日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

第2回「ヴェールに包まれたキリストと サン・セヴェーロ礼拝堂にある美術品」のセミナーに参加してきました(2018.8.29)@高円寺ピァッツァイタリア

2018年09月04日 | イタリアの美術館・博物館

第2回「ヴェールに包まれたキリストと サン・セヴェーロ礼拝堂にある美術品」のセミナーに参加してきました(2018.8.29)@高円寺ピァッツァイタリア


何年か前に ナポリ在住のイタリア人とサン・セヴェーロ礼拝堂(Cappella Sansevero)に行きとても感動したので このセミナー第2回「ヴェールに包まれたキリストと サン・セヴェーロ礼拝堂にある美術品」に参加してきました!!

第1回は「サン・セヴェーロ礼拝堂と サングロ家の呪われたライモンド王子」(サングロ家の7代目当主ライモンド王子は massoneria/フリーメイソンだったというお話で 残念ですがこちらは欠席しました)
 

このサン・セヴェーロ礼拝堂はなんといってもil Cristo velato/ヴェールに包まれたキリスト像が素晴らしく 
私が友人と行った時も 息を呑む程感動しました 
大理石でベールを掘るなんて...しかも1つの大理石からすべてを彫り出すなんて...どうやって...
また 地下にある「macchine anatomiche(人体解剖像)」の人体解剖のミイラも すごすぎて眠れない程でした~

このサン・セヴェーロ礼拝堂(Cappella Sansevero)は サン・セヴェーロ公家のサングロ(Sangro)家の一族の像等が置かれた 一族を記念するための礼拝堂で 
sconsacrata(神聖さを失った)のため 今は礼拝堂ではなく美術館(Museo Cappella Sansevero)となっています 

入って一番中心にあるのが このCristo velatoの像です 

ライモンド王子(Raimondo di Sangro)が 彫刻家Antonio Corradini/アントニオ・コラディーニに命じて作らせた バロック様式の大理石像なのですが 彼は84才と高齢だったため 
bozzetto(クロッキー) in terracotta(テラコッタ)をもとに もっと若い彫刻家 Giuseppe Sammartino/ジィゥゼッペ・サンマルティーノに彫らせます 

彼はこのbozzetto(クロッキー)は使わずに 3か月で作ったとのこと
80才まで掘り続けていたのですが 伝説によると このキリスト像よりも美しい像を掘れなくするためにaccecare(盲目にする)されたそうですが...? 真実は違うようです

キリストが磔にされた十字架から降ろされ 瀕死の状態で(morente)まだ息があることを表すため 顔にかけられたベール(velo)が 鼻孔(narice)の中に吸い込まれる(息を吸っているため)
また腹(pancia)は引っ込んでいる そして額には vera(静脈)が浮き出ているのですね
 
実物大の大きさで(grandezza naturale) 1つの大理石からすべてを彫り出しましたが 最初は大理石ではなく 本物のベールではないかと思われた程でした
ライモンド公は錬金術師(alchimista)でもあり 色のついた臭い煙が家から出てきたこともあったそうで 人々は 本物のベールを大理石の粉につけて
大理石化(marmorizzazione)したのではないかと疑ったそうですが 正真正銘大理石(marmo)だと証明されています (科学的調査やナポリ銀行の記録等)

そして ペンチと釘(tenaglia e dei chiodi) いばらの冠(corona di spina)も置かれています 
磔(はりつけ)にされた(crocifissione)時の釘の穴(buco)が 手のひらに空いているのですね...

ぐるっとまわって見るとキリストの表情は 苦しみがとれて 静かなものとなっています 同じ像ですが見る方向で変わるのです

ライモンドは1歳の時に母を亡くし 父はヨーロッパ中を旅してまわり放蕩生活を送り のちに修道院に入りました
なのでライモンドは父方の祖父(nonno paterno)に育てられたとのこと この両親の像もここにあります

彼はフリーメイソン(massoneria)に入りますが 真実はなかなかわからないものであり ベール(velo)はそれをシンボライズするとのこと 
床は迷宮(labirinto)になっていますが 迷宮もやはりフリーメイソンの 人生の困難さを表すものだそうです


     *       *       *

次に 礼拝堂にあるたくさんの像を 写真とともにひとつひとつ説明していただきました 特に気に入ったものをここに紹介しますね

ここには 10の美徳と呼ばれる像(一族をモチーフとしたもの)が置かれています 
Capella Sansevero(サン・セヴェーロ礼拝堂) は こちら ← ここの下に
内部の像の配置が No.で示されています そのNo.で位置がわかります

3. Decoro (品格)

これは 3番目の王Giovan Francesco di Sangroの2人の妻にささげられた像です Antonio Corradini作
若者はライオンの頭(野生の自然を表す)を持っていますが これは人間の魂の力は野生の自然を上回ることを象徴しているそうです
また 左右違ったサンダルを履いており 天国と地獄を表しているとのこと

7. Zelo della Religione (宗教の熱意)

これは 初代当主でありこの礼拝堂の創設者Giovan Francesco di Sangroの 2人の妻を記念するための像です
老人が手にするランプ(lampada)は真実の証 また老人は足で蛇(serpente)を踏みつけて(calpestare)います 蛇は異端(eresia)のシンボルですね

9. Soavità del giogo coniugale (婚姻の絆の甘美さ)

息子Vincenzoの妻Gaetana つまり嫁に捧げた像ですが まだ彼女が生きていた時に肖像画を描いたため 素描(abbozzato)のままとなっているのですって 
これは生前にちゃんとした肖像画を描くのはよくないとされていたからだそうです

