ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『一粒萬倍』ロサンゼルス公演(その3)

2017-02-02 12:09:55 | 能楽
ぬえの出番の次はイザナギ・イザナミによる婚姻と国生み神産み。イザナギは Baliasiの雛ちゃん。まだ高校生です! そしてイザナミは同じく Baliasiの梨恵さん。





この場面で雛ちゃんは梨恵さんをおんぶする型があるのですが、そのあと雛ちゃん、両手を離すのです。去年最初にこれを見たときは、どうやってるのかよくわからなかった。今回梨恵さんに詳しく聞く機会があって、やっぱりおぶさる側の体重の載せ方にコツがあって、あとは脚力でがんばるらしい。いたいけな高校生・雛ちゃんを締めつけて成立しているわけですな。。



円満な夫婦生活をしていた二人の神ですが、火の神カグツチを産んだとき、その熱によってイザナミは死んでしまいます。





黄泉の国に去ってしまった。イザナミ。イザナギは彼女を忘れられず彼女に会いに黄泉の国へ赴きます。イザナミの制止にもかかわらずその中に入ったイザナギは、変わり果てた妻の姿に驚き逃げ、姿を見られたイザナミは怒り、そのあとを追います。

怒りのあまり形相が変わったイザナミの役を勤めるのは Baliasiのリーダー千絵さん。イザナミは夫のあとを追いかけるのですが、黄泉の国と地上とをわける黄泉比良坂(よもつひらさか)でイザナギが大石で道をふさぎ、ついに逃げおおせることが出来ました。









この暗黒の黄泉の国から出ることができないイザナミを、二枚の黒く長い布で表すのが斬新ねえ。



ちなみにこのあと千絵さんは布を手放して、イザナギを逃がした恨みを狂おしく舞うのですが、ここは本当に体力勝負らしく、舞台袖に退場するときには倒れ込むようで、Baliasiのメンバーが毎度、ガシッとそれを受け止めて肩を貸すように楽屋に連れ帰っていました。ひゃー

さてイザナギは黄泉の国から生還できたのですが、みずからの身の汚れを清めるために川に入って禊ぎをします。このとき左の目を洗ったときにアマテラスが、右目を洗ったときに月読命が、そして鼻を洗ったときにスサノオが誕生しました。

スサノオは荒ぶる神。高天の原で大暴れ。この役はロサンゼルス在住の成美さんです。まあ、よくここまで激しく動けるものだと思うほど。。





ん~、ぬえだけ運動量が少ない。。ホントは ぬえも激しい 切能の方が好きなんですけれども、まあ、こういう他のジャンルの芸能と競演する場合には、能には静かな動作の役が期待されることが多いし、またその方が効果が高いですね。

それと、ぬえの出番は劇の冒頭と最後だけなので、稽古の段階でもヒマでした。稽古2日目、浅野太鼓さんの稽古場から外に出てみたら、この日は朝からロサンゼルスでは珍しく(ほんの少し)降っていた雨がやみ、空に虹がかかっていました!



急いで写真を撮って稽古場に持って行ってみんなに見せたら。。

「どうも。。ほっこりしましたー」と、汗だくのちょっと疲れた顔で答えられました。
だってー。ヒマなんだもーん (・_・、)