ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

師家蔵SP盤のデジタル化作戦~サイトに報告を載せました

2007-10-10 01:11:12 | 能楽
今年の正月に遡りますが、ぬえの師家が所蔵する古い謡曲や番囃子のSP盤がデジタル化して現代に甦りました。そしてその音源はこの夏、研究者のサイトに紹介され、ご自由にDLしてお聴き頂くことができるようになりました。

この経緯についてはブログで紹介させて頂きましたが、最近ようやく ぬえのサイトの更新をする中でページを新たに設け、ブログで書いた記事を再構成してご紹介させて頂くことが出来ました。今日はその自分の更新ページの宣伝まで申し上げる事と致します。

思い返してブログを読み返してみたら、このプロジェクトについては昨年の9月中旬にはじめてブログでご紹介させて頂いているのですね。スタートからもう1年かあ。。このときの記事では、すでにデジタル化プロジェクトは始動していて、ぬえが師家のお許しを得て、所蔵SP盤のリストを作り上げた、という事が書かれています。

このプロジェクトの立案者である中京の能楽研究者・池野鮒さんこと飯塚恵理人さんが古い音源を集めはじめたのは もちろんそれよりずっと以前の事で、「明治から戦前までの時代の、かつての名人、と言われても、我々の世代では その演技も、それどころか声さえも聞いたことがない。資料が失われる前に、いまの時代にきちんと保存して、また広く公開するべきだ」とお考えになったのが、今回のデジタル化・公開にまで結びついた、そもそものキッカケでした。

ところが巷間に出回っている古いSP盤というのは保存状態も悪く、また、もとより「レコード盤に針を落とす」というアナログで物理的な作業をして再生していた当時、レコード盤の再生は、そのまま盤の寿命を縮める作業に他ならず、そこで鮒さんは「いっそ録音を担当した能楽師の家にこそ保存状態の良い盤が残されているのではないか」とお考えになったようです。ぬえが書いたこのブログの記事から考えると、以前から鮒さんと懇意にしていた ぬえに、師家の所蔵する音源をデジタル化したい、というお申し出を頂いたのは昨年の春頃ということになるようです。

その画期的なアイデアに賛同した ぬえは、師家に相談して許可を頂き、9月にリストを作り上げ、11月に ぬえ自身の手によってSP盤を名古屋まで輸送し、NHKの専門部門に引き渡して、今年の正月には見本のCD盤が出来上がるところまで行き着いた、という流れになります。

今回のデジタル化プロジェクトでは、音源を一般公開する、という方針が当初から 鮒さんによって明示され、ぬえも師家にその理解とご協力をお願いしました。ありがたいことに師家からご快諾を頂けたことで、ようやく計画が軌道に乗ったのですが、音源の中には著作権が ぬえの師家だけにとどまらないものもあり、それらの中には最終的に公開できなかったものもあります。

それでも今回の音源の公開は、能楽界の歴史の中でも画期的な事業と言うべきで、鮒さんの輝く業績と呼ぶにふさわしいものでしょう。とりあえず今日は ぬえのサイトに新設されたご紹介のページについてお知らせ申し上げますが、このページには 鮒さんのサイトへのリンクを張ってございますので、そこから古い音源をお聴き頂けます。また今回のプロジェクトの詳しい経緯なども記してございますので、ご一読頂けるとありがたいと存じます。

師家蔵・古いSP盤のデジタル化作戦

う~ん、考えてみると本当に未来に続く良いお仕事をされましたね~ 鮒さん (^o^)ハ