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<経産大臣指定伝統的工芸品> 石川 九谷焼

2021-04-10 07:03:37 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「九谷焼」

 Description / 特徴・産地

 九谷焼とは?
 九谷焼(くたにやき)は、石川県加賀市周辺で作られている陶磁器です。色絵のついた陶磁器の伝統工芸品で、江戸時代前期に誕生しました。
 九谷焼の特徴は、鮮やかな色彩と大胆かつ優美な紋様、そして「上絵付け」と呼ばれる技法です。上絵付けとは釉薬の上に顔料で絵付けを行い、再度焼く技法のことです。上絵付けに使われる上絵の具は800度程度で焼き付けできるため、顔料の制約が少なく、多彩な色彩が楽しめます。九谷焼のほかに有田焼でも用いられている技法です。
 九谷焼の色彩はいずれも鮮やかですが、種類により少々異なります。通称「九谷五彩」と呼ばれる5つの色(赤・黄・緑・紫・紺青)を使うものは、古九谷と木米風です。吉田屋風は、青・黄・紫・紺青の四鮮が美しく、飯田屋風は「久谷赤絵」と呼ばれるほど特徴的な赤色が目立ちます。永楽風は艶やかな赤と金が施され、庄三風は古九谷・吉田屋・赤絵・金欄手の手法を兼ね備えたバランスの良さが美しい九谷焼です。

 History / 歴史
 九谷焼 - 歴史
 九谷焼の始まりは1655年(明暦元年)に遡ります。加賀藩の分家である大聖寺藩領の九谷村で生産されたことから九谷焼の名がつきました。
有田で陶芸を学んだ後藤才治郎が開窯しますが、わずか半世紀で一度廃窯してしまいます。廃窯に至った経緯はわかっておりませんが、密貿易品の疑いがかかったためという説もあります。このわずかな期間に生産された陶磁器は「古九谷」と呼ばれ、華やかな色使いと特徴的な図柄が見て取れます。
 廃窯から約100年後に加賀藩の奨励による取り組みによって再び九谷焼が作られるようになりました。まず、1807年(文化4年)に京都より文人画家の青木木米が招かれて春日山窯ができ、木米風の歴史が始まりました。続いて、1827年(文政7年)には豪商吉田屋伝右衛門による吉田屋風、1831年(天保2年)には飯田屋風、1841年(天保12年)には庄三風、1865年(慶応元年)には永楽風が誕生しました。

 技の積み重ねが生む“赤い美の世界”
 「KUTANI」、海外にも広く名を知られた日本を代表する色絵磁器。300年以上にわたる歴史の中で、様々な技法・技術を生みだしてきた。古九谷、吉田屋、木米(もくべい)、永楽(えいらく)、庄三(しょうざ)そして赤絵。九谷が誇る絵付けの美を堪能してみよう。

 
 350年の歴史、それぞれの時代の技法
 古九谷が誕生したとされるのは350年前。その発祥と終焉に関しては諸説あるが、石川県の九谷村で生まれたとされる。特徴は重厚な緑・黄・赤・紫・紺青の“五彩”。そして、力強く勢いのある図柄が有名だ。しかし、この古九谷は80年ほどで終焉を迎える。そして約100年間、この地から窯の炎が絶える時期がある。
 その後、京の文人画家・青木木米(あおきもくべい)が再興九谷を起こす。全面を赤で塗りつぶしているのが特徴で木米と呼ばれる。さらに、古九谷を模した吉田屋と呼ばれる技法や赤色で極めて細かく描画する赤絵細描、京の陶工・永楽和全(えいらくわぜん)による赤地に金の彩色の永楽、古九谷・吉田屋・赤絵・金欄手のすべてを取り入れた庄三といった技法が生まれる。
 今回、お話を伺った福島武山(ふくしまぶざん)さんは白地に細かく人物や紋様を書き込む赤絵細描の職人である。


