ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子ども創作能、高級旅館「三養荘」で公演

2012-04-05 01:14:53 | 能楽
じつは ぬえ、この4日間、ずっと伊豆におりました。というのも子ども能の公演があったからなのですが、それも伊豆の国市きっての高級旅館「三養荘」の大広間での公演でした。

ぬえ、その存在は知っていましたし、外側だけなら何度も前を通って見ていましたが。。(^◇^;) 中に入ったのはこの日が初めて。いやその、あまりの広大なことにビックリしました。玄関から公演会場となる大広間までが遠いのなんの。。足の悪いお年寄りなどは客室に到着する前に遭難するかもしれませぬ。

で、広大なのも当然で、ここは岩崎弥太郎の長男・久彌の別邸だったところなんですね。会場に向かう途中に見える庭には滝があり1本だけ植えられた桜が満開。。なんともゴージャスなことです。

伊豆の国市では今年「頼朝挙兵830年祭」と銘打って大々的に観光や文化振興のテーマとしています。そりゃそうで、伊豆の国市。。とくに韮山は文化財の宝庫なんですよね。いわゆる「歴女」(←古い?)には垂涎の地のはず。なんせ平治の乱のあと幼い頼朝が流された「蛭が小島」がある地で、これを庇護して後に源に代わって鎌倉の執権となった北条家の本拠地でもあるのです。ぬえたち能楽師にとっては普段舞台で演じている能の本説、まさにその時代がここに立ち現れるかのような場所。良くも悪しくも観光地化されていない、重厚な歴史が垣間見えるこの街が ぬえは大好き。

その「830年祭」に向けて、ぬえが指導する「子ども創作能」の上演曲目『伊豆の頼朝』は、まさにど真ん中のストライクでした。なんせ頼朝の挙兵そのものを舞台化した創作能です。この曲の台本を ぬえが書いたのは今から3年ほど前だと思いますが、その頃はこんな風に脚光を浴びるとはちょっと考えてもみませんでした。

が、今年は「830年祭」にまさに打ってつけの曲目だということで、子ども能の主催者である「伊豆の国能友の会」がいろいろとお骨折り頂いて関係者と協議されたようで、今年はたくさんの大きな舞台を与えて頂けることになりました。

その最初がこの日。4月3日に三養荘で行われた830年祭のオープニングのレセプションが三養荘で執り行わて、子ども能はここに招待を頂きました。なんでも「830年祭」は、ここで旗揚げした頼朝が石橋山の合戦で敗走して安房国に逃れ、やがて関八州を傘下におさめて鎌倉に凱旋した史実を踏まえて、それに関係する自治体との連携までを図った壮大な計画のようで、この日は各自治体の関係者が一堂に会して会議を開き、オープニングセレモニーを持ち、そうしてようやく和んだ雰囲気で行われたレセプションの席で、関係者は子ども能や芸妓さんたちの踊りを楽しまれるのだそうです。

ともあれ、普段は神社の神楽殿などでばかり上演している子ども能にとって、三養荘の大広間の美しい舞台はまぶしいほどでした~。

でわでわ早速舞台のご紹介です~。撮影は毎度子ども能の応援に駆けつけてくださる山口宏子さんからご提供頂きました!

まずは頼朝役のカホちん(トップ画像)。ん~凛々しい。ですが髪に華を飾ってもらいました。3年前、男の子ばっかりだった子ども能の、そのメンバーを念頭に書いた台本だったのですが、意外に少女が演じる頼朝も華やいで良い感じです。ですから装束は男装だけれど、あまり頼朝に拘泥しないで、できる範囲では女の子らしく飾り付けていいよ~とお母さんに伝えています。



こっちは北条政子役のひとザウ。北条政子がやるはずないけど戦勝祈願で神楽を舞っています。ぬえ、国文科出身だからか、初演では原作(この創作能では『吾妻鏡』『源平盛衰記』)から離れることができず、頼朝は平家目代の山木兼隆との合戦に参加さえさせませんでした。2回目の上演から、ようやく本説の呪縛から解かれて、能の最後の場面では頼朝と兼隆の一騎打ちはさせるわ、政子は舞を舞うわ。。タガが外れちまいました。でもね。この政子は短縮バージョンとはいえ「中之舞」を舞うんです。

さて兼隆邸に押し寄せた源氏軍。武士同士が火花を散らして戦います。



配下の郎党を失った兼隆役のユイぴはついに自ら太刀を抜き、敵将・頼朝と一騎打ちの戦いに臨みます。



が、それも頼朝にはかなわず、捕縛されて連行されて行きました。



ん~地謡もがんばったね! この地謡に子ども能は支えられています。ありがとう!



上演が終わって舞台に戻ってのカーテンコール。。いやいや、子どもたちから静聴頂いたお客さまにお礼を申し上げます。これも恒例になりましたが、礼に始まり礼に終わる。こういうところを大切にしていきたいです。



上演3年目。去年は5回の公演がありましたから、子ども能の過去のレパートリーの中では圧倒的に繰り返し上演されている『伊豆の頼朝』。ずいぶん長く演じ続けている印象がありますが、不思議とマンネリにならないです。久しぶりにずいぶん立派なお舞台に出演させて頂きましたが、見違えるほど上等に見えますね。

それもこれも、子どもたちの苦労と必死の稽古の賜物です。よくがんばったね。
今週末はいよいよ鎌倉での公演が控えています。より良い舞台を目指してがんばろう!

。。ところで ぬえはこの公演のため必要があって4日間も伊豆にいたのではありませぬ。
じつは、子ども能の教え子のうち、6年生のカホちんと1年生のサキべの2人が、この三養荘の公演の直前に相次いでピアノの発表会への出演があったの。ぬえは2日間それぞれの発表会を見に行きました!。。ま、ぬえは教え子の運動会も学芸会も参加しちゃうヘンな人で有名なんですけれども。。 それにしても、へえ~~ドレスを着ちゃってたり、真剣にピアノに向き合う姿は、いつも ぬえが見ているカホちんやサキべではない別人みたい! またピアノの先生が違うと、コンサートもこうまで違うんだ、と思ってビックリしました。衣裳、演目、構成、雰囲気。。どれをとっても全然違います。面白いものですね~~