ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

日中再逆転 - 2 ( 習近平氏と李克勝氏の 激しい対立 )

2020-03-02 13:54:45 | 徒然の記

 近藤氏の著書で一番驚かされたのが、習近平、李克強両氏の激しい対立関係でした。仲が良くないとは感じていましたが、ここまで険悪だったとは意外です。長くなりますが、該当する叙述を紹介します。

 「ダボス会議の期間中、李克強首相は、ある国の首相との会談で、次のように述べたそうである。」「中国には、無限の可能性がある。」「私が、その好例ではないか。」「若い時は一介の農民だったが、今や一国の総理だ。」「だから私は、何も恐れるものがないのだ。」

 ここまで自信たっぷりの人物とは知りませんでしたが、こう言う人間でないと、中国ではのし上がれないのでしょう。

 「中国には、農村出身で皇帝になった人物が、過去に三人いる。」「漢の高祖・劉邦、明の高祖・朱元璋、そして毛沢東である。」「李克強と会談した首相は、彼はまるで自分を皇帝に擬えているような、イメージを受けた、と語っている。」

 「だが実際は、李首相は中国の皇帝ではない。」「共産党の序列で言えば、彼は二位であり、」「一位は、極左政治家 ( 極端な保守派 ) の、習近平主席である。」

 「だがダボス会議での、李克強の演説の中には、」「習近平の演説の中に必ず入る〈 屈辱の100年から、中国ドリームへ 〉 、 〈 社会主義の堅持〉 、〈人民に奉仕する 〉 といった表現は、ただの一言もなかった。」

 「李首相は、開放、開放、開放と、絶叫する、」「紛れもない、極右政治家 ( 極端な改革派 ) なのである。」「 2013 ( 平成25 )年以降の中国社会は、言ってみれば、一本の太い綱を、」「本物の皇帝 ( 習近平 ) が左に引っ張り、皇帝気取りの ( 李克強 ) が、」「右に引っ張っている。」「13億の中国人は、その張り詰めた綱の上に乗り、」「大揺れなのだ。」「なんと緊張感のあふれる、かつ不安定な社会だろうか。」

 習近平氏は、建国の父・毛沢東を目指し、李克強氏は、経済発展の父・鄧小平を目指しています。今は党内で並び立っていますが、二人が今後どのようになるのか、党内には危機感が漂っていると言います。タイトルとともに、氏の予測を紹介します。

 「習近平と李克強の最終闘争近し」( 256ページ )

 「 2014 ( 平成26 )年以降、中国は二つの危機に向かっていくように、思えてならない。」「一つは、習近平と李克強の最終闘争である。」「極左と極右の路線対立は、如何ともし難く、」「いずれ、雌雄を決しなくてならない。」「換言すれば、中国が社会主義を堅持するか、」「市場経済の発展を優先させるか、である。」「社会主義を堅持すれば、経済は停滞するし、」「市場経済を優先させるのであれば、政治の民主化が必須となる。」

 「もう一つの危機は、国民の蜂起である。」「経済が停滞し、失業者が溢れ、」「不動産バブルが進行して、マンションが買えず、」「インターネットでの、表現の自由を奪われ、」「社会保障の、セイフティーネットは整備されず、」「現代版奴隷制度と揶揄される、戸籍制度は廃止されず、」「環境汚染は深刻化し・・・と言うことが続けば、」「国民のマグマは増大していく。」「そんな中、どこでマグマが爆発するか分からない。」

 貧しい農村部から、職を求めて移動してきた若者たちが、地下シェルターやマンンションの空室で暮らする姿が、「ネズミ族」「アリ族」と言う言葉で語られています。電気も、換気もない地下シェルターでは、ネズミしか住めないと言うところからついた名前です。

 マンションの一室で貧しい若者が共同生活していますが、狭い部屋に鮨詰めになっている様子が、アリの巣に似ているのだそうです。都市部には、百万、千万の単位でいるそうですから、国民の蜂起もありえない話ではありません。

 2020 ( 令和2 )年までに両者のいずれかが倒れているだろうと言う、氏の予測は外れましたが、次の予測は当たるのかもしれません。

 「このように内政に行き詰まった、習近平主席が、」「国民の怒りの矛先を、日本に向け、」「尖閣奪取と言う暴挙に出るリスクも、想定しておかねばならない。」

 韓国の大統領も、国民の不満が溜まり、政権基盤が危うくなり始めると、決まって「日本叩き」を始めました。韓国人と同様に中国人も「日本憎し」でまとまり、政府への不満を忘れます。両国はよく似た行動をしますが、原因は次の二つです。

  1.   自己満足でしか無くなっている、中華思想

  2.    勝手な解釈をされている、儒教思想  

 私から見れば、習近平氏も李克強もどっちもどっちですが、近藤氏は李克強氏の方を評価しているようで、周氏には厳しい意見を述べています。次回はそれを紹介することにし、本日はここで一区切りです。

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日中再逆転 ( 近藤大介氏と長谷川慶太郎氏 )

2020-03-02 07:43:54 | 徒然の記

 近藤大介氏著『日中再逆転』( 平成25年刊 講談社 ) を、読了。同じ中国を扱っていても、先日読んだ長谷川慶太郎氏の著書とは、だいぶ趣が違いました。

 中国より、日本は優れたところが多いから、必ず勝つと、二冊は同じ趣旨の本です。長谷川氏の著書は退屈でしたが、近藤氏の本は、中国軽視の叙述が少なく、日本への称賛が余りないため、むしろ啓発される部分が多く、久しぶりに学徒の気持ちにさせられました。

