ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

Dくんと飲んだ

2007-10-05 00:57:00 | 能楽
ちょっと前になるのですが、若手狂言方のDくんと久しぶりに飲みました。

Dくんの事は以前にもこのブログでご紹介したことがあるのですが、ぬえがとっても気になっている狂言方若手の有望株。ともかく舞台に対して真摯な態度で、なにより舞台に大きな夢を持っているところが大変よいと思いますね。そして若いのによく身体が作れて仕上がっている、と ぬえは思います。

稽古に熱心かどうかは舞台を見ていればすぐにわかるし、若いうちにしか声や舞を作り出す身体の基礎は鍛錬できないので、稽古が身体を作り上げることにちゃんとリンクしているかどうか、は稽古の大きなカギだと思います。それができるのは若いうちの ほんの短い期間で、その間の稽古が一生の芸を左右するのに、若いうちはなかなか自分では自分の稽古の行方が正しいのかどうか、なんて見極められないものです。そのために師匠の指導があるワケですが、でもその指導を肉体に取り込むのは自分自身にしかできない事なんですよね。

指導を自分の身体の動かし方に反映できるように翻訳できるかどうかは、個人のセンスも大きいし、付きあう同年代の能楽師の友人などの相互の影響も絶大だったりします。でも ぬえは、それより何より大切なのは、自分自身が舞台に夢を持てているかどうか、なんじゃないかなあ、と思います。夢を持てればそれを実現するのに自分に何が足りないか、を真剣に考えることができる。これって、これまた若いうちの特権だったりします。ぬえも内弟子の頃は、修行の合間を縫って、師家から自転車で行ける観世能楽堂に他家の催しを拝見しに行っては自分とのレベルの違いを痛感して、終演後は なにくそっ、と自転車を飛ばして師家に帰り、上演された同じ曲を舞台で一人で謡ったりしていました。ああ。。あんな気持ちでDくんもいるんだろうなあ。。

マジメな話になりすぎましたが、でも、彼と ぬえがおつきあいをしているのは、もっぱらお互いに骨董の収集品を見せ合うのが縁でして。。(^◇^;)

これまたブログに書きましたが、いつぞやの ぬえ主催の若手中心の能楽師の新年会で、たまたまDくんと話していて、彼も ぬえと同じく骨董屋めぐりの趣味がある事を知ったのです。ぬえは知る人ぞ知る骨董屋キラーでして、もう20年、骨董屋や骨董市をめぐってはいろいろな物を買い集めています。でも、もちろん ぬえが買い集めるのは茶器やらアンティーク雑貨などではなくて、もっぱら舞台に使う小道具などです。一代目の能楽師である ぬえは、内弟子修行を始めた当初は、それこそ自分の物など何にも持っていなくて、必要に迫られて骨董屋通いを始めるようになって、時には掘り出し物の面などを手に入れる事もあったのですが、ところが新年会の席で名門の子弟であるDくんから、彼が骨董市にさかんに通っている、という話を聞いて ぬえは意外にも思いながら興味を持ったのでした。

その後、彼に誘われて骨董市に行ったこともあるし、それまでの収集品を見せ合ったこともあります。ぬえも骨董の道具を見る眼は一応あるつもりなので、一緒に骨董市に行ったときには品のどこを見るか、とか、値段が妥当かどうか、をDくんに説明できました。これがまたDくんを刺激したようで、自分のこれまでの収集品を ぬえが拝見するような事にもなり、また ぬえも自分が集めた品を彼に見せて、意見を交換し合うような間柄になったのです。

それにしてもDくんは若いから、行動力が今の ぬえの比ではないですね。。ちょくちょくメールを頂いて、「明日からの◎◎骨董市には ぬえさんは行かれますか?」とか「今日は××の骨董市で、残念ながら成果はありませんでした。。」とか言ってくる。ぬえは、骨董市などは ここぞ!という時にばかり出かけるようになって、う~~ん、最近はちょっとナマってるのかなあ。

                         (続く)