日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「世界に散らばるイタリア系移民 Italian Diaspora Studiesへの招待」に行ってきました(2019.7.9)@イタリア文化会館

2019年07月15日 | イタリア関連の催し
「世界に散らばるイタリア系移民 Italian Diaspora Studiesへの招待」に行ってきました(2019.7.9)@イタリア文化会館  



ひさびさに行くイタリア文化会館では このイベントに来ていたイタリア語仲間たちと再会できて嬉しかったです

内容は イタリア移民の話で明るい話題というわけではないのですが 会場はぎっしり ずっと気になっていた移民問題をあらためて考える機会となりました

モデレーターの栗原俊秀氏(翻訳家)のお話は イタリアブックフェアの本の紹介セミナー 何よりも須賀敦子翻訳賞授賞式(2016年)に参列した時以来です 

栗原氏はカラブリア大学文学部でマルゲリータ・ガネーリ教授の元で学ばれ ジョン・ファンテ カルミネ・アバーテ アマーラ・ラクースなど「イタリアと移民」に関係のある作家を精力的に日本に紹介していらっしゃる翻訳家です
今回が初来日となるガネッリ教授の講義を通して知った作家もいるとのこと 

「ディアスポラ(diaspora/離散者,民族離散)」とは ギリシャ語起源のことばで 「遠ざかってゆくもの、撒き散らされたもの」という意味を持っています 

イタリア系移民」と聞いて思い浮かべるのは やはり映画「ゴッドファーザー」のシチリア系移民のイメージが強いと思いますが シチリア以外からの世界各地にイタリア移民は広がっています

今日においてもなお 世界各地にはイタリア系のコミュニティが点在し 祖父母(あるいは曾祖父母)の記憶や物語を受け継いでいます

大移民時代の第一波はイタリア統一前後 第二派は50 60 70年代の オペライオ(operaio/労働者、工員)の あるいは知識人の移民 そして第3波はここ数年のイタリアに入ってくる移民ですね

移民を送り出してきた州でもあるカラブリア州は人口が少なく(spopolamento) 人口200万人に対して 外国人が8~900万人と3倍とのこと

出生率が0.数%(crescita zero)で 学校が廃校にならないのは 移民の子供たちが通うからとのことでした
移民を受け入れているリア―チェ村などもあります

また 19世紀末~20世紀初めのイタリア系移民の社会的地位は低く 栗原氏が翻訳されたジョン・ファンテの「Dago Red(デイゴ・レッド)」にも描かれているように アメリカンドリームを求めて移住したイタリア人が さまざまな民族的な差別を受けてきたこと 南北の格差も反映していることをお話いただきました 

第2世代はアメリカ人化(americanizatione)せざるをえず イタリア語や文化を捨てなければならなかった第2世代にとって 移民であることは二重のトラウマでした そして第3世代になってようやく アイデンティティ回復の動きが出てくるのですね

次に イタリア系アメリカ文学(letteratura italoamericana)の定義についてお話いただきました 
イタリア系カナダ文学とか イタリア系アルゼンチン文学とか種々ある中で このイタリア系アメリカ文学はアメリカで確立されている分野とのこと 




次にいよいよ 2014年からカラブリア大学で始まった イタリアン・ディアスポラ・スタディーズ(Italian Diaspora Studies)についてご紹介いただきました

これはカラブリア大学のマルゲリータ・ガネーリ教授が2014年に発足させた研究プロジェクトで 世界各地のイタリア系コミュニティやその文化に焦点を当てながら 地理的・時間的に大きな広がりを持つ イタリアの「ディアスポラ(離散者)」について考究するというプロジェクトです

ガネーリ教授が教鞭をとるカラブリア大学では イタリアの国公立大学では唯一 イタリア系アメリカ移民の文化・文学をテーマとした講義が開講されており カラブリア大学は ニューヨーク市立大学のCalandra Italian American Instituteをはじめ 北米のさまざまな研究機関と連携しながら イタリア移民をめぐる国際的な研究拠点を確立しようとしており 地理的・時間的に大きな広がりを持つ イタリアの「ディアスポラ(離散者)」について考究するそうです

今 イタリア人は 昔 移民だった時代のことを忘れており差別的行動をとっているが 国家の枠組みを超えて(trasnazionalità) 視野を広く取り 学問分野をまたがった研究をチームで行いたいとのこと

かつて多くの移民を送り出し 今日にあってはヨーロッパの移民・難民問題の最前線にいるカラブリアは こうしたプロジェクトに取り組むうえで 理想的な土地であるといえるでしょう 

ちなみに移民の数については 大量移民時代は2700万人で 各地に同郷人が大量にコミュニティを作っていました
この半数は大戦後帰国しており ここ数年は毎年24万人前後とのこと 観光ビザで入る不法移民もおり正確な数は難しく また優秀な人の頭脳流出(Cervelli in fuga)のみでは問題は語り切れず さらに年金生活者たち(pensionati)の海外移民の置かれた厳しい状況もお話いただきました 

カラブリア大学のイタリアン・ディアスポラ・スタディーズ(Italian Diaspora Studies)は こちら

世界に散らばるイタリア系移民 Italian Diaspora Studiesへの招待」は こちら

素晴らしいイベントを開催してくださいましたイタリア文化会館様に心よりお礼申し上げます


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