
あの場所にず~っと止まっているのです。 えっ、いつもの番と違うのかしら、と、ソファ~で洗濯物を
畳みながら様子を窺っているのですが...、ジーっと同じ姿勢なのです。


ようやくソファ~から立ち上がって、2時にクリニックに出かける用意をはじめていた。
珍しくヒヨドリはベランダに飛んでこない、これも不思議なことだった。
実は今朝は私の朝食のフルーツ、ネーブルオレンジが1個しかなく、餌としてベランダに置くのを
ちょっと躊躇ったのです。 出かけた時に蜜柑を買ってきてからとも考えていたのです。
でも、結局は半分を二切れにして置きました。
<よかった~、メジロたちに先にきてもらって...> <さあ、出かけてきますからね>

二羽で啄ばんでいるのかしら、いつもならどちらかが見張っているように首をあちこち動かしているのに、今は
お互いに安心して、ヒヨドリがくるかもしれない、なんてことも忘れているみたいでした。
この情景から私はクリニックに出かける時間を少し延ばしてソファ~に座りなおしていました。

まだ、枯れ枝だけのノウゼンカズラの上で二羽の世界が繰り広げられ、一羽がしきりにもう一羽の
毛づくろいをしたりしても、逃げる様子もなくなにかを語っているような様子をしばらくは
眺めていながら、<ひよどりが邪魔しませんように>と願いつつ外出した。
二時間弱ぐらいの外出だっただろうか、もう日暮れも近いので森に帰っていると思っていましたので、
ベランダをのぞくときも、いつもと同じにそ~っとなんて気遣いもなく...でしたが、

鉢の隣のルリマツリの鉢の縁に番で止まり、夕陽を浴びている姿を見つけたときは...涙がでました。
こんなに安心して番で午後のひとときを過ごしてくれている、ネーブルオレンジ半分に躊躇した自分が
恥ずかしかったのです。 すばらしいメジロの世界がこのベランダで繰りひろげられ、それは鳥の世界だけの
ことでない何かを私に教えてくているようでした。 素敵な、言葉にならない感激でした。
ここへ越してきてずいぶん長い月日がたちましたが、今まではまったくなかったことなのか
どうかはわからないけど、こんな情景を目にしたのははじめてでした。
お互いを愛しみ、やさしさと穏やかな空気につつまれて、メジロたちは午後の時間をこのベランダで
過ごしてくれました。 それだけで充分私の心に響くものがありました。
忘れることはないでしょう、ありがとう...。
