大寒も過ぎて、例年ならば積雪の中を慎重に歩かなければいけない時期なのに、なぜか今年は全く雪がない冬です。演奏会に出かけるにはありがたいことで、通常の速度で車を走らせ、山形市の文翔館議場ホールに向かいました。山形弦楽四重奏団第74回定期演奏会です。第2ヴァイオリンが退団し、現在3人となっている同団ですが、しばらくは無理にメンバーを補充せず、逆に通常のカルテットではなかなか取り上げにくい弦楽三重奏曲や他の楽器を加えた四重奏曲をプログラムに加えて活動しています。おかげで、めったに聴けない曲の実演に接することができ、貴重な機会となっています。
例えば今回のプログラムは;
というものです。もちろん、全ての曲がほぼ初めて聴く音楽ばかり(^o^)/ これを聴かずにいられようか、いや、ない(^o^)/
プレコンサートは、山形大学地域教育文化学部に在籍する学生さんで、Vn:松井陽菜代、Vla:平山燎のお二人が、シベリウスの二重奏曲を演奏しました。松井さんは2017年10月の第65回以来か、平山さんは2018年10月以来かもしれません。とても安定した演奏で、進歩を感じました。
1曲め、ベートーヴェンの弦楽三重奏曲第2番です。プログラムノートによれば、出版の関係で第2番となったものの、作曲順序からいえばOp.3とOp.8に続く三曲目になるのだとか。Op.9は弦楽三重奏曲の三曲セットのようですし、そのトップに来るのですから、若い作曲家にとっては自信作と言えましょう。実際に、全体に明るい曲調の中にしっとりとした情感もあり、若いベートーヴェンの魅力を感じさせる音楽です。第1楽章:アダージョ〜アレグロ・コン・ブリオ、第2楽章:アダージョ、マ・ノン・タント(あまり甚だしくなく)、エ・カンタービレ。第3楽章:スケルツォ、アレグロ。第4楽章:プレスト。
2曲め、1931年生まれで存命らしいスイスの作曲家ケルターボーンの作品です。チェロがお休みで、ステージ左からヴァイオリンとヴィオラとクラリネットの三重奏となります。5つの曲からなり、それぞれ I:エレジー、II:セレナータ、III:ノットゥルノ(自由に、ややテンポを動かして)、IV:間奏曲、V:Nachklang(余韻?共鳴?)と題されています。作曲年代は1959年といいますからいわゆる「現代音楽」の作品ということになりますが、不協和音満載の耳に痛いようなタイプではありません。特に後半の2曲では弦楽器が弱音器を付けて演奏する中で、クラリネットも小さな音と大きめな音、低く太い音と優しい高い音を対比するように、それぞれの楽器の響きと静かな間が交互に展開されます。へんな喩えですが、ウィスキーの瓶の中に帆船が入っているボトルシップを三人で組み立てている様子を観察するような音楽です。
ここで15分の休憩。ポピュラーな曲目ではないにもかかわらず、お客様がけっこう入っています。最前列には制服の高校生も何人か見かけましたが、山響首席クラリネット奏者・川上一道さん目当ての吹奏楽部員でしょうか。あの音色、音楽性を聴くと、思わず追っかけをしたくなる女子高生の気持ちはよく理解できます(^o^)/
3曲めは、クルッセルのクラリネット四重奏曲第1番。2011年4月の第39回定期演奏会で第2番を聴いています(*1)ので、クルッセルの作品としては二度目です。クルッセルという作曲家は、Wikipedia では「クルーセル」で出ています(*2)が、1775年にフィンランドに生まれた古典派の作曲家で、スウェーデンを中心に活躍したようです。始めはクラリネットの奏者として知られ、後に作曲に転じ、クラリネットを用いた室内楽や協奏曲のほか、声楽や舞台音楽、またモーツァルト等のオペラをスウェーデン語に翻訳上演するなどの業績もあるとのことです。
第1楽章:ポコ・アダージョ〜アレグロ。弦の序奏?の後に登場するクラリネットが快活で活発で魅力的なこと! 第2楽章:ロマンツェ・カンタービレ。優しく歌うような音楽。こういう音楽では、クラリネットと共に、弦の魅力を強く感じます。第3楽章:メヌエット、クラリネットがリズミカルに。第4楽章:ロンド、アレグロ・ヴィヴァーチェ。速いテンポで演奏される終曲は、古典派の聴き慣れた様式のありがたさを感じる、楽しく晴れやかな音楽です。後ろの席から「ブラヴォ!」が飛び、大きな拍手が贈られました。まったく同感です。
拍手にこたえて、アンコールは同じクルッセルの第2番ハ短調から第3楽章を。弦の親密な響きの中で、弱音で歌うクラリネットの魅力を堪能しました。
結成以来20年の歴史を積み重ねてきた山形弦楽四重奏団の第75回定期演奏会は、4月17日(金)、18時45分から、同じく文翔館議場ホールにて。この件、さっそく手帳に記載しました。
(*1):山形弦楽四重奏団第39回定期演奏会を聴く〜「電網郊外散歩道」2011年4月
(*2):ベルンハルト・クルーセル〜Wikipediaの解説
例えば今回のプログラムは;
- ベートーヴェン 弦楽三重奏曲第2番 ト長調 Op.9-1
- ケルターボーン 叙情的室内音楽〜クラリネット・ヴァイオリン・ヴィオラのための〜
- クルッセル クラリネット四重奏曲第1番 変ホ長調 Op.2-1
クラリネット:川上一道、山形弦楽四重奏団(Vn:中島光之、Vla:倉田譲、Vc:茂木明人)
というものです。もちろん、全ての曲がほぼ初めて聴く音楽ばかり(^o^)/ これを聴かずにいられようか、いや、ない(^o^)/
プレコンサートは、山形大学地域教育文化学部に在籍する学生さんで、Vn:松井陽菜代、Vla:平山燎のお二人が、シベリウスの二重奏曲を演奏しました。松井さんは2017年10月の第65回以来か、平山さんは2018年10月以来かもしれません。とても安定した演奏で、進歩を感じました。
