canzonetta sull´ aria (W. A. Mozart)


2016年のオッフェンバック、ロッシーニ。18歳です。
Patricia JANEČKOVÁ: "Les oiseaux dans la charmille" (Jacques Offenbach - Les contes d' Hoffmann)

Patricia Janečková - Rossini Arias - The Gong - Ostrava - 2016


ヨハン・シュトラウスII世のワルツ「春の声」。2016年、18歳の動画もありましたが、権利関係の問題があるようで、挿入できないみたいです。
レパートリーも、彼女の声質にあったものが選ばれてきているみたい。精進の成果が明らかですね。

最近の様子は、YouTube の彼女のチャンネルから観ることができるようです。

いやはや、思わずミーハー精神が爆発してしまいました。
若い人がチャンスを活かし精進して才能を発揮するのを見るのは嬉しいものです。その意味では、たしかに「恩赦よりも奨学金の免除」のほうが望ましいのは確かだな(^o^)/



今夜は文翔館にて山形弦楽四重奏団(*3)の第73回定期演奏会の予定。シューベルトのピアノ五重奏曲「鱒」ほか。

(*1):「日露交歓コンサート2019」の新聞記事とYouTubeからいくつか〜「電網郊外散歩道」2019年10月
(*2):パトリシア・ヤネチコヴァ〜Wikipediaの解説
(*3):山形弦楽四重奏団

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