 独学で伝統工芸を習得
 「かわいらしぞー!赤絵で作った小さいものは。ほらっ。」と見せていただいた作品はどれもが言葉を失うほど細かく書き込まれた赤絵細描。それが人の手で一筆一筆書き込まれたというのがにわかに信じることができないほど。人物もとても表情豊かで、思わず手に取ってみずにはいられない。
 さらに驚くのは福島さんには師匠がいないこと。「独学。だれに教えてもらったわけでもありません。人の話を聞いたり本を読んだりしながら試行錯誤。最初は絵の具の溶き方もわからなかった。」伝統工芸を独学で習得するのは並大抵の気持ちではできないはずだ。「子供の頃から細かい仕事が好きやった。だから、毎日が新鮮で楽しい仕事。今でも、この場所に座ってるのが一番落ち着く。」好きなことをやり遂げる意志の前にはどんなものも障害にならない。
 「逆に外の世界から来たからこそ物を見るのにこだわりがなくて、広くいろいろなことを吸収できたのだと思います。」伝統的な赤絵の世界に新しい風を吹き込み、高い評価を受けている秘密はここにありそうだ。


 20年やってると顔を描くのによどみがなくなる
 なにしろ細かい仕事ばかりだ。人物の顔なども「最初は(手本を)写すのが精一杯。一生懸命なのは伝わるけれど、絵に心が入らない。20年ぐらいやるとようやくよどみがなくなって、いい味わいが出てきます。」
器の内側にびっしりと書き込まれた紋様も、線の太さがきちっとそろってどこで筆継ぎしたかわからない。「とにかく描き込んで描き込んでいかんと手に馴染んでこない。とくに人物の顔はほんの線半分ぐらいで表情が変わってしまうからね。」実際に目の前で見せていただいた作業は、見ている方も息が詰まってしまう。

 お猪口で赤絵を楽しんで
 これほどの集中力と技術、手間を要する赤絵細描。どうしても高価になってしまうのは仕方がない。「だからぜひお猪口を買って使って欲しいと思ってます。お猪口なら比較的安くて手軽。お酒を入れると中に描いてある絵が浮かんできれいですよ。ちょっとお酒を揺らしてみたりして。そういうところまで考えて作ってますから。それに、使っていくうちに赤が落ち着いた良い色になるんです。」酒の味もぐっとうまみを増すに違いない。


 手抜き心抜きのない物を作り続ける
 「良い物を作り続けていかんなん。ずっと“残る物”なのだから、手抜き心抜きのない、自分で良いと思う物だけを残していきたい。」「いっぺん手を(仕事の質を)落とすと戻らない。暇になったらもう一度良い物を作ろうと思っても、ダメ。」と熱く語る福島さん。
「僕はデパートや美術館で個展を開くと、必ず絵付けの実演をします。」完成品を見せるだけではなく、作るプロセスも知ってもらいたいのだという。「赤絵が全国的に広がっていってくれるのが夢。これからも若い方といっしょに作り続けていきたい。」福島さんにとって楽しくて仕方がないというこの仕事。白い素地に描く小さな一筆一筆の“赤い美の世界”はまだまだ果てしなく広がっていく。


 職人プロフィール

 福島武山

 「手抜き心抜きのないものを作り続けたい」と福島さん

 伝統工芸士。
 第23回全国伝統的工芸品公募展、第一席グランプリ受賞など赤絵細描の技を独学で築き上げる。


 こぼれ話

 陶芸ロマン古九谷の謎を探る!?

 陶芸ファンなら一度は興味を持つのが「古九谷発祥の地の謎」。力強い九谷五彩はどこから生まれたのか?石川県の山中温泉のさらに奥、九谷村に登り窯の遺構がありますが、近年の調査から古九谷=有田説も浮上。約350年前に生まれ、その後80年ほどで途絶えてしまったという謎の窯はファンを魅了してやみません。
 「北前船が加賀に戻る際に船を安定させるために有田の素地を積み、上絵付けは加賀で行われたものもあるんじゃないですか?私も他の産地の素地を使って絵付けをしたことがあります。なんと言っても九谷は絵付けが命ですから。」とは九谷赤絵の職人、福島武山さんのご意見。
 まだ結論は出ていないこの論争。研究者の調査はさておき、陶芸好きならば九谷焼と有田焼、じっくり見極めてあなたなりの仮説を考えてみるのも、焼き物の楽しみの一つかも。

*https://kougeihin.jp/craft/0405/  より


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