「生協総研レポートNo.76 イタリアの生協の現状について」を読んで@(財)生協総合研究所
ネットで探し当てた一冊 それは「イタリアの生協の現状について」という(財)生協総合研究所発行の冊子でした
イタリアの生協について色々知りたくて 「サステイナブルなイタリア」のセミナーで面白いお話を聞いてから 「イタリアの共同組合」(緑風出版発行)と「食農分野で躍動する日欧の社会的企業―イタリア発地域の福祉は協同の力で」(経実Book)という2冊の本を買って読んだあと さらにネットで検索してようやくこの本「イタリアの生協の現状について」を入手して...と興味はつきません♪
この本は一般の方も生協関係の方も買えます
またこの(財)生協総合研究所の公開研究会のテーマには「イタリアの協同組合運動、その歴史的背景および政治との関係」なんていうのもあり 外国の生協やその背景についても学べるのですね!!
* * *
Ⅰ イタリアの生協、その苦難の歴史
この内容は前に読んだ「イタリアの協同組合」というぶ厚い本にも書いてありましたが 簡潔でよくわかりました
特に 1985年のフランス生協や1989年のドイツの生協の倒産からイタリアの生協が学んだこと それは1979年からイタリア流通業のトップを築いてから一度もその地位を譲っていないことに現れています
1975年に経済悪化のため多くの生協が危機に陥った中 フィレンツェ生協が独自の改革で危機を脱したこと また1986年にANCC傘下の8大生協の「ハイパー設立のためのコンソーシアム」が結成されたくだり 「Iper Coop」ロゴの共有等... さらに驚いたのは「日本の生協がイタリアの生協の発展に少なからぬ影響を与えた」こと 姉妹提携のお話など 興味はつきません
このあたりについては「サステイナブルなイタリア」のセミナーでもお話伺いました♪
Ⅱ イタリアの生協の現状について
様々な書籍や表を使いながら イタリアの生協の現状を紹介しています 2014年現在 イタリアには8万以上の協同組合があり うち4.3万がレーガ・コープ コンフ・コープ AGCIに属しており その合計事業高はGDPの8%に達するといいます
2011年にこの3者によりローマにイタリア協同組合(ACI/ Alleanza delle Cooperative Italiane)が結成されました 組織の統合は2017年を目標とありました *
* ここのHPを見てみると 既に実現されたようです すごい規模ですね!
社会的協同組合について AタイプとBタイプの紹介もあり 1854年にトリノで初めての協同組合が設立された話 また日本の生協法とイタリアとの違い 一番大きいのは イタリアには生協に特化した法律はなく 「憲法に協同組合の社会的役割が規定されている」ことでしょう
また 1955年にやはりローマで設立されたイタリア生協連(ANCC/ Associazione Nazionale Cooperative di Consumatori)の傘下には コープイタリア(Coop Italia)というコンソーシアム(事業連合組織) INRES(Istituto Nazionale Consulenza, Progettazione, Ingegneria) そしてなんと生協学校(Scuola Coop)まであったのですね! これも驚きでした 若手職員の育成 生協コンテストなど...
この中にある「日本の生協との比較」の数字は興味深く読ませていただきました♪ イタリアの方が小規模で組合員も日本よりは少ないようですが... ← 少数精鋭ってことかな?
また 生協のガバナンスではフィレンツェ生協が例外として紹介されており 経営陣の代表でつくられる経営委員会のメンバーを 組合員の代表で作られる監視委員会が任命する とありまたまた驚き!! ← フィレンツェすごい(*_*)
そして ウニコープ・フィレンツェの組合員集会の写真を見ると 男性が多い( ゚Д゚) 日本の生協の組合員は殆どが女性ですが イタリアでは男女半々なのですって!! しかも年齢も若めです これにはビックリしました ← イタリアの男性はなんでも積極的? 奥さんまかせにしないのかな? 日本は長時間労働だから...?