これは 16. Sincertà 誠実 という ライモンドの妻Carlotta Gaetaniに捧げられた像でも同じで やはり生前に作られたために素描でした

そしてピラミッド(piramide)の形があり これは実はmassoneria(フリーメイソン)のシンボルでもあったのですね
このビラミッドの三角形は この礼拝堂の天井にも描かれていました

彼女は右手に2つの燃える心臓(cuole in fiamme)を持っていて それは夫婦の深い愛情をシンボライズしているのですが 一方左手には
羽毛で覆われたくびき(giogo)を支えていて これは甘美な服従(dolce obbedienza)をシンボライズしているのだそうです

11. Pudicizia (はにかみ) これはライモンドが1歳の時に亡くなった 母親Cecilia Gaetaniに捧げられた像で 
大変美しい大理石の像です 

 ← ライモンドの母の像 Pudicizia

Antonio Corradini
作ですが これを作った年に亡くなっています 彼の代表作(capolavoro)とも言われていますね

この大理石像は 半透明のベール(velo semitrasparente)に覆われた女性の身体を大理石で掘ってあり 私には他のどの像よりも魅力を感じてしまいます 
ベールが女性の身体にぴったりとくっついている自然なさまを彫り出したのです ← さすが母への愛♡

さらに 左手を乗せた 壊れた墓碑(lapide spezzata) そして足元から生えている木々が la morte prematura (早死に)をシンボライズしているのです...
息子ライモンドが1歳の時に亡くなったのからですね... 

14. Disinganno 悟り

この像はライモンドの父(Antonio)に捧げられた像ですが Cristo velato そしてライモンドの母のPudiciziaとともに この礼拝堂の3大作品のひとつなのですね

 ← ライモンドの父の像 Disinganno

il peccato (罪)をあらわすrete(網)から逃れるさま(身体を覆う網をはずそうとしている)を表していますが 
これはライモンドの父が 早くに母を亡くした息子を残して放蕩生活に出たことを指しているのですね (なので ライモンドは父方の祖父に育てられた)
この父親は老いてからナポリに戻り 罪を悔いて修道院(convento)に入ったのです 

この像は intelletto umano(人間知性)のシンボルである putto(プット、大理石の子供像)が 網をはずすのを手伝っています
 
さらにその足元には mondanità (世俗)のシンボルである地球儀(il globo terrestre)があり その地球儀に 
聖書(la bibbia)がたてかけられていますね
この作品にはmassoneria(フリーメイソン)の言及も見られるそうです 入信(inizioazioni)の時に目隠しをされた(bendati)志願者が 目をあけた時に真実がわかるという言及です

最も心を打つ要素は 目の細かい網(la fitta rete)です これは彫刻家Queiroloの熟練のたまものですが この網がまた 本物の網かと見まごう程に精巧で 
実際本物の網に 大理石の粉を漬け込んで固めたのではないかと疑われたそうです (私もそう思っても不思議はないなと思いますね)

さらには この網が完成したあとで 汚れ落としのために掃除をしようとした時に 弟子たちは壊しては大変と皆断り 作者のFrancesco Queirolo(フランチェスコ・クェイローロが 
仕方なく一人で掃除をしたとのことです( ゚Д゚)

第2次大戦でドイツ軍が破壊のためにここに入ってきた時に corda vera (本物のロープ)だと思われて ハンマーで打ったところ ひとかけらが
床に落ちて これは大理石だとわかり破壊を免れたそうですが こんな素晴らしい作品を こ 壊すだなんて 信じられないですよね"(-""-)"

23. Monumento a Cecco de'Sangro チェッコ・デ・サングロのモニュメント 

← Monumento a Cecco de'Sangro

これはFracesco Celebranoの作品で 発想はおそらく前職のQueiroloのものだそうです
甲冑をつけた兵士(un guerriero armato)が 大きな箱(cassa)から出てくる像なのですが これは la rocca di Amiens(アミアンの城塞)を征服した時に
2日間棺(bara)の中で死んだふりをしてから出てきて征服した時のことを描いており かの「トロイアの木馬(il cavallo di Troia)」を連想させるだけではなく 
死と復活(morte e resurrezione)」をも連想させるのですね


最後に ライモンドの肖像画(ritratto di Raimondo di Sangro)が あとからCarlo Amalfi/カルロ・アマルフィによって描かれたのですが 
年を取ってからの肖像画ですが いつ描かれたかは(datazione)定かではないものの 唯一残っている肖像画とのことで さらには 傷んでいる(robinato)のですね
これは 呪われているから(maledetto)という説もありますが(ナポリは迷信が多いのです)  実は 絵の上にガラスの天窓(lucernario in vetro)があり 何世紀も経つうちに 
大気の作用が保存状態を悪化させたのではないか というのが真相のようですね...


また行きたくなりました~サン・セヴェーロ礼拝堂💛  すべての像の説明を聞いたので 今度はひとつひとつちゃんと見たいですね...

素晴らしいセミナーを開催してくださいました ピァッツァイタリア様に心よりお礼申し上げます

サン・セヴェーロ礼拝堂(Cappella Sansevero
)は こちら

紹介記事は こちら

開催のお知らせは こちら

* な なんとプラモをやっているうちの家族が サン・セヴェーロについてよーく知っているとのこと( ゚Д゚) 造形をやる人間なら当然だそうでビックリ!!



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