ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『幻想の超大国』 - 12 ( アメリカの人種問題 )

2020-01-24 12:43:19 | 徒然の記

 「第二章 アメリカを蝕む病根」、一気に144ページに入ります。ここでは50ページ以上を費やし、黒人問題が語られています。氏の率直さと、事実を隠さない勇気に驚かされ、敬意を評したくなった部分です。

 「人種問題は、アメリカの最も深刻な課題であるのみならず、われわれアメリカ人が背負っている、原罪とでも呼ぶべきものである。」

 「約二百年前奴隷商人たちは、故郷を離れることなど望んでもいない黒人たちを、誘拐同然のやり方で集め、まるで家畜を市場へと出荷するように新大陸へと連れてきた。」

 「現在のアメリカ国民のうち、奴隷として連れてこられた人々の、直系の子孫の占める割合はそう多くはあるまい。しかし二百年後の今、アメリカはその罪深い行いの、ツケを払わされている。」

 「人種問題への対応の失敗は、自由で、解放的で、強大かつ、裕福だったアメリカ社会を、徐々に没落させつつある。」

 一般的なアメリカの知識人が、黒人問題についてどのように考えているのか、初めて教えられた気がします。この問題の深刻さを知った時、韓国と日本国内の反日NPO団体が、国連で「慰安婦問題」を騒ぐ理由が分かりました。

 日弁連から派遣された戸塚悦朗弁護士は、戦場の売春婦だった女性たちを、日本軍が狩り集めた「性奴隷」だと主張しました。奴隷という言葉が、アメリカ人の心に、どのように受け止められるか、氏の説明を読み初めて理解できました。

 平成30年の2月、ジュネーブで開かれた国連の「女性差別撤廃委員会」で、韓国の鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)女性家族部長官が、旧日本軍の慰安婦問題に言及し、「性奴隷」の言葉を使いました。

 息子たちに伝えたいのは、「奴隷」という言葉が多くのアメリカ人にどのように伝わるかを、氏の叙述から学んで欲しいということです。

 戸塚氏たちが国連を利用し、日本の国益を損なう活動をしていることは、本題でありませんから氏の著書に戻ります。

 「大都市は一触即発の状態にあり、そうした都市では、ドラッグが最大の社会問題となり、永続的な、貧困階層が形成されつつある。父親のいない家庭、あるいは、父親が異なる、沢山の子供を抱える家庭が増え、学校教育制度は事実上機能しなくなっている。」「それだけでなく、社会全体が崩壊の危機に瀕している、と言っていい。」

 私が聞いている以上の、悲惨な状況であることが分かりました。

 「他のいかなる問題にも増して、人種問題が、アメリカ社会を分裂させているのである。その分裂は目に見えない形で進行し、今では大多数のアメリカ人が、人種差別主義者だと非難されるのを恐れるあまり、人種問題についてどう感じているかを、公の場では口にしなくなっている。」

 「アメリカ人は口では人種間の平等を唱えながら、大都市のスラムに住む、いかにもゴロツキ然とした身なりの、黒人の若者たちのことは、あからさまに忌避しているのではないか。」

 「あるいはアメリカ人は、ほとんどの黒人問題に目を向けようとせず、奴隷制の時代から現在に至るまで、黒人の労働や教育の水準を、一般のアメリカ人のレベルに引き上げる努力を怠ってきたのではないか。」「こうした疑問への答えは、現在アメリカが抱えているジレンマの複雑さと、人種問題に対する考え方の混乱の中に、潜んでいる。」

 「人種問題はアメリカの最大の弱点、最大の罪であり、他の何にもまして、アメリカ国民が一つになることを妨げている要因である。」

 氏の意見を読みますと、人種差別と、奴隷という問題が、どれだけアメリカ人をナーバスにさせるているかが分かります。国連の人権委員会で各国の委員たちが、慰安婦問題で日本を非難する動画を見たことがあります。先頭に立ち、日本を責めていたのが米国の黒人女性委員でした。

 「日本を批判するより前に、自分たちのアメリカでの差別を批判にすれば良いのに・・」と、その時は思いましたが、今は彼女の気持ちが理解できます。

 生まれた時から差別されてきた経験があるから、彼女は、「性奴隷」の言葉に敏感に反応し、本気で怒っていたのです。

 「国連で、慰安婦のことを性奴隷と言い出したのは私だ。」と、戸塚弁護士は得意になっていると聞きますが、とんでもない馬鹿者です。日本人の心を傷つけるだけでなく、米国人の心も傷つけているのですから、人間のクズともいうべき人物です。氏と氏の所属する日弁連が、どれほど憎むべき反日左翼団体であるかが分かります。

 多くの日本人は、戸塚弁護士のことも、日弁連の国連活動も知りませんが、私は彼らを許しません。ハルバースタム氏の著書を読み、さらに怒りが強くなりました。

 今回はここで一区切りとし、本来の書評は次回といたします。

コメント (2)
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