「世界遺産 ポンペイの壁画展(La pittura parietale romana a Pompei)」に行ってきました(2016.5.6)@森アーツギャラリー
スタイリッシュな六本木ヒルズの52階のエレベーターを降りて 森アーツセンターギャラリーに入ると そこはもう「ポンペイ」だった...
「六本木ヒルズに出現する古代空間 2000年前へのタイムスリップ」と称した壁画の数々
入り口すぐの大スクリーンに映し出される 紀元後79年ヴェスビオス火山の大噴火の映画のシーン その横には広い展示スペースにこの時代さながらに列柱が建ち そこから「ポンペイの壁画展」は始まっていた
2014年10月にイタリア人の友人たちと初めて訪ねたポンペイ そしてナポリ考古学博物館(museo archeologico Nazionale di Napoli) そこから日本にやってきた壁画の数々
この重くて貴重な壁画をよく日本に持ってきたと 実に感慨深いものがあります(展示の様子がHPから見られます)...修復のあとが激しいものもあるよね
見ているうちにふと突然不思議な感動に襲われ 涙が出そうになった
これは初めてナポリに行った時に飛行機の窓から見た きらきら光るナポリの夜の街の中に突然現れた黒々とした深い闇が ヴェスビオス火山だとわかった時に感じたものと似ている
圧倒的な自然の威力 そして今回は 永い時と場所を超えて目の前にやってきた歴史との再会だ
* * *
第Ⅰ部「建築と風景」
エジプト青というフレスコ画の顔料はとても高価なもので 鮮やかな明るいブルー それを使った天井装飾や壁面装飾(トッレ・デル・グレコの海岸別荘)
第1様式は 漆喰に描かれた初期のもので 第2様式はだまし絵や遠近法 第3様式は非現実的で装飾的 第4様式はネロの黄金宮など紀元後50年頃のもの (詳しくは HPで解説が聞けます)
最初の「赤い建築を描いた壁面装飾」はスイスに不法持ち出しされて戻ってきたものとのこと
壁画の道具も展示されており 壁の厚さを計るキャリバスという道具やコンパス 色々な顔料等が展示されていた なかなかに興味深い
第Ⅱ部 日常の生活
ポンペイ監督局 (Soprintendenza Pomei)はポンペイの遺跡の修復や発掘 そして劣化と崩壊から守るための最前線の大規模プロジェクトを担っているという
ここのHPを早速見たら "Grande Progetto Pompei"というプロジェクトがトップにあった これのことだ
第Ⅱ部ではまず最初に「カルミアーノ農園別荘」*のトリクリニウム(大食堂)が再現されており 壁画を一連の空間装飾として再現したものだそうだ こういう場所で食べていたんですね~
この時代の人々は午前中だけ働き 重労働は奴隷にまかせ 午後は様々な文化談義 夜は宴という生活だったそうです (帰宅してつけたEテレでたまたま「ローマ帝国」「ポンペイ」をやっていて 笑っちゃうくらいグッドタイミング♪)
*当時の人々の美意識とスケール感を共有できるように「カルミアーノの農園別荘」と呼ばれる建物の一室を立体展示で再構成し ポンペイの赤(pompei red)が象徴的な16枚のパネルを2000年前さながらに鑑賞できる
ドムス(domus)は町中の家で ヴィッラ(villa)は待ちの外の別荘です ポンペイには葡萄畑がありたくさんのヴィッラがありました
第Ⅲ部 神話
壁画のテーマはギリシャ神話が多く ギリシャ神話のおさらいもできました(*^^)v
ナルキッソスが水仙になる直前の死の瞬間を描いた「ナルキッソス」のフレスコ画とか
クレタ王の娘の「アリアドネを見つけるディオニソス」(アリアドネはテセウスに失恋したところをディオニソスに発見され見初められる)
「カッサンドラの予言」(アポロによりカッサンドラの予言は決して聞き入れられないという呪いをかけられ トロイア戦争の予言はとうとう誰も信じなかった)
「蛇を絞め殺す赤ん坊のヘラクレス」とか(実はゼウスの子供、もう一人の兄弟は普通の赤ん坊)
そしてメインの3作品: 「ケイロンによるアキレウスの教育」これはキターラ(竪琴)を教えているシーン 「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」(これが今回の目玉作品で500キロもある!*) 「テセウスのミノタウルス退治」(修復のあとが激しい)
*「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」: 英雄ヘラクレスはアルカディア地方の王女アウゲに生ませた子テレフォスと偶然遭遇する
テレフォスはパルテニオン山に捨てられ 牝鹿(めじか)の乳で育てられていた
これらの壁画が間近で見られるなんて!! いや~2年前にナポリ考古学博物館で見たはずなんですが...(高校の世界史の教科書に載っているアレクサンダ-大王の「イッソスの戦い」の
モザイク画は覚えているんだけど)
これら3点は少し丸みをおびた形のため 保存も大変だったろうと思う
「ダナエとペルセウスのセリフォス島漂着」 これはダナエの父王が ダナエの子にやがて殺されると予言をされたため娘と孫を捨てるも漂着し生き延びる話でしたね
第Ⅳ部 神々と信仰
ここの最初に 小プリニウスの記録を元に再現された大噴火の映像があり 第5火砕流まであったと知る (溶岩はlava) この小プリニウスの漫画を制作中のヤマザキマリさんの本も売店コーナーで売っていました (前述のEテレでもこの漫画が出ていた!)
イシスはクレオパトラの守護神だったため エジプトと敵対していたローマでは疎まれていた
トロパエムとはトロフィーの語源で形もトロフィーの原型のような感じ
「横たわるマイナス」(ディオニソスの信者)は 30年間も行方不明で2008年に発見されたらしい
ポンペイの遺跡が きちんと将来にわたって保存されてゆくことを願わずにはいられません...
* * *
GWの終わった翌日を狙って行ったので だいぶすいていてゆっくり見られました!
前日受けた「イタリアの世界遺産」のレッスンで ポンペイの遺跡が存続の危機にあるかもしれない(世界遺産剥奪の可能性等)との話を聞いて 今のポンペイの遺跡の抱える問題を色々知った上で見ると 開会の挨拶のパネルを読んでも胸にこたえるものがあり 展示の見方も随分違います
昨日のレッスンを受けずに観に来ていたら ここまで感動しなかったと思う 貴重なレッスンに感謝!!
それと 現地で実物を見た時には日本語の説明はなくて (友人が説明してくれたけど) 今回は日本語での詳細な説明があったので 納得しながら鑑賞できたのがよかったネ ^^)
ポンペイに行ったことのある人には特におススメです また今年は日伊国交樹立150周年でたくさんの美術館が日本に来ているけど 絵画鑑賞に少々飽きた方にも全然違うのでおススメです(^^)/
壁画なので保存状態なども修復の痕があり作者も不明なものですが よくぞイタリアから運んできたとの思いでいっぱいです
いつでも見られるわけではないものが 今この2ヶ月だけ 日本に来ているのです
2010年にもポンペイ展が来たのですが 少々遠かったのと忙しくて行かれず後悔していたので 今回は行って本当によかった!!
「世界遺産 ポンペイの壁画展(La pittura parietale romana a Pompei)」(2016.4.29~7.3 は こちら
* 5月28日(土) 29日(日)に 同じ六本木ヒルズでビッグイベント "Italia amore mio!"が開催されます(^^)/
詳しくは こちら
(前売り券は東都生協でいつも注文しています コンビニに行く必要もなくて便利♪)
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