イタリアの生協は南部には少なく 不況の影響が深刻な南部には もともと生協の店舗が少なかったため経営悪化を免れた面があるのですね... シチリアが例外と前に読んだ本にはありますがこれは個人組合員がいないのだそうです
生協の店舗にはガソリンスタンドや図書館まで併設されている写真もありました そして出ましたプライベートブランドPB!! ←東都生協にもありますね♪
安全 おいしい 便利 倫理的 環境の 5つの価値に基づいて開発された商品で ターゲットはミドル階級とのこと さらに 価格について特筆すべきは「便利な価格とは最低限の価格ではなく、商品の品質と安全性 倫理性 環境の持続可能性がバランスよく組み合わされた合理的な価格のこと」とのことです
コープイタリアのTVコマーシャルでは 生協の組合員にインタビューをして 低価格と品質どちらを選ぶ?と聞くと「品質」と答えるとのこと
また 「自宅の水」キャンペーンでは ミネラル・ウォーターの 水を瓶詰して輸送することの環境負荷を知らせています 学校での消費者教育活動「Sapere Coop: 生協提供の知識」活動は 9大生協により 30年間も続いているそうです
イタリアのスーパーマーケット・ハイパーマーケット業界のシェアは2013年で Coopが第一位の18.5%とのこと 大手スーパーチェーンのエッセルンガは第3位の11%でした
実に興味深いリポートでした!
Ⅲ ウニコープ・フィレンツェの組合員調査にみるイタリア生協の組合員
これも 自分ならこの組合員アンケートに何と答えるだろうか?と考えながら読ませていただきました
回収率は39%で 特に利用高の高い層とのことですが ウニコープで買う人が99% コープをベースに買う人が65% ただし加入歴は6~15年前後の若い人が多く 日本では半数が20年以上加入している人との記述に納得!! また 生協に求めるものの日伊比較も興味深かったです
Ⅳ イタリア協同組合連盟(Alleanza delle cooperative Italiane)の設立と現在
2012年に3大生協合同で ACI(Alleanza delle cooperative Italiane)が設立されました それについて詳しく述べられています
2002年 ベルルスコーニ政権が突然提起した「協同組合法の改正」について等 Coopの128年の対立の歴史を経て 政治と宗教を乗り越えた過程が詳しく綴られていました
Ⅴ イタリアの協同組合史
イタリア初の1854年にトリノに生まれた生協について詳しく述べられており 当時問題を抱える人々を お金を出し合って支えてゆく SMS(緊急相互扶助協会/Società mutuo soccorso)運動から始まったことが書かれていました 今もこのSMSの施設は中北部に存在しているそうです
この生協の歴史については この前に読んだ「イタリアの協同組合」の本に詳しいのですが ファシズムの暗黒時代を経て 大戦後の1947年に 最初の協同組合法となった「バゼーヴィ法」が制定されました さらにまた1991年には「社会的協同組合法」が成立しました
イタリアの生協について知りたいという思いが セミナー参加や イタリアブックフェアで出会った2冊 そして今回の生協総研リポートの出会いへとつながり お腹いっぱい読みました( ^^) _U~~
追記: 「生活協同組合研究」2015年4月発行 Vol.471の「コープアドリアティカの社会的活動報告書」によると エミリア・ロマーニャ州にあるこの生協では CSR(企業の社会的責任)にかかわる活動を2002年から続けているとのこと 「持続可能性」が追記されたそうです
ミッションとしては 消費者教育 従業員の労働と業績の評価 組合員への商品とサービスの提供 透明性と公平性に基づいた事業活動 持続可能性 地域の社会的経済の発展への寄与 その他色々...
また イタリアならではの マフィアから没収した南イタリアの土地を使い農業を営む社会的協同組合「リベラ・テッラ」の支援活動など...
高齢者や障がい者生活支援 これも日本でも色々な生協で 「くらしの助け合い」運動として展開していますよね!
私もやっていました
昔は生協だけでスーパーにもほとんど行きませんでしたが 今は高くて無理です イタリアの生協は適正価格とのことですが日本の生協はブランド化している気がします
イタリアの生協は意欲的に有機的に活動していることがわかりました イタリアのCoopのこの本に出会えてホントによかったです
「イタリアの生協の現状について」(生協総研レポートNo.76)は こちら
* * *
協同組合はユネスコの無形文化遺産にも登録されています
『協同組合とは、人々が自分たちのねがいを実現するため生み出したしくみ・知恵。7つの協同組合原則が定められており、ユネスコの「無形文化遺産」にも登録されています。協同組合がある国や地域は94か国以上、組合員は世界全体で10億人を超えます。
日本には全国で約560の生協があり2,820万人の組合員が加入し、事業高は約3.4兆円の規模があります。』
詳しくは 生協と社会論 第1回講義概要「現代社会と協同」(公益財団法人 生協総合研究所)
* 写真はフィレンツェのお店 Coopとは関係ありません
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ネットで探し当てた一冊 それは「イタリアの生協の現状について」という(財)生協総合研究所発行の冊子でした
イタリアの生協について色々知りたくて 「サステイナブルなイタリア」のセミナーで面白いお話を聞いてから 「イタリアの共同組合」(緑風出版発行)と「食農分野で躍動する日欧の社会的企業―イタリア発地域の福祉は協同の力で」(経実Book)という2冊の本を買って読んだあと さらにネットで検索してようやくこの本「イタリアの生協の現状について」を入手して...と興味はつきません♪
この本は一般の方も生協関係の方も買えます
またこの(財)生協総合研究所の公開研究会のテーマには「イタリアの協同組合運動、その歴史的背景および政治との関係」なんていうのもあり 外国の生協やその背景についても学べるのですね!!
