ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

丹波篠山「翁神事」

2010-01-04 01:41:15 | 能楽

というわけで出勤して参りました丹波篠山での「翁神事」ですが、数日前から天気予報には注意していたのですが、「大晦日は大荒れでしょう~!(^^)V」という天気予報ばかりでゲンナリ… なんせ昔ながらの野外の舞台で、しかも真冬の深夜に上演しよう、ってんですから、少しでもコンディションは良い方がありがたひ。

それでも当日は東京は快晴になりました! 朝から門下数人で車で出発。交代で運転しながら7時間ほどの行程です。この日も天気予報をチェックしていましたが、兵庫県の予報は「南部は晴れ。北部は雪 (*^。^*)/」。なんじゃそりゃ。しかし結局天気が崩れることはなく、現地にも雪が積もっていることもなく、無事に到着しました。

もう長く続くこの「翁神事」ですが、よく聞いてみれば今年でなんと33年目になるのだそうです。当地にある能楽資料館の前館長である中西通氏の尽力によって実現した「翁神事」ですが、通氏はいまは故人となり、その跡を継がれたご子息の薫氏によれば、その記念すべき第1回目。。つまり33年前には薫氏はまだ19歳で、はじめての『翁』の上演に際しては幕揚げ後見として舞台に参画されたのだそうです。そうして今年。その薫氏のご子息で大学1年生の亮くん~正月休みで帰省中~が、今度は幕揚げのお役を勤めてくれることになりました。こうやって世代を越えて「翁神事」が繋がれていく、ってことはすばらしい事だと思います。大きく言えば、こういう「思い」の積み重なりがあって。。いつの間にか能は600年間の歴史を培ってきたのだろうと思います。

さて、能楽資料館で休憩した ぬえたちでしたが、夜になって到着された小鼓方の大倉源次郎師(大倉流宗家)がおっしゃることには「いい感じに雪が降ってきましたね~(^^)V」 げ。そうなんですか。

午後10時頃、楽屋入りして上演準備に掛かりましたが、ん~たしかに小雪がちらほらと。。もっとも雲には切れ間もあって、そこから、あら! 満月が覗いています。天候の悪化はないだろう、と祈るようにムリヤリ信じて楽屋に入りましたが、うん、たしかに天気は小康状態で、これ以上荒れることもないようです。それにしても寒いこと!

ぬえは今回は『翁』の後見の大役を頂いておりましたが、この寒さで大夫が掛ける翁面の紐をうまく結べるかどうか、本当に心配していました。面紐が途中でゆるんじゃったらどうしよう。。いや、どうしようもないのです。直しようがない。それで自宅でも何度も紐を結ぶ稽古を重ねていました。ぬえは『翁』の後見はこれが二度目なのですが、やはり油断はできないです。舞台上で大夫の面紐がゆるんで下がったりしたら。。そんな大失敗をしたら…謹慎は避けられないでしょうね~…自宅での稽古でようやくコツはつかんだものの、やはり心配で丹波篠山にも面紐は持参していまして、楽屋入りの前に何度も後輩をつかまえては面紐を結ぶ稽古をさせてもらいました。

こうして深夜0時をまわったところで楽屋内で新年の挨拶が交わされ、同時に舞台上では神主さんによって新年の神事が執り行われ、そうして0時半より『翁』が上演されました。

ありゃ…また雪が降ってきたようです…