平成28年7月に、相模原障害者施設の「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件は、日本中に大きな衝撃を与えました。
犯人は元施設職員の植松聖(26才)で、入所者19人を刺殺し、その他に入所者や職員26人に重軽傷を負わせました。19人という殺害者数は、戦後発生した殺人事件の中で最も多い人数と言われています。
今日から裁判が始まり、先ほどまでNHKのニュースを見ていましたが、被害者の名前も公表されず、裁判に出廷した被害者家族の姿も遮蔽板で隠され、見えないようになっています。裁判で被害者の名前は呼ばれず、被害者「甲A」「乙B」「甲C」などと、記号で言われるそうです。
この点につきマスコミの説明は、「被害者とその家族のプライバシー保護のため」となっています。悲惨な事故の被害者だから、そっとしておきたいという配慮で、世間の多くの人も、その思いやりを是としています。しかしそれが、本当に「配慮」や「思いやり」の正しいあり方なのかと、疑問が湧いてきました。
自分にもし、罪もなく殺された障害を持つ子供がいて、無念を晴らす裁判で、子供の名前が「甲A」「乙B」「甲C」と、記号で呼ばれたら、その不自然さを納得するのだろうかと、これは親としての私が抱く素朴な疑問です。
19人の被害者のご家族は、実際に全員が一致し、合意されたのでしょうか。実名を希望する人がいたり、匿名を望む人がいたり、ばらばらな対応になるのが普通でないかとそんな気がしてなりません。全員がそれを望み、裁判所が認め、警察もマスコミも、そして世間も認めた、この異常な「全員一致」という状況に、誰も疑問を挟みません。私には、それが不思議でなりません。
事件のことを詳しく知りませんので、ネットで調べ、再度驚きました。そこで植松は単なる被告人として扱われ、匿名で書かれていました。その一部を紹介いたします。
「被告人Aは、津久井やまゆり園を襲撃したあとで、厚木市の障害者施設も襲撃するつもりだったが、」
犯人植松は犯行当日に自首しており、警察もその場で逮捕していますから、「被告人A」という書き方も不自然です。ネットの情報に付されている「注記」も、転記します。
「被告人Aの氏名は、現時点ではWP:DP#B-2に抵触するため、記載しないでください。」「出典に実名が含まれる場合は、その部分を「A」に差し替えてください。」
WP:DP#B-2というのは、ネット上でのプライバシー保護規定です。悪質なデマ情報が拡散され、善意の人物が被害を受ける事件が多発していますから、当然の規定です。しかしこれが、自首して逮捕された殺人犯にも適用されるとは思ってもいませんでした。
今回ネットを調べたお陰で、自分の間違いにも気づきました。「心神喪失で無罪」と、植松が主張していますが、私はこれをいつものように、人権派弁護士の入れ知恵だと思っていました。しかしこれは、最初から植松自身の主張でした。以下、ネットの情報を、割愛して紹介します。
「被告人Aは平成28(2016)年2月中旬ごろ、衆議院議長公邸を訪れ、衆議院議長の大島理森氏に宛てた、『犯行予告』とされる内容の手紙を、職員に手渡した。」
長くなりますので、植松の主張を箇条書きにします。
1. 「津久井やまゆり園」と、厚木市内の障害者施設の2施設を標的とする。
2. 具体的には、職員の少ない夜勤に決行する。職員には、致命傷を負わせず、結束バンドで拘束し外部との連絡を取れなくする。
3. 2つの園の、260名を抹殺したあとは自首する
4. 逮捕後は、心神喪失で無罪として2年以内に釈放する。
5. 自分には、5億円の金銭を支援し自由な人生を送らせる。
6. 新しい名前として、“伊黒崇”を与え整形手術をさせる。
7. 以上の条件を、国から確約してほしい。日本と世界平和のために、いつでも作戦を実行するつもりだ。
「また被告人Aは、2016年2月に、安倍晋三首相宛ての手紙を、自由民主党本部にも持参していた。」
忌まわしい事件なので、一回で終わるつもりでしたがそうはなりませんでした。私が書きたかったのは、以下の三点です。
1. 被害者ご家族の、全員一致の匿名
2. それを是とした、裁判所、警察、マスコミ、世間
3. 植松自身の思考、常識と非常識と狂気の混在
私の願いは、二つです。息子たちには、植松の言動を他山の石として読んで欲しいこと。訪問される方々には、微妙な問題なので、無理をしてコメントを入れないでくださいということです。私自身がどこまで本音で語れるのか・・・ためらっていますから。