春の叙勲で旭日中綬章を受章することになったことが話題のイーストウッドの新作。
前作「チェンジリング」CHANGELING を、「間違いなく今年有数の傑作」と評したが、この「グラン・トリノ」は噂通り。
もっとすごかった!(正直まいったよ....)
彼ならではの視点から発せられる端正な佇まいに、今回さらに磨きがかかっている。
主人公はずっとまわりの事象に腹をたて、ずうっと愚痴っている(笑)
この微妙なユーモアが、物語進行のテンションを高くキープ。
この主人公の愚痴っている歪んだ口もとをみると、どうしてもホッドドッグほおばりながら銀行強盗の現場に行くハリー・キャラハン(ダーティーハリー第一作のオープニング)と重なってしまうのは仕方ない。
誰からも嫌われ者で、孤高を貫く老いた戦士、というのはまさにハリー・キャラハンだからだ。
そしてこの主人公が、変質するアメリカ社会を生きるアメリカ自身であるのは明確。
「多民族国家」の意味が変質しつつある様子が、ありありと描写される。
ちょっとしたシーン、セリフ、小道具にも気配りがきいている。
タイトルの車、グラン・トリノをはじめとして。
映画の中の人が誰もあこがれる、このグラン・トリノこそ、アメリカの失われた「尊厳」の象徴なのだろうか....
そしてその「尊厳」を受け継いでいくのは誰なのか。
前にカミングアウトした、監督としてのクリント・イーストウッドはあまり好きではなかったメインの理由「音楽」(あまりにメロディアスなシーンがある)も今回は息子のカイル・イーストウッドが担当されていることで解消(ホッ、)
次回作は、南アフリカで撮影中ということだが、どんな作品なのだろう。
“The Human Factor”というタイトル。
興味は尽きない。
最後にひとつだけ言いたいことが。
なぜ、こんな名作がアカデミー賞にノミネートもされないで、クイズ番組を映画化した映画がノミネートどころか8部門も獲得してしまうのか?!
アメリカはつくづく不思議な国である.....
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