ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

石巻・洞源院さまにて奉納・仙台シンポジウムへの出演

2020-05-06 12:27:08 | 能楽の心と癒しプロジェクト
遅ればせながらまだご紹介を漏らしていた過去のプロジェクトの活動をご報告させて頂きます。

■2018年

一昨年(2018年)の夏のお盆のころ、大槌町と気仙沼での活動のあと、ご縁あって石巻市の洞源院さまで奉納させて頂く機会がありました。

洞源院さまは石巻市の中心部からは少し離れた、牡鹿半島の付け根部分、伊達政宗によって派遣された支倉常長らの慶長遣欧使節を記念したサン・ファン館のすぐ上の山の上に位置する曹洞宗のお寺です。



震災のときには近隣の住民さんおよそ400名が避難し、臨時の避難所となりました。小野崎秀通住職さまと奥様の美紀さんは避難者と協力し合って役割分担をし、その年の夏に避難所を解散するまでをみなさんが団結して乗り切ったのだそうです。

特筆されるのは奥様の美紀さんが避難者を勇気づけたり、ときにはたしなめたりされたお言葉、それから避難所生活の中で生まれた詩が、それぞれ本となって出版され、美紀さんご本人が朗読したCDも誕生したことです。奉納のあとご住職から本とCDを頂いた ぬえは帰途の車中でCDを聞いたのですが、本当に大変な状況だったのだな、と心に響きました。

ご本人の承諾を頂きました(2年前に…)ので、上梓された美紀さんの詩集「あったかい手」の一部をご紹介させて頂きます。

夕食の時

暗がりから差し出される両手

今まで会ったことのない人の、汚れた手
今まで会ったことのない人の「傷だらけの手」
ローソクの明かりが 照らしている

「………」

「いいんですよ。
がれきをかき分け、来られるなら
明日もお寺に 来てください
食事は九時と四時ですよ」

「………」

差し出された片方の手は
流れる涙を拭ってた

これがご縁で同じ年の秋ににはお寺が経営される幼稚園「たから保育園」ほかの園児たちをお相手に楽しいワークショップも行わせて頂き、このときは能「鶴亀」をモチーフにしたお遊戯のような出し物を作りまして、保育園の先生に にわかにお稽古をつけてシテの皇帝役を勤めて頂き、大勢の子どもたちは鶴さんと亀さんの役を即興で舞い遊ぶというものでした。楽しかった~。

洞源院さまでのお盆の法要に合わせた奉納の様子は画像がありませんので、宣伝チラシのみご報告させて頂きます。



11月1日には仙台の「せんだいメディアテーク」のロビーで開かれた「3・11の向こう側 仙台シンポジウム」の中で能「羽衣」を上演させて頂きました。

こちらは2017年に「石巻小学校」で行われた「能楽と花アート」の主催者である「花とアートで再生復興プロジェクト委員会」さまの主催によるもので、竹村真一さん、C.W.ニコルさんら豪華な顔ぶれの登壇者が討議する催しに ぬえたちが花を添えた形です。



主催者のリーダーである佐久間智子さんは敏腕の才女で、この後も本年の1月になんと松島の国宝・瑞巌寺で大規模なお茶会を催され、ぬえも仕舞で出演させて頂きました。



この時はいろいろアクシデントがあって、ビジュアル面でお客様を楽しませる役割は ぬえ一人だけになってしまったのですが、前日夜のミーティングからようやく参加した ぬえの意見やスタッフさんの要望にも佐久間さんは耳を傾けるし、当日も桜井松島町長、熊谷利府町長さまなどの重要な参加者や、芸術面での後援を得たイタリアのアーティスト団体「ピストレット財団」など重要な関係者の接待もありながら終始落ち着いて仕事をこなしていたお姿が印象的で、今後も被災地支援活動でご協力させて頂くつもりでおります。

今回は上演の画像がなくて申し訳ありません。。