~Agiato で Agitato に~

再開後約20年になるピアノを通して、地域やほかの世代とつながっていきたいと考えています。

秋の夜のコンサート

2007年10月05日 22時40分55秒 | ピアノ
ちょっと前の地域の広報に、H先生のミニコンサートの告知があった。これまで講座やらレッスンやらでお世話になった方だ。

場所は某公民館で、どこにあるかわからず。
必死で調べたら、実はうちから3つ先のバス停。なんだ近いじゃないかと、夕飯の支度をさっさとすませて行くことにした。
近いことは近かったが、バス停からかなり坂道を登る。かなりの高台になっており、市街地の灯りがはるか眼下に望める。

会場は、公民館の体育館。天井は高いし、ピアノはアップライト。
プログラムは、月光とかトロイメライなどのわかりやすい曲が並んではいるけど、ブラームスなんかも入っている。いったいどんなコンサートになるのか・・。

お客さんは60人くらい入っただろうか?
定刻にH先生とギターのY氏登場。
Y氏のゴールドのシャツとコーディネイトされたのか、H先生、オレンジ色の薄手のドレスに幅広のゴールドのベルトを和装帯の蝶結びのように締めておられる。
H先生、お召し物はいつもおしゃれで素敵だ。

さて、前半のプログラムはピアノのソロ演奏ということで、H先生のお話をはさみつつ曲が進んでいく。
「私はコンサートの場でアップライトピアノを弾いたことはあまりないのですが、今日はこのピアノで出来る限りの演奏したいと思います。そこでまず、今日出会いのあったこのピアノとみなさんのために、プログラムにはありませんが、バッハのプレリュードを弾きたいと思います」
とおっしゃって、<平均律第1巻1番のプレリュード>を弾かれた。
私はH先生のバッハは初めて聴いたのだけれど、初めて聴いた気がしないような、自然に受け入れられるバッハだった。
ピアノは状態も調律もいいようで、元の音の質もいいようにも思った。

次にベートーベンの<月光ソナタ 全楽章>。
実は、コンサートでH先生のベートーベンを聴かせていただくのは初めてだ。
それが、なんとも印象的な「(外の)虫の声つき」の<月光>となった。秋の夜にふさわしく、目を閉じているとまるで野外で聴いているかのようだ。
ホールのような反響がなく、さらに楽器自体もグランドのような響きもないことから、逆に、音が虚空に放たれていくかのような効果を生んでいる。

その後はシューマンの<トロイメライ>、ブラームスの<ワルツ>を3曲と<間奏曲(作品118の1と2)>。
本日は子どもも少しいたのだが、ワルツの話をするのに、「ショパンの<子犬のワルツ>知ってる?」とおっしゃると、「知らない」とのことだったので、「では弾いてみなければ(笑)」ということになり、ブラームスの前に<子犬のワルツ>を「うまく弾けるといいんですけど・・」と言いつつ弾かれた。あたりまえのことかもしれないけど、すばらしくなめらかで軽やかな演奏だった。・・・H先生の貴重なショパンを聴かせていただきました。

後半は、H先生がバッハ=ブラームスの<左手のためのシャコンヌ>を弾かれたあと、Y氏のギターソロが2曲(1曲はグラナドスの<アンダルーサ>だった)、合奏がボッケリー二の<序奏とファンダンゴ>と、アンコールがビバルディの<ギタ協奏曲>。(・・・ギターの曲のことはよく知らないので、記憶があやしい・・すみません)
Y氏ご自身が言っておられたが、「今日はピアノと一緒なので音量が欲しいと思うせいか、手に力が入ってしまって、どうも・・」とのことで、実際こちらもそのように聴こえた気がする。

H先生の「シャコンヌ」は大変好きな演奏だった。
左手一本で音の濃淡と立体感がかくも出るものか、ということと、どの指も偏りなく動き、どんな速いパッセージでも一音一音明瞭に発音されるのはすごいことだとあらためて思った。

以上のプログラムをすべてアップライトで聴いたのだが、不思議なこと物足りないとはまったく感じなかった。
響きが少なめな状態によって、より音楽の構成や精神がダイレクトに伝わった気がしたし、H先生の「ごまかしも妥協も誇張もない」演奏がより鮮明になり、全体としては「アップライトだからこその演奏、アップライトならではの演奏」という感想をもった。

ピアノは楽器を持ち歩けないので、行った先々のピアノを生かして演奏する必要があるわけなのだが、だいたいは、うまくいかないと、行った先々のピアノに悪態をついて終わりだ(殴)。
今日はそういう意味では貴重な演奏会を聴かせていただいたし、ひさしぶりにH先生の演奏を聴いて、あらためて自分の「惚れ度」を確認することとなった。

またレッスンお願いしますっ!