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Ⅰ イタリアの生協、その苦難の歴史
この内容は前に読んだ「イタリアの協同組合」というぶ厚い本にも書いてありましたが 簡潔でよくわかりました
特に 1985年のフランス生協や1989年のドイツの生協の倒産からイタリアの生協が学んだこと それは1979年からイタリア流通業のトップを築いてから一度もその地位を譲っていないことに現れています
1975年に経済悪化のため多くの生協が危機に陥った中 フィレンツェ生協が独自の改革で危機を脱したこと また1986年にANCC傘下の8大生協の「ハイパー設立のためのコンソーシアム」が結成されたくだり 「Iper Coop」ロゴの共有等... さらに驚いたのは「日本の生協がイタリアの生協の発展に少なからぬ影響を与えた」こと 姉妹提携のお話など 興味はつきません
このあたりについては「サステイナブルなイタリア」のセミナーでもお話伺いました♪
Ⅱ イタリアの生協の現状について
様々な書籍や表を使いながら イタリアの生協の現状を紹介しています 2014年現在 イタリアには8万以上の協同組合があり うち4.3万がレーガ・コープ コンフ・コープ AGCIに属しており その合計事業高はGDPの8%に達するといいます
2011年にこの3者によりローマにイタリア協同組合(ACI/ Alleanza delle Cooperative Italiane)が結成されました 組織の統合は2017年を目標とありました *
* ここのHPを見てみると 既に実現されたようです すごい規模ですね!
社会的協同組合について AタイプとBタイプの紹介もあり 1854年にトリノで初めての協同組合が設立された話 また日本の生協法とイタリアとの違い 一番大きいのは イタリアには生協に特化した法律はなく 「憲法に協同組合の社会的役割が規定されている」ことでしょう
また 1955年にやはりローマで設立されたイタリア生協連(ANCC/ Associazione Nazionale Cooperative di Consumatori)の傘下には コープイタリア(Coop Italia)というコンソーシアム(事業連合組織) INRES(Istituto Nazionale Consulenza, Progettazione, Ingegneria) そしてなんと生協学校(Scuola Coop)まであったのですね! これも驚きでした 若手職員の育成 生協コンテストなど...
この中にある「日本の生協との比較」の数字は興味深く読ませていただきました♪ イタリアの方が小規模で組合員も日本よりは少ないようですが... ← 少数精鋭ってことかな?
また 生協のガバナンスではフィレンツェ生協が例外として紹介されており 経営陣の代表でつくられる経営委員会のメンバーを 組合員の代表で作られる監視委員会が任命する とありまたまた驚き!! ← フィレンツェすごい(*_*)
そして ウニコープ・フィレンツェの組合員集会の写真を見ると 男性が多い( ゚Д゚) 日本の生協の組合員は殆どが女性ですが イタリアでは男女半々なのですって!! しかも年齢も若めです これにはビックリしました ← イタリアの男性はなんでも積極的? 奥さんまかせにしないのかな? 日本は長時間労働だから...?
