ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

習近平に中国は変えられるか ( 毛沢東へ帰れ )

2020-03-27 16:13:02 | 徒然の記

 日経新聞社編『習近平に中国は変えられるか』( 平成25年刊 日経新聞出版社 ) を、読み終えました。

 題名だけ見ますと、習近平氏を中心に書かれているのかと思いますが、そうでなく、当時の中国の、政治、外交、軍事、経済、反日政策等について、幅広く説明する本でした。出版前年の平成24年5月から、約一年かけ新聞に連載された「中国シリーズ」を元に編集したと言い、著者は一人でなく、14名の中国駐在記者の名前が紹介されています。

 先に読んだ、近藤大介氏の著『日中再逆転』( 平成25年刊 講談社 ) を、思い出しながら読みますと、理解が深まりました。近藤氏は習近平氏を、李克強氏と比較し、時代遅れの無能な政治家として語ってていましたが、そうでない事実も知りました。

 江沢民氏の上海閥や太子党、共青団という派閥の間を生き抜き、トップの地位を獲得するのは、凡庸の人間には無理です。今回特に習近平氏を褒めていませんが、我慢強く、しぶとい人間であるのは、間違い無いようです。

 「安倍総理が、中国人の全面入国禁止措置を取れなかったのは、」「中国で大儲けしている、日本企業の圧力だった。」「すでに世界企業となった日本企業の組織、経団連からの妨害だった。」

 前回私は、「武漢コロナ」問題に関する政府の対応に、こういう推測を述べましたが、本書を読み終え、あながち間違いでなかったという、確信を得ました。書評を進めていけば、この点に触れるだろうと思いますので、今は取りあげません。

 それよりも、ここまで克明な中国分析記事を書き、日経の記者たちがよく国外追放にならなかったと、そちらの方が不思議です。連載記事だった頃の「中国シリーズ」を知りませんが、もしかすると本にする時、相当の加筆、修正がされたのででしょうか。今から7年前の、第二次安倍内閣の時の出版ですが、野田内閣での尖閣国有化問題もあり、日中関係が最も悪化していた時期ですから、一層その感があります。

 301ページしかありませんが、記者たちの渾身の記事なので、どこから始め、どこを割愛するか頭を悩ませます。こういう時は、次の基準で決めています。

  1.  息子たちに、伝えるべき大事なことに絞る。

  2. 「ねこ庭」を訪問される方々に、報告したい重要事に絞る。

 二点を忘れないようにすれば、どんな大著でも書評ができます。その代わり、内容の取捨選択が自分ですから、独断と偏見が必ず混在します。最初の頃は臆病でしたが、今は開き直っています。どんな学者であっても、独断と偏見から脱却できないでないか・・・という認識です。「温故知新」の読書が、それを教えてくれました。

  第一章の、習近平・李克強体制の発足から始めます。13ページです。

 「2012 ( 平成24 ) 年11月15日、の人民大会堂。」「共産党大会で選ばれた、新中国指導部の7人が、」「記者団らのお披露目の席に登場すると、驚きと失望が交錯した。」

 10年ぶりの指導部交代の裏にある、3大派閥の、熾烈な駆け引きの舞台裏を記者が語ります。

  1.   「上海閥」・・元国家主席の江沢民らを中心とする、党長老たちの派閥

  2.   「共産主義青年団 ( 共青団  ) 」・・前国家主席の胡錦濤の出身派閥

  3.   「太子党」・・現国家主席の習近平ら党幹部の子弟の派閥

 「党最高指導部、政治局常務委員では、7人のうち、」「習近平を含む、実に6人が、」「何らかの形で、江沢民につながる人物だ。」「胡錦濤に近い、共青団出身者は、」「序列二位の、李克強だけ。」「胡錦濤の当初案にあった、李源潮、汪洋らの名前が消えたのは、」「胡錦濤の影響力拡大を嫌った、長老からの猛反発だった。」

 胡錦濤氏は常務委員の人選では、長老に一歩譲りましたが、実際に政治を動かすラインは、きっちり抑えていると言います。つまり、トップ25に当たる、党政治局員や軍の要職には、共青団出身者と氏の側近が占めています。

 「一連の人事からは、習近平が、党内各勢力の駆け引きをさばきながら、」「最低限のバランスを、保とうとしているのが分かる。」「習近平は、意外と人事がうまい、との評判さえ出ている。」

 「だだ中国は今、様々な社会問題を抱え、大きな転換期にかかっている。」「バランスを重視するあまり、内向きになり、」「実行力に欠け、抜本的な改革に着手できなければ、」「中国の漂流が始まる。」

 これが、習近平氏が登場した時の状況です。あれから8年で、習近平氏は江沢民氏の力をそぎ、胡錦濤氏の仕掛けた罠を潜り抜け、任期無しの終生国家首席になります。中国の改革開放政策は、胡錦濤派の李克強首相が主張しているので、協力せず、独自の道を掲げました。

 それが、毛沢東へ帰れ、漢民族の栄光を取り戻せという、復古主義となります。氏の今後は、次の言葉が語っていると、私は思います。ここで、近藤大介氏の評価と重なります。日経の記者たちも、無条件に習近平氏を持ち上げておらず、衆人一致の「切れ者」でないことが、分かります。

 「老革命家らの、縁故による密室人事で選ばれた、習近平。」「彼に、13億人を束ねる実力があるのか。」「世界が注視している。」

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