ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

溜まっている千葉日報新聞 - 3 ( 両論あった学徒の意見 )

2025-01-14 08:31:37 | 徒然の記

   共同通信社の、ゆがんだ世論誘導の意図

 過去記事を調べてみますと、8年前の平成29年7月と翌年の3月の2回、上記に関係する検討作業をしていました。

 8年前の検討のきっかけは、わだつみ会編『戦没学生の遺書にみる15年戦争』(昭和38年刊 光文社) を読んだことでした。

 以前、昭和24年出版の『きけわだつみのこえ』を読んでいましたが、内容が微妙に違っていたため、戦没学生の手記を集めた本が、これまでどのように出版されてきたのかを調べてみたのでした。

 1.  『はるかなる山河に』 昭和22年 東京大学協同組合出版部刊 ( 東大生のみの遺書 )

 2.  『きけわだつみのこえ』 昭和24年 東京大学協同組合出版部刊

   この本は、後に岩波書店から文庫本として出され版を重ねています。

 3.  『戦没学生の手記に見る15年戦争』 昭和38年  光文社刊 

   この本は、後に「第2集きけわだつみのこえ」と改題されました。

   1.  の『はるかなる山河に』は非常な反響を呼び、当時のベストセラーになっています。昭和22年に初版本が出ますが、昭和24年には第5版が印刷されていました。

 しかしこの本に対し、東大だけが大学生ではあるまいとの批判が巷からあったため、東大協同組合出版部は、全国の大学生を対象として遺書を広く募集し、昭和24年の『きけわだつみのこえ』として編纂したのだそうです。

 書名の由来につきましては、ネットの説明をそのままに紹介します。

 ・学徒兵の遺稿を出版する際に、全国から書名も公募し、応募のあった約2千通の中から、京都府在住の藤谷多喜雄氏のものが採用された。

  ・藤谷氏の応募書名は、 「はてしなきわだつみ」であったが、これに添えた応募用紙に次の短歌が書かれていた。

   嘆けるか怒れるか はた悶せるか 聞け果てしなきわだつみの声

 ・ということで、短歌から「わだつみのこえ」が取られたと言う。

「 わだつみ 」が、今では戦没学生をあらわす言葉のように使われていますけれど、元々の意味は海神 ( わだつみ ) を意味する日本の古語だとのことです。

 学徒の遺書を扱った本の過去を調べる気になったのは、「ねこ庭」が読んだ上記2.と3.の内容が、違っていると感じたためでした。2の『わだつみのこえ』には、日本精神主義的な学生の遺書や、戦争謳歌に近いような遺書がほとんどなかったのに、3の『戦没学生の手記に見る15年戦争』には、日本賛美や肯定の遺書が混じっていたからです。

 ネットの情報によりますと東大協同組合出版部は、昭和24年の編集方針として「平和への訴え」を掲げたため、遺書の言葉が戦後の反戦平和運動のスローガンに利用されたと、述べていました。

 日本がサンフランシスコ条約に調印し、独立するのが昭和26年ですから、『きけわだつみのこえ』が出版された昭和24年当時は、GHQが日本を統治していた時です。

 出版物には当然GHQの検閲 ( プレスコード  ) が入り、戦争を肯定する言葉や米軍の批判は削除されました。掲載された遺書が「反戦、平和」「軍国主義の否定」で編集されても致し方なかったと、今でも言わているGHQの影響力に驚きました。

 実は昭和26年に、サンフランシスコ講和条約を批准し日本が独立した後、戦没学徒の遺族から岩波書店に要望が出されました。要望は次の二点でした。

   1.  GHQの検閲で削除・修正された箇所を、元の文章に戻してもらいたい。

   2.  GHQの検閲のため取り上げられなかった、戦争肯定の手記も取り上げて欲しい。

 しかし話がまとまらず、結局裁判沙汰になったそうです。

 岩波書店は『きけ  わだつみのこえ』を何度も自社で出版していますが、両論併記をした『戦没学生の手記に見る15年戦争』の出版を、断りました。良心的、人道的、平和主義を標榜する岩波書店は、一度決めたら反日・リベラルの主張を捨てない朝日新聞と同じ体質の会社でした。

 結局、昭和38年に、『戦没学生の手記に見る15年戦争』は、光文社がカッパブックとして出版しています。

 同年の『戦没学生の手記に見る15年戦争』の編集に際しては、国家的表現や日本主義的言辞が含まれた手記も、戦争の事実として採録されることとなりました。死を前にして学徒たちがどのように考え、何をしていたのか。右も左も区別せずそのまま掲載し、判断を読者に任せようというのがカッパブックの姿勢でした。

 以上が8年前に検討した内容ですが、特攻に臨んだ学徒の思いは共同通信社の記事のように、「特攻は死刑のようなもの」という批判的な意見ばかりでなかったことが証明されています。

 こうした出来事は報道されませんので、国民には伝わりません。遺族の方々と岩波書店の裁判がどうなったのかは知りませんが、事実が世間に知られていない証拠が、共同通信社のおかしな記事が今になっても国民を惑わせていることになるのではないでしょうか。

 テーマが横道へ逸れますが、マスコミと出版社が協力すると、どのように国民が影響されるかの実例を、『きけ  わだつみのこえ』の読者の声を見つけましたので、次回に紹介します。

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