ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『一粒萬倍』ロサンゼルス公演(その7)

2017-02-10 03:47:55 | 能楽
さて、こちらは音楽家チームのみなさん。ぬえと語り部さん(Story teller)を除いて無言劇である『一粒萬倍』では音楽が それはそれは重要です。昨年の能楽堂公演では邦楽器の中に唯一洋楽器としてチェロが参加したのですが、今回はそのほかにギターとキーボードも参加していました。

邦楽の方は、Baliasiさんと並び「一粒萬倍」公演の最初から参加しておられる小鼓の望月左武郎さんと奥様で大鼓の重草由美子さんを中心に、ロサンゼルス在住の加藤雄太さん、小鼓の堅田喜久倫さんとその一門の方々合わせて小鼓4調が加わるという豪華布陣。尺八と笛は日本から参加の原郷界山さんです。





箏奏者はロサンゼルス在住の松山夕貴子さん。なんと2011年参加したサックス奏者ポール・ウィンター氏のアルバム『Miho: Journey to the Mountain』がグラミー賞の最優秀ニュー・エイジ・アルバム賞に輝くという快挙を成し遂げた方です。



組太鼓の「因陀羅(Indra)」の由有さん、真史さん、游平さんの3人。由有さんは『一粒萬倍』で演奏される多くの曲の作曲もなさったそうですが、聞いていると7拍進行とか変拍子が多出しているようでした。7拍進行の曲で踊るみなさんってどういう気分なんだろう。。









由有さんは小鼓の望月さんのご子息で、望月さんもかつて和太鼓の演奏家だったそうです。望月さんは若い頃にアメリカで和太鼓の演奏旅行をしたり指導をして、それが現在全米に数百もあるという和太鼓団体の礎になっているというパイオニア。最近まで日本とアメリカを往復して指導していましたが、現在は米国内に教え子さんたちが育ってきて指導は任せるようになってきたとのこと。しかし今回も乞われて浅野太鼓さんで太鼓のワークショップを何度か行う予定があるそうです。

ぬえはちょっとした時間に望月さんと話す機会がありましたが、アメリカ国内での太鼓集団の広がりは嬉しいことだけれど、ややもすると和太鼓になっていない例もあるのが気になる、とのこと。ぬえには細かい点はわからない事ではありますけれども、要するに和太鼓ではなくパーカッションになってしまっている、という事でしょうね。伝統芸能というものは、口伝もあるし、師伝を離れると崩れていく、という事もある。それは能だって同じことです。伝承というものはある種「伝言ゲーム」のようなもので、簡単に崩れていくものですね。先人はその危うさも経験で心得ていて、能の場合ですが これを防ぐための驚くべきシステムを持っていますが。。それでも危機感はいつも持っています。今回の他ジャンルとの共演の公演でも、ぬえは能楽師として「崩れる」ことだけは避けようと思いながら参加しました。

さてこちらは洋楽器チーム。ぐっとくだけたメンバーで、ぬえも食事や買い物などよくご一緒しました。まずはギターの織川(おがわ)ヒロタカさん。



織川さんは『一粒萬倍』の作者 松浦靖さんの友人で、以前からこの劇の中で作曲を担当しておられるそうです。昨年の能楽堂公演では演奏はしていなかったけれど稽古で参加しておられました。そして、箏奏者の松山夕貴子さんの実のお兄さんでした(!)。ぬえが見ていた感じでは、なんか仲の良い兄妹でしたね~。そんなことから織川さんはロサンゼルスにはよく演奏に出かけておられるそうで、ぬえも当地の事情をいろいろ教えて頂きました。

こちらキーボードの赤石(あかし)香喜さん。ぬえ、ホテルで同室でした。まー性格の良い方で、楽しく過ごさせて頂きました。夜になるとすぐ寝てしまうので、夜更かしな ぬえをめがけてしばしば ぬえの部屋が深夜の宴会場になってしまいました。ご迷惑さまでしたー。







チェロのメイちゃんはまた次回ご紹介します。



忘れてならない大道宣輝さん。



こちらは出演者ではなく音響担当のスタッフさんのお一人ですが、ギターの織川さん、その妹で箏奏者の松山夕貴子さん、キーボードの赤石さんとは盟友で、今回も公演のあともロサンゼルスにとどまって演奏などの活動を続けていました。

特筆すべきは大道さん、劇場の音響を改革したのです(!)。

どうも渡航以前から今回の会場となっているホールは「音響が悪い」と現地で言われている、とは聞かされていました。が、ロサンゼルス到着直後に会場を下見に行った際には、アコースティックの残響に何の問題も見つけられなかった ぬえ。どうしてこの会場が音響が悪いという評判なのだろう? と思っていましたが、じつはこれ、スピーカーを通したPA機器に問題があったらしいのです。

今回もギターやキーボードなどアンプで拡声する楽器があったし、アコースティックな楽器でも和太鼓など大音量の楽器に箏やチェロが負けるので、一部マイクで拾って拡声する場面もあったのですが、どうやらその接続機器の配線に問題があったようです。大道さんはそれに気づいて配線の修正をしたらしく、これで音響の問題は解決しました。言うなれば劇場の評判もこれで修正されるはずで、今回の公演の中でも劇場に対する貢献はダントツだったでしょう。

ほかにもヘアメイクで手腕を発揮したアキコさんとか、舞台監督? として見事な腕前を披露し、写真撮影までこなした寺内健太郎さんとか、紹介したい人はたくさんあるのですが画像がなく。。

マネージャーとして一行のスケジュール管理など多方面に渡って活躍した美里さんをご紹介しておきましょう。



じつは彼女、公演当日は和装だったのですが、黒い着物に黒いインカム。あ、それコーディネートですか? なるほどー、コーディネートはこうでねえと。

ところで、ギターの織川さん、キーボードの赤石さん、音響の大道さん、箏の夕貴子さんは、そろって関西出身だそう。それが楽屋で話題になったら、マネージャーの美里さんや、Baliasiの千絵さんまで、みんな関西人だとわかりましてん。そしたら、みんな一斉に楽屋で関西弁でしゃべりまんねん。どないなってんのやろ? 儲かりまっか? ぼちぼちでんなー