いいもの見ぃ~つけた!

「いいもの」は探せばいっぱいあります。独断と偏見による個人的「いいもの」情報発信所です。

<経産大臣指定伝統的工芸品> 静岡 駿河雛具

2021-05-11 07:22:05 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「駿河雛具」

 Description / 特徴・産地

 駿河雛具とは?
 駿河雛具(するがひなぐ)は、静岡県の静岡市や掛川市、焼津市などで主に作られている工芸品です。
 駿河雛具の特徴は、箪笥や長持、鏡台など、どれをとっても、細かい部分まで本物と同じ工程で製作されていることです。静岡県とその周辺で昔から発達してきた指物や挽物、塗りや蒔絵、金具などの伝統工芸の技術が注ぎ込まれ、職人たちに愛情込めて作られています。
それぞれの工程は、駿河指物・静岡挽物・駿河漆器・駿河蒔絵などと、静岡県の特産品の一ジャンルとして確立しています。中でも、華やかな駿河蒔絵から雛具の製作が始まったと言われ、花鳥山水や唐草の模様が美しい駿河雛具は、駿河雛人形とともに時代を超えて愛され続けています。
 また、木地作りから仕上げの蒔絵までの各工程を分業する体制が整えられたことから、駿河雛具は手工芸であるにもかかわらず量産が可能になり、全国シェアの多くを占めるまでになりました。

 History / 歴史
 室町時代の駿河には、若い婦人に「ひいなはりこ」を贈るという風習がありました。徳川幕府の時代になり、二代目将軍だった秀忠が久能山東照宮、三代目の家光が浅間神社をそれぞれ造営した折に、全国から職人を集めます。この職人たちが、駿河に留まってさまざまな分野の優れた技術を広めました。また、駿河の温暖で湿度の高い風土が漆器の製作に向いていることなど、諸々の良い条件が整って、駿河は工芸品作りが盛んな地域になりました。
 当時の駿河は、当時の大都会であった江戸と京都の中間に位置する好立地を生かして、販売網を広げることにも成功しました。
 大正時代に入ると、問屋組合をつくって結束を高め、さらに東京の問屋と連携して雛具の販売を全国展開します。

*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/surugahinagu/ より

 

 ミニチュア世界の華麗な装飾品
 戦国時代から、静岡には浅間神社で使う塗物を作る職人集団・御器屋衆(おきやしゅう)が集まり、漆塗りに適した温暖多湿の気候も手伝って、漆器制作の高度な技術が発達した。その伝統の技術を活かした静岡の雛具は、現在全国生産の約90パーセントを占める。

 
 熟練の技と美的感覚が生み出す華麗な道具たち
 箪笥、長持、鏡台、御所車、高杯や椀など、小さいながらも本物に近い製法で作られる雛具は、装飾美術品としての輝きを放ち、雛壇飾りをより華やかに見せる。この引出しをあけたら中に何が入っているのだろう。そんな想像力をかきたてられる独自のミニチュア世界は夢をもたせてくれる。雛具制作は五職と呼ばれる木地職、挽物職、塗職、蒔絵職、飾金具職を中心とした分業体制で行われ、いわば職人技の集大成。古くから木漆工芸の盛んだった静岡ならではの高度な技術が駆使されている。


 正確な手作業が仕上がりの完成度を高める
 市の北西部にある雛具団地へ向かう道筋には茶畑が点在し、川と緑の豊かな風景が広がっている。挽物師である神保紀久雄さんの作業場に足を踏み入れると、まずは木の匂いで迎えられる。雛具の木地は箱型のものは指物師、丸みを帯びたものは挽物師の手によって作られる。寸法に合わせて切った木材を横軸のろくろにセットし、刃物をあてがうと、測ったように正確な丸い形に削られていく。「型があるわけではないから、自分の手の加減で決めていくわけだよね」。小さなものも当然難しいが、太鼓のような大型のものでも、乾燥したときに割れ目が入ってしまうなど、扱いには細心の注意が必要だ。仕上げた木地は神保さんの手を離れて塗りや蒔絵の工程へと進むわけだが、完成して飾られている雛具を見ると、自分の作ったものがわかるという。「手がけたものが、きれいな商品となっているのを見ると、うれしいね」


 蒔絵の技術が雛具制作を支える
 雛具の装飾性を高めているのは、やはり華麗な蒔絵が施されていることだろう。漆で下絵の模様を描いた上に金粉を蒔く。ミニチュアとはいえ気品あふれる絢爛さは目をみはるばかりだ。模様は唐草や花鳥風月が多い。だが、蒔絵師の見城福二さんが描く唐草模様はひと味違う。定番の模様でありながら、その枠の中で自由な創作性を発揮し、新しい感覚を取り入れた作風が人気を呼んでいる。「はまったものばかりじゃ面白くないから」と話す見城さんは、それでもやはり「唐草が一番落ち着きがあっていいね」とこだわりを見せる。創作意欲を刺激するために、デッサン旅行に出かけることも多いらしい。この道に入って50年を超えるが、「一年中、何かに興味を持っています」と、常に新しい試みに挑戦している。


 需要の低下にたいする課題
 全国生産の約90パーセントを占めるとはいえ、出生率の低下と住宅事情の変化で雛具の生産量は第2次ベビーブームのピークだった昭和48年から減少し続けている。この年209万人だった出生数は平成11年には118万人。需要が半分近くに減った上に、都会のマンションでは雛飾りを置く場所もなく、小型化、簡易化が進む。7段飾りが3段、1段と小さくなれば、それだけ必要とする雛具も少なくなる。地元では雛具や漆工芸の職人技を存続させるための自助努力として、まずは小学校の給食の器に漆器を取り入れることを検討している。卒業してからは自分の家で使うようにして、家庭生活の中から需要を広げようという考えだ。関心が薄れている節句行事の伝統に目を向けてもらうことも今後の課題。それが雛具という一つの日本の美の継承につながっていく。

 職人プロフィール

 神保紀久雄 (じんぼうきくお)

 1933年生まれ。
 木地を削る刃物はすべて手作り。
 少しでも切れ味が落ちると、一日に何百回も研ぎなおす。

 中学卒業後、工芸の訓練校で蒔絵を学ぶ。
 現代感覚を取り入れた作風が独創的。


 こぼれ話

 漆器をjapanと呼ばせた蒔絵の技術

 英語で陶器はchinaといいますが、漆器はjapanといいます。中国や東南アジアでも生産されていた漆器がjapanと呼ばれたのは、日本独特の蒔絵の技術がひじょうに優れたものとして評価されたからでした。
 かつて、静岡の漆器は量産化をはかるために下地塗りの材料として安価なものを使い、安物のイメージをもたれたこともありますが、雛具の場合は高価な漆を使わなくても豪華絢爛な蒔絵の加飾を施すことで、装飾品としての価値を高めることができました。体質が雛具生産に適していたということでしょうか。静岡を中心に発達した蒔絵の技術は、「塗りは京都でも、蒔絵は静岡で」というぐらい信頼を置かれてきたものなのです。

*https://kougeihin.jp/craft/1305/ より


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <苺> スカイベリー | トップ | <漢字検定> 1級 読み 75.... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済産業大臣指定伝統的工芸品」カテゴリの最新記事