イタリアの生協は南部には少なく 不況の影響が深刻な南部には もともと生協の店舗が少なかったため経営悪化を免れた面があるのですね... シチリアが例外と前に読んだ本にはありますがこれは個人組合員がいないのだそうです
生協の店舗にはガソリンスタンドや図書館まで併設されている写真もありました そして出ましたプライベートブランドPB!! ←東都生協にもありますね♪
安全 おいしい 便利 倫理的 環境の 5つの価値に基づいて開発された商品で ターゲットはミドル階級とのこと さらに 価格について特筆すべきは「便利な価格とは最低限の価格ではなく、商品の品質と安全性 倫理性 環境の持続可能性がバランスよく組み合わされた合理的な価格のこと」とのことです
コープイタリアのTVコマーシャルでは 生協の組合員にインタビューをして 低価格と品質どちらを選ぶ?と聞くと「品質」と答えるとのこと
また 「自宅の水」キャンペーンでは ミネラル・ウォーターの 水を瓶詰して輸送することの環境負荷を知らせています 学校での消費者教育活動「Sapere Coop: 生協提供の知識」活動は 9大生協により 30年間も続いているそうです
イタリアのスーパーマーケット・ハイパーマーケット業界のシェアは2013年で Coopが第一位の18.5%とのこと 大手スーパーチェーンのエッセルンガは第3位の11%でした
実に興味深いリポートでした!
Ⅲ ウニコープ・フィレンツェの組合員調査にみるイタリア生協の組合員
これも 自分ならこの組合員アンケートに何と答えるだろうか?と考えながら読ませていただきました
回収率は39%で 特に利用高の高い層とのことですが ウニコープで買う人が99% コープをベースに買う人が65% ただし加入歴は6~15年前後の若い人が多く 日本では半数が20年以上加入している人との記述に納得!! また 生協に求めるものの日伊比較も興味深かったです
Ⅳ イタリア協同組合連盟(Alleanza delle cooperative Italiane)の設立と現在
2012年に3大生協合同で ACI(Alleanza delle cooperative Italiane)が設立されました それについて詳しく述べられています
2002年 ベルルスコーニ政権が突然提起した「協同組合法の改正」について等 Coopの128年の対立の歴史を経て 政治と宗教を乗り越えた過程が詳しく綴られていました
Ⅴ イタリアの協同組合史
イタリア初の1854年にトリノに生まれた生協について詳しく述べられており 当時問題を抱える人々を お金を出し合って支えてゆく SMS(緊急相互扶助協会/Società mutuo soccorso)運動から始まったことが書かれていました 今もこのSMSの施設は中北部に存在しているそうです
この生協の歴史については この前に読んだ「イタリアの協同組合」の本に詳しいのですが ファシズムの暗黒時代を経て 大戦後の1947年に 最初の協同組合法となった「バゼーヴィ法」が制定されました さらにまた1991年には「社会的協同組合法」が成立しました
イタリアの生協について知りたいという思いが セミナー参加や イタリアブックフェアで出会った2冊 そして今回の生協総研リポートの出会いへとつながり お腹いっぱい読みました( ^^) _U~~
追記: 「生活協同組合研究」2015年4月発行 Vol.471の「コープアドリアティカの社会的活動報告書」によると エミリア・ロマーニャ州にあるこの生協では CSR(企業の社会的責任)にかかわる活動を2002年から続けているとのこと 「持続可能性」が追記されたそうです
ミッションとしては 消費者教育 従業員の労働と業績の評価 組合員への商品とサービスの提供 透明性と公平性に基づいた事業活動 持続可能性 地域の社会的経済の発展への寄与 その他色々...
また イタリアならではの マフィアから没収した南イタリアの土地を使い農業を営む社会的協同組合「リベラ・テッラ」の支援活動など...
高齢者や障がい者生活支援 これも日本でも色々な生協で 「くらしの助け合い」運動として展開していますよね!
私もやっていました
昔は生協だけでスーパーにもほとんど行きませんでしたが 今は高くて無理です イタリアの生協は適正価格とのことですが日本の生協はブランド化している気がします
イタリアの生協は意欲的に有機的に活動していることがわかりました イタリアのCoopのこの本に出会えてホントによかったです
「イタリアの生協の現状について」(生協総研レポートNo.76)は こちら
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協同組合はユネスコの無形文化遺産にも登録されています
『協同組合とは、人々が自分たちのねがいを実現するため生み出したしくみ・知恵。7つの協同組合原則が定められており、ユネスコの「無形文化遺産」にも登録されています。協同組合がある国や地域は94か国以上、組合員は世界全体で10億人を超えます。
日本には全国で約560の生協があり2,820万人の組合員が加入し、事業高は約3.4兆円の規模があります。』
詳しくは 生協と社会論 第1回講義概要「現代社会と協同」(公益財団法人 生協総合研究所)
* 写真はフィレンツェのお店 Coopとは関係ありません
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