「これら50社のうち、中国のライバル企業に、先端技術が追い抜かれてしまった、」「もしくは、追いつかれそうだという企業が、」「1社でもあるだろうか。」
309ページ、氏の叙述はここから始まり、企業ごとの詳細な説明になります。私の知らなかった日本企業の姿なので、労をいとわず紹介します。
「食品では、アサヒスーパードライと、キリン一番搾りは、中国でも人気の、高級ビールだ。」「中国ナンバーワンの雪花ビールは、世界で無名だし、」「2位の青島ビールも、日本人は名前くらい知っているが、国際的にメジャーではない。」「味の素は、医療、介護用食品などの分野で、」「発展を遂げていて、中国企業の追随を許さない。」
「繊維では、東レとユニクロが共同開発した、ヒートテックは、」「冬の中国の必需品と言われ、北京の日本人駐在員たちの生活を、一変させた。」「人民解放軍も、密かに大量購入したという、都市伝説まであるほどだ。」「発熱、保温、抗菌、伸縮性、静電気防止、形状保持という、」「ヒートテックの7つの技術は、中国のメーカーには、とても真似ができない。」
ユニクロの社長は大の親中派で、「日本に拘らない。金儲けできる場所が、自分の国だ。」と新聞の記事だったか、そんなことを言っていました。朝日も東レもキリンも、口には出しませんが、同じ気持ちで事業展開しているのだろうと推察します。
「ユニクロは2012 ( 平成24 ) 年、売り場面積6.600平方メートルという、」「世界最大の店舗を、上海にオープンしたが、」「開店前から、2,000人が行列を作る人気ぶりだった。」「2020年までに、1,000店舗体制を目指している。」「これに対して、習近平主席の夫人ご愛用の、」「広州ブランド・エクセプションは、中国以外では全く無名だ。」
日本企業の製品が、中国市場を席巻し、支配している事実は、これだけではありません。
「化学では、旭化成の半導体技術は、血液透析型人工腎臓や、」「携帯電話の音や光をコントロールする、LSIなどに応用されており、」「中国は、まだこのレベルまで行っていない。」「住友化学の自動車軽量化や、食品包装用フィルムの、」「高機能化という技術も、中国は追いついていない。」
「信越化学工業は、世界最大級の永久磁石式磁気回路をはじめ、」「飛び抜けた技術に溢れており、中国企業とは、横綱と十両以上の差がある。」
日本企業は、大量生産できる低価格の製品を、中国で生産していると思っていましたが、そうではありませんでした。最先端技術の新鋭工場を稼働させ、日本にはない製品を作っていたのです。日本は中国で生産した日本企業の製品や部品を、逆輸入していたという話になります。これが、息子たちに伝えたかった、眼から鱗の「日本企業の実態」です。
各社の民生用技術は、いつでも軍事に転用可能で、恐るべき武器となることは、素人でも知っています。こういう事実があっても、自社の利益ため平気で行動するのが、「多国籍企業」、「無国籍企業」と言われる会社です。「多国籍企業」の手本は欧米なので、改めてその定義を「ブリタニカ大辞典」で調べてみました。
《 多国籍企業とは 》
・多数の国家に、生産のための現地法人を設立し、世界的な事業活動を展開する巨大企業。超国家企業ともいう
・資本自由化とともに、日本への多国籍企業の進出がみられる反面、日本企業の多国籍化も進んでいる
・企業例・・ ロイヤルダッチ・シェルグループ、エクソン、ユニリーバ、ネスレ、ゼネラル・モーターズなど
ブリタニカ大辞典にまで書かれているのですから、日本企業はすでに、中国の巨大市場を舞台にする、世界企業だったのです。
「日本経済は、中国市場に大きく依存し、中国なしでは成り立たなくなっている。」
新聞やテレビが、こんな報道をしますから、中国が日本企業を締めつけ、動きが取れないようにしていると誤解していました。事実は逆で、日本企業が中国市場を支配し、経済を左右する力を持っていたのです。日本の経済人たち、特に経団連が中国に気を使い、第二の祖国でもあるかのように大切にする理由がこれで分かりました。
ここまでくれば、最後まで氏の説明に付き合います。
「三菱ケミカル傘下の、田辺三菱製薬の、」「糖尿病、アルツハイマー病の最新治療薬は、今の中国の製薬技術では、作れない。」
「花王は、節水型液体洗剤・アタック瞬清をはじめ、中国での知名度は抜群だ。」
「資生堂も、同様に知名度抜群で、中国がそっくり真似た " 自然堂 " は、」「中国では民族ブランドになったが、海外で人気を博しているのは、北朝鮮以外見たことがない。」「北京の、資生堂研究センターを訪れたことがあるが、」「原材料の調合から、顔に塗る実験まで、」「極めて精密な研究を重ねているのに、恐れ入った。」
「JXの会社規模は、中国の三大国有石油会社には及ばないが、」「燃料電池自動車用、水素ステーションなど、」「次世代型技術開発では、はるかに中国の先を行っている。」
「ゴムでは、ブリジストンタイヤは、中国全土に偽物が出回るほど人気だ。」「ウレタンフォームなどの樹脂製品や、免震ゴムなどの技術も中国よりはるかに高い。」
鉄鋼、非鉄金属、機械、電気機器、自動車、商社、海運と、各業種の企業名と、中国での活躍ぶりが、この後も続きます。各社の持つ技術は、中国が手に入れたい先端技術ばかりです。息子や「ねこ庭」を訪問される方々には、ここまでの紹介だけでも、日本企業の実像が理解されたと思います。
さらに氏の叙述を紹介するべきか、発見した事実を報告した方が良いのか迷っています。一旦ここで一区切りとし、次回とします。お休みなさい。