 この違いがどこから来るのか、書評に入る前に、両氏の経歴を比較してみました。

  近藤大介氏 〉

   ・昭和40年、埼玉県生まれ ( 55才  )。平成元年、東大教育学部卒

   ・「週刊現代」元副編集長、明治大学国際日本学部講師

   ・平成21年、講談社(北京)文化有限公司に、現地代表、副社長として出向

     ・北京駐在を機会に、中国人居住地区に住み、中国人への「同化」を試みた

 〈 長谷川慶太郎氏 〉

   ・昭和2年、京都生まれ ( 92才で没  )。昭和28年、大阪大学工学部卒 

   ・昭和28年、日本共産党に入党、志賀義雄衆議院議員秘書

   ・新聞記者、雑誌編集者、証券アナリストを経て、昭和38年に独立

   ・国際エコノミスト

   ・昭和58年、『世界が日本を見習う日』で、第三回石橋湛山賞を受賞

 新聞と雑誌の違いはありますが、両氏とも記者を経て編集者となり、ジャーナリストとして活躍しています。大胆な判断で言いますと、現場での実体験の差が、著作の深みの差になったのではないかと考えます。

 大学卒業後共産党員となり、国内で政治活動をした長谷川氏と異なり、近藤氏は講談社に入社し、「FRIDAY」から「週刊現代」の編集部へ回され、以後北京大学留学、現地法人への出向と、中国での長い生活があります。氏の叙述は、本からの知識でなく、中国で見聞した経験を踏まえているため、私の心を捉えたのでしょうか。

 共産党から転向した長谷川氏は、思想的には苦労したのでしょうが、中国を語るには、近藤氏の実体験に及ばなかったのかと考えたりします。また近藤氏の著作は、私の偏見を修正させる働きもありました。

 私は一般の月刊誌や、書籍に比較し、週刊誌を軽視しています。つまらないゴシップを、刺激的な写真で飾り、知的レベルの低い人々に売りつけていると、歯牙にもかけていません。寛大に見えているのかもしれませんが、私は結構高慢です。単純と言えば単純ですが、氏のような人物が「FRIDAY」や「週刊現代」を編集していたのかと、意外感に打たれています。どこまで実行できるか自信はありませんが、週刊誌に対する偏見を、修正しようと思います。

 近藤氏の著作は、平成24年、第二次次安倍内閣の成立時に出版されていますので、今から見ると予想の外れた部分があります。再評価すべき意見もあります。一番興味深いのは、安倍政権が習近平政権との比較で、語られているところです。

  1. 平成24年 12月26日 第二次安倍内閣成立

  2. 平成25年  3月              習近平体制発足

 「安倍内閣」と「習近平体制」に付けた、キャッチフレーズ『日中再逆転』は、さすがに週刊誌の副編集長らしく、騒々しくて刺激的です。

 「第三の成長期に入った日本」、「60年に一度の巨大不況の中国」

 この二つの見出しが、「まえがき」を飾っています。アベノミクスは、国内では評価されず、野党もマスコミも散々叩いていますが、近藤氏は違います。半信半疑ですが、アメリカや中国、あるいはヨーロッパ諸国では高評価だと言います。中国は、日本への警戒心を、さらに高めていると説明しています。

 人件費の高騰で苦境に陥った製造業、深刻な人手不足、5000万人のフリーター、脆弱な民間企業、全国民に蔓延する腐敗、20兆元に上る地方債、大気汚染、水不足と水質汚濁など、中国経済はいつ崩壊してもおかしくないと、世界のアナリストも警戒しています。

 日本では、長谷川慶太郎氏だけでなく、宮崎正弘氏なども散々貶していますから、こう言う惨憺たる中国に比較すれば、安倍内閣は安定しています。大嫌いな中国共産党政権ですが、ソ連に比較すると少し庇ってやりたい気持ちもあります。かってソ連は、米国と世界を二分する大国と言われ、世界がソ連圏の諸国と、米国圏の国々とに分かれ、対峙、拮抗していると説明されてきました。

 しかしそれは、本当だったのでしょうか。人工衛星や人間ロケット、水爆や原水艦等々強大な軍事力はありましたが、ソ連国民はずっと貧しいままでした。生活物資一つを買うにも、常に行列をしていました。しかし中国では、国民の一部とは言え富裕な人々が生まれ、世界各地に出かけ、爆買いしていました。顰蹙も買いましたが、彼らが使うドルは多くの国で歓迎されました。

 こう言う現象は、ソ連では体制が崩壊するまで一度も見られませんでした。だから中国の経済政策は、ある程度までは成功していたのだと考えています。日本に対しては残酷な政権ですが、評価は客観的にすべきと言う気がします。近藤氏は言及していませんが、中国経済の行き詰まりの原因は、次の3つが捨てられなかった、あるいは、克服できなかった結果でないかと考えています。

   1.   中華思想

   2.   儒教思想

   3.   共産主義思想 ( マルクシズム  )

 この三つは、中国13億の民を縛りつけています。「李承晩テレビ」で李栄薫(イ・ヨンフン)氏が、韓国の民主化を妨げる原因として、同じ意見を述べていましたが、中国こそが 1. 2.の本家で、本物の大国ですから、さらに厄介で深刻です。

 取り留めのない感想を並べましたが、書評は、明日からといたします。

コメント (2)
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