1曲め、ベートーヴェンの弦楽三重奏曲第2番です。プログラムノートによれば、出版の関係で第2番となったものの、作曲順序からいえばOp.3とOp.8に続く三曲目になるのだとか。Op.9は弦楽三重奏曲の三曲セットのようですし、そのトップに来るのですから、若い作曲家にとっては自信作と言えましょう。実際に、全体に明るい曲調の中にしっとりとした情感もあり、若いベートーヴェンの魅力を感じさせる音楽です。第1楽章:アダージョ〜アレグロ・コン・ブリオ、第2楽章:アダージョ、マ・ノン・タント(あまり甚だしくなく)、エ・カンタービレ。第3楽章:スケルツォ、アレグロ。第4楽章:プレスト。
2曲め、1931年生まれで存命らしいスイスの作曲家ケルターボーンの作品です。チェロがお休みで、ステージ左からヴァイオリンとヴィオラとクラリネットの三重奏となります。5つの曲からなり、それぞれ I:エレジー、II:セレナータ、III:ノットゥルノ(自由に、ややテンポを動かして)、IV:間奏曲、V:Nachklang(余韻?共鳴?)と題されています。作曲年代は1959年といいますからいわゆる「現代音楽」の作品ということになりますが、不協和音満載の耳に痛いようなタイプではありません。特に後半の2曲では弦楽器が弱音器を付けて演奏する中で、クラリネットも小さな音と大きめな音、低く太い音と優しい高い音を対比するように、それぞれの楽器の響きと静かな間が交互に展開されます。へんな喩えですが、ウィスキーの瓶の中に帆船が入っているボトルシップを三人で組み立てている様子を観察するような音楽です。
ここで15分の休憩。ポピュラーな曲目ではないにもかかわらず、お客様がけっこう入っています。最前列には制服の高校生も何人か見かけましたが、山響首席クラリネット奏者・川上一道さん目当ての吹奏楽部員でしょうか。あの音色、音楽性を聴くと、思わず追っかけをしたくなる女子高生の気持ちはよく理解できます(^o^)/
3曲めは、クルッセルのクラリネット四重奏曲第1番。2011年4月の第39回定期演奏会で第2番を聴いています(*1)ので、クルッセルの作品としては二度目です。クルッセルという作曲家は、Wikipedia では「クルーセル」で出ています(*2)が、1775年にフィンランドに生まれた古典派の作曲家で、スウェーデンを中心に活躍したようです。始めはクラリネットの奏者として知られ、後に作曲に転じ、クラリネットを用いた室内楽や協奏曲のほか、声楽や舞台音楽、またモーツァルト等のオペラをスウェーデン語に翻訳上演するなどの業績もあるとのことです。
第1楽章:ポコ・アダージョ〜アレグロ。弦の序奏?の後に登場するクラリネットが快活で活発で魅力的なこと! 第2楽章:ロマンツェ・カンタービレ。優しく歌うような音楽。こういう音楽では、クラリネットと共に、弦の魅力を強く感じます。第3楽章:メヌエット、クラリネットがリズミカルに。第4楽章:ロンド、アレグロ・ヴィヴァーチェ。速いテンポで演奏される終曲は、古典派の聴き慣れた様式のありがたさを感じる、楽しく晴れやかな音楽です。後ろの席から「ブラヴォ!」が飛び、大きな拍手が贈られました。まったく同感です。
拍手にこたえて、アンコールは同じクルッセルの第2番ハ短調から第3楽章を。弦の親密な響きの中で、弱音で歌うクラリネットの魅力を堪能しました。
結成以来20年の歴史を積み重ねてきた山形弦楽四重奏団の第75回定期演奏会は、4月17日(金)、18時45分から、同じく文翔館議場ホールにて。この件、さっそく手帳に記載しました。
(*1):山形弦楽四重奏団第39回定期演奏会を聴く〜「電網郊外散歩道」2011年4月
(*2):ベルンハルト・クルーセル〜Wikipediaの解説
日程を考えれば難しかったのですが、やはり聴きに行きたかったですね〜。
山形にお住まいの強みです。
プレコンサートに出演された山大生お二人の成長が嬉しいです。
プレコンサートのお二人、もしかすると私が到着するのが遅くて聴けなかった回があり、そのときに出演機会があったのかもしれません。若い人の成長は嬉しいものですね。
string torio conpleteのCDを購入しました。正に初期のベートーベンは想像以上でした。
あまり聴かれないのが不思議ですね。
こんな事から公式デビューのop.1は何だったのかと探したところピアノ三重奏曲第一番がop.1-1で交響曲第三番と同じ変ホ長調であることにビックリ、将来を彷彿させるような調べです。
https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/e2b53d1a2d99137b6b276fd6be1a7a47
また、Op.1はご指摘通りピアノ三重奏曲です。こちらも魅力的な音楽です。
https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/7365b81f8dc055d435957cc57579cd43
ピアノ・ソナタ第1番は聴いた事が無かったので早速トライしてみました。
そうですね、フレッシュですね。その中にも中期以降に繋がるような趣があります。
今年はベートーベン生誕250年で多様な演奏が有りそうで楽しみにしております。
そういえば、1970年がベートーヴェンの生誕200年で、音楽雑誌などでも特集が組まれたものでしたが、今年は250年なのですね。当地でも何か特別な企画があるのでしょうか、楽しみです。