アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

ピンチを遺体回収のチャンスに ~佳境編~

2020年03月30日 | Weblog
 通っている整骨院の御家族が、「ネパール大好き一家」。私も、ネパールを旅したことがある。そんなわけで、ネパールのことを書き始めたのですが、いつもの事ながら、「前置き」が長い。よって、「前置き編」と「佳境編」に分けまして、今回は、「佳境編」。

 ネパールは、2019年の国民一人あたりのGDPが1,034ドル。一日あたりにすると、3ドルに満たない。円にして、1日およそ300円。言い方を変えると、「1人が1日300円で暮らす国」となる。世界の最貧国の一つです。
 物乞いの少女がまとわりついてきます。クアラルンプールでカドマンズ行きの飛行機に乗り換えたのですが、空港職員の手違いで、私共の荷物はクアラルンプールの空港に忘れられたまま。困ったのは、替えの下着。カトマンズの下町で下着を買ったのですが、ブランドもののパンツが、日本の「十分の一」の値段。もっとも、ブランドも、真っ赤なニセモノですがね。

 さてさて、ネパール政府は、エベレストの登山許可証の発給に際し、1人当たり1万1千ドル(約122万円)の手数料を徴収しています。これが、国を支える収入源ですね。
 登山シーズンには、400人近い人に発給するという。エベレスト登山はネパールに「3億ドル」の経済効果をもたらしているとされています。

 と、ところが、新型コロナウイルスが猛威を振るっている。感染拡大防止のため、ネパール政府は、「世界最高峰エベレスト(8,848メートル)への入山を許可しない」ことを決めた。と、いうことは、「3億ドル」が入ってこない!苦渋の決断ですよね。このままでは、ネパールが破産してしまうんじゃないか。

 エベレストには、死亡した登山者の遺体が多数放置されていることが問題となっています。確認されているだけで300人近い登山者が死亡し、遺体の3分の2は下山していない。つまり、およそ200遺体が放置されている。横たわった遺体が、「登山ルートの目印」になっているケースもあるという。「オーバーハングの左脇を10m登ると、赤いヤッケの遺体があるんだ。そこが分岐になっているから、右にルートを…」遺体を目印にして登山する。凄い話しです。
 なぜ遺体を放置しておくのかって?遺体の多くは、「酸素が極端に薄くなる、死のゾーン」と呼ばれる標高8千メートル以上にあるのだそう。降ろそうにも、二次災害の危険が伴う。遺体を回収しようとして、自分たちが遺体になってはたまらない。

 エベレスト登山が禁止になったため、今、ガイドや、シェルパの仕事がない。
 そこで、エベレスト登頂24回の世界記録をもつ、山岳ガイドのカミ・リタさんが立ち上がった。
 「(登山禁止で)仕事がないガイドらを、エベレストの遺体回収や清掃活動に雇用しよう。報酬は、観光客へのプロモーションに充てる予算を回せばよい」と提案。 どうですかぁ!カミ・リタさんってなかなかやるでしょ!エベレストに24回も登頂しているのも凄いけど、昨年は、1週間に2度エベレスト登頂に成功しているのです。アンシンジラブルな人なのです。自分のことのように自慢しているが、知り合いなのかって?私は存じ上げておりますが、カミ・リタさんのほうは、私など知るよしもない。カトマンズですれ違ったことがあったかも知れませんがね。
 名前の覚え方は、「神・利多(カミ・リタ)」。「利多」を充てたということは、「お金にさとい人なのか」って?いえいえ、エベレストの遺体回収や清掃活動に雇用する「ガイド」らの「報酬の出どころ」まで考えているところがすばらしいってこと。
 ネパール山岳協会もカミ・リタさんに同調し、政府に対し、この機会に清掃活動を進めるよう要請している。
 これって、新型コロナウイルスの蔓延を逆手にとった、「いい話